LOGIN「気持ちいいんだろ、先生。……あんたの体の反応は、一度間近でしっかりと観察して、自分なりにあれこれと試してみたことがあるからな」
一瞬、三田村がなんのことを言っているのかわからなかったが、引き抜かれたものを一気に突き込まれた衝撃で思い出した。 「先生を拉致してきて、組長の命令で先生の尻をおもちゃで嬲りながら、気づいた。ここを突くと――」 微妙な角度をつけて、三田村が内奥の襞と粘膜を擦り上げてくる。和彦は声にならない悲鳴を上げて仰け反っていた。 「きつくおもちゃを締め付けながら、先生の内股が震えていた。……やっぱり、ここが感じるんだな。中が、ビクビクと痙攣してる。ずっと、どんなふうに反応するのか、確かめたかったんだ」 もう一度同じ攻めを与えられ、目から涙が溢れる。その涙を唇で吸い取られてから、内奥には三田村の熱い精を注ぎ込まれていた。*
*
死を覚悟したセックスは、麻薬じみた快感を味わわせてくれる。どうせ奪われるのならと、命を削ることすら惜しまない激しさのせいかもしれない。
**** 男三人が、静かな別荘地で何をして過ごすか――。 密かに和彦は、この問題をどうするべきなのかと心配していたのだが、意外なほどあっさりと解決した。主に、中嶋の働きによって。 垂らしていた糸がピンと張り詰め、両手でしっかりと持った釣り竿がしなる。和彦は半ば反射的に、隣で同じく釣り糸を垂らしている中嶋を見る。「先生、魚がかかるたびに、そう動揺しないでください。適当にリールを巻いて、魚の引きが弱ったら、釣り上げるだけです」「適当ってなんだっ……。その適当の加減がわからないんだ」 和彦が反論する間にも、掛かった魚が激しく暴れる。慣れない手つきで慌ててリールを巻き、竿を立てようと奮闘していると、背後で苦しげな息遣いが聞こえてきた。振り返ると、顔を伏せた三田村が肩を震わせている。「三田村、笑っているんなら、交代してくれ」「ダメですよ、先生。掛かった魚は、責任を持って本人が釣り上げないと」 和彦はじろりと、横目で中嶋を見る。言っていることはもっともだが、明らかに中嶋も笑っている。「……ぼくがオロオロしているのを見て、二人とも楽しんでいるだろ」「普段マイペースの先生が、おっかなびっくりで釣りをしている姿が、なんだか可愛くて。つい、からかってしまうんです。三田村さんも同じ気持ちですよね?」 中嶋に問われ、三田村は曖昧な返事をする。さらに言い合うのも大人げないので、まずは掛かった魚を釣り上げることに専念する。初心者ながら、さきほどから意外に釣果は悪くないのだ。 やや物騒な理由から、総和会が所有する別荘で連休を過ごすことになったが、別に和彦個人が狙われているわけではなく、身を隠しておく必要はない。賢吾からも、護衛をつけておく限り、自由にしていいと言われている。 では、自由に何をするか、という話題になったとき、朝食の後片付けを終えた中嶋が、別荘近くの湖で釣りをしないかと提案してきたのだ。道具一式は揃っており、冷蔵庫には餌になりそうなものものが入っていると言われれば、断る理由はなかった。「先生は、
「ぼくのオトコの感触だ……」 意識しないまま和彦が呟くと、三田村は口づけで応えてくれる。緩やかに舌を絡め合い、もっと互いを味わいたいとばかりに唾液を交わし、啜り合う。そんな口づけを交わす間にも、和彦の内奥は猛った欲望の感触に馴染み、強い刺激を欲し始める。 腰をわずかに揺らすと、それだけですべてを察した三田村が律動を刻み始める。内奥の襞と粘膜を擦り上げられ、鳥肌が立つほど和彦は感じてしまう。「うっ、ううっ、うあっ――」「……俺は、こういう先生も見たかった。首筋まで真っ赤に染めて、感じている先生を……」 三田村の唇が首筋に這わされ、ささやかな愛撫の感触にすら狂わされる。三田村に触れられる悦びで、体が蕩けてしまいそうだ。 うわ言のように三田村を呼び続けながら、必死に背にすがりつく。そんな和彦を惜しみなく三田村は愛してくれる。淫らな蠕動を繰り返す内奥の深い場所にまで欲望を突き込まれ、呻き声を洩らして和彦は感じる。「あっ、あっ、三田村っ……。奥、すご、い……」「ああ。よく締まってる。先生が、俺を欲しがっている」 狙い澄ましたように最奥を突き上げられ、そのたびに痺れるような法悦が溢れ出し、全身に行き渡っていく。内奥と欲望を擦りつけ合うだけの行為だというのに、気がつけば和彦は、二度目の絶頂を迎え、今度は自分だけではなく、三田村の下腹部も濡らしていた。 このとき恥知らずな嬌声を上げていたかもしれないが、惑乱した和彦には気にかける余裕もなく、ただすがるように三田村を見つめるのが精一杯だった。誘われたように三田村が目元に唇を押し当て、滲んでいた涙を吸い取ってくれる。 熱い吐息がこめかみに触れ、反射的に和彦は目を閉じる。内奥深くで三田村の欲望が爆ぜ、たっぷりの精を注ぎ込まれる。満たされる悦びに、浸っていた。 三田村の筋肉の強張りが一気に解ける。全身の血がめまぐるしく駆け回っているのか、熱い体から汗が噴き出し、流れ落ちていく。まるで、何かから解放されたようだなと思いながら、和彦は優しく三田村の体を撫でてい
さらに和彦の興奮を煽るように、三田村の指が内奥の入り口を軽く擦り始める。刺激に弱いその部分はすぐに物欲しげにひくつき、押し込まれる指を少しずつ呑み込み始める。和彦自身の汗と、三田村の唾液が垂れて湿っているせいもあり、引き裂かれるような痛みはなかった。何より、三田村が慎重だということもある。 挿入された指が円を描くように内奥で蠢き、自分でもどうしようもない反応として和彦は、引き絞るように内奥を収縮させた。その感触を楽しむように指を出し入れされ、そうしているうちに、三田村を受け入れる態勢ができてくる。 指の数を増やされて、内奥の浅い部分をある意図を持って押さえられる。三田村の口腔で和彦のものが完全に熟し、あとは破裂する瞬間を待つだけとなる。すると三田村が口腔での愛撫をやめて顔を上げ、内奥からは指を引き抜いた。「三田村……?」 声を発した瞬間、和彦は羞恥で燃え上がりそうになる。甘ったるくてすがりつくような自分の声が信じられなかったのだ。三田村も気づいたはずだが、何も言わず、口元に微かに笑みめいたものを浮かべてすぐに、表情を引き締めた。 片足をしっかりと抱え上げられて、綻んだ内奥の入り口に猛った欲望が押し当てられる。指とは比較にならない大きさと熱を持ったものが、内奥を押し広げていく。 息苦しくなるような異物感に、眩暈がするほどの高揚感を覚え、たまらず和彦はきつく目を閉じる。瞼の裏では鮮やかな色彩が点滅し、飛び交っていたが、それもわずかな間だ。一気に真っ赤に染まった。 混乱するほど強烈な感覚――快感が和彦に襲いかかっていた。「んあっ……」 ビクビクと体中を震わせながら目を開けると、三田村は食い入るように和彦の下肢を見つめていた。三田村の欲望を内奥に受け入れながら、和彦は絶頂に達していたのだ。迸らせた精で、下腹部が濡れている。「――〈これ〉を、見たかったのか?」 和彦が抑えた声で問いかけると、ふっと眼差しを和らげて三田村が頷く。「ああ」 三田村が腰を進め、内奥深くまで逞しい欲望を埋め込まれる。息を詰めて重々しい衝撃に耐えていると、三田村が覆い被さってきた。和彦は
「そんなこと言って、どうなっても知らないからな」 三田村の胸元に顔を伏せ、舌先で肌を舐め上げる。すると三田村が大きく息を吸い込んだ。「先生――……」 わずかに動揺を滲ませた声を発した三田村だが、あえて無視した和彦は、微かに濡れた音を立てながら肌を吸い上げ、舌を這わせる。 三田村が深くゆっくりとした呼吸を繰り返すたびに、胸が大きく上下する。落ち着いているようだが、触れている三田村の肌が熱を帯びていくのを、和彦は感じていた。それだけではなく――。 腹筋のラインを舌先でくすぐりながら、スウェットパンツの上から三田村の両足の間に触れる。何よりも明らかな反応がそこにはあった。上目遣いで三田村の表情をうかがう。優しいだけではない、狂おしい欲情を湛えた眼差しが、じっと和彦を見つめていた。 次の瞬間、三田村に腕を掴まれて引っ張られる。体を引き上げられてベッドに押さえつけられ、間近で三田村と目が合ったかと思うと、強引に唇を塞がれた。 これが今日、三田村と初めて交わす口づけだった。一瞬にして和彦の全身が、燃え上がりそうに熱くなり、身悶えしたくなるような強い欲情が胸の奥で生まれる。 唇と舌を貪り合いながら、三田村の指がパジャマの上着のボタンにかかる。ボタンを一つ外されるごとに期待が高まり、和彦は小さく声を洩らす。そんな和彦を宥めたいのか、煽りたいのか、三田村の舌が口腔に入り込み、感じやすい粘膜をじっくりと舐め回される。 ようやくパジャマの上着を脱がされると、和彦は両腕を三田村の背に回し、虎の刺青を夢中でてのひらで撫でる。三田村の筋肉がぐっと引き締まり、一際体が熱くなった。普段は誠実で優しい男だが、背の虎に触れると簡単に猛々しい獣に変わり、その変わり様に、和彦は惚れ惚れとしてしまう。 自分が、この男を変えられる特別な存在なのだと、強く認識できるからだ。 背の虎に夢中になっている間に、三田村に下肢を剥かれる。さらに、すでに高ぶっている三田村の欲望を両足の間に擦りつけられ、互いのものがもどかしく擦れ合い、焦れるような感覚を生み出す。「――先生、俺に舐めさせてくれ」 三田村が耳元で、掠れた声で囁く。耳朶に触れ
不器用で優しい男を、そんな気持ちで苦しめていいのか――。 ふっと魔が差したように、そんなことが頭を過る。すると、中嶋に言われた。「先生がそんなことを考えていると知ったら、多分三田村さんは、喜ぶと思いますよ。もっとも、あの無表情は変えないと思いますけど」「……根拠は?」「元ホストの勘」 真剣に聞くのではなかったと、和彦は背もたれにぐったりと体を体を預ける。「元ホストの勘で、もう一つ言いたいことがあるんですが」「この際だ。なんでも言ってくれ」「――三田村さんは、手に入れるためじゃなく、失わないために鬼になるタイプですよ。命がけで先生に手を出したんなら、死んでも先生から離れないでしょう。そんな人が、先生に振り回されたぐらいで参るとは、到底思えません」 のろのろと姿勢を戻した和彦は、どういう表情を浮かべればいいかわからず、結局、聞こえなかったふりをしてコーヒーを啜る。 空気の読める中嶋はそれ以上は何も言わず、澄ました顔でチョコレートを摘まみ上げた。** さすがに夜は少し冷えると、開けた窓から外を眺めていた和彦は軽く身震いする。パジャマ姿で夜風に当たるのは、少々無謀だったようだ。 ただ、窓を閉めていては感じない夜風の冷たさや、街中とは明らかに違う空気の匂いは、堪能する価値がある。何より、静かだ。風が木々を揺らす音がせいぜいで、車のエンジン音すら響くことはない。本当に、周辺に人気がないのだ。 こんな環境に身を置くと、ふらりと夜の散歩に出かけたくなる和彦だが、それは明日の楽しみにしておこうと、静かに窓を閉めた。 ベッドの傍らを通り過ぎ、部屋を出る。廊下はぼんやりとした明かりで照らされているが、人影はない。立派すぎる別荘も、宿泊者が少ないときはただ寂しいだけだなと思いながら、和彦は隣の部屋の前へと行く。 露骨な気遣いを示した中嶋は一階の部屋を利用しているため、二階で休んでいるのは、和彦ともう一人しかいない。 ノックもせずに静かにドアを開けると、室内の様子がわかる程度には明るかった。光源は、音量を抑えたテレビだ。和彦は足音を
かつてペンションだったという建物は、そこかしこにその名残りがある。食器の数だけではなく、そもそも部屋数が多いし、風呂も大きい。立地的には、ほどよく隠れ家と呼べる場所にあり、総和会が人を集めるのに利用しているのも、こういったところが使い勝手がいいためだろう。「……悪党の巣窟、か……」 さきほど三田村から聞いた言葉を、無意識に和彦も呟く。賢吾のことなので、三田村に話しながら、自虐とも皮肉ともとれる表情を浮かべていたかもしれない。 和彦に気づいた中嶋が、皿をテーブルに置いて声をかけてきた。「先生、コーヒーを飲みませんか? コーヒー豆を買ってきたんですよ」「だったら、ぼくが淹れる。君はその間に、自分の仕事をしてくれ」 脱いだジャケットをイスにかけると、さっそく和彦はキッチンに入り、コーヒーメーカーを使ってコーヒーを淹れる。 三田村の分はサーバーに残し、コーヒーを注いだ二つのカップを持ってダイニングに戻ると、中嶋は皿にお菓子を出しているところだった。「準備がいいな」「先生のお世話係ですからね、俺は。なんでも言ってください」 和彦は苦笑を洩らしてテーブルにつく。「適当でいいよ。手を抜かれたなんて、誰かに告げ口するつもりはないから」「さらりと怖いこと言わないでくださいよ、先生」 中嶋が隣に座り、同じタイミングでコーヒーを啜る。ほっと吐息を洩らした和彦は、高い天井を見上げた。「なんだか、寂しいな。こんなに広い別荘を、三人で使うなんて」「だからといって、総和会と長嶺組からぞろぞろと護衛を引き連れて、泊まる気にもなれないでしょう?」「まあ……。贅沢を言ってるな。みんな気をつかってくれたことなのに」「同じぐらい、思惑はあると思いますよ」 中嶋から意味ありげな流し目を寄越され、和彦は顔をしかめる。「……何か、聞いているのか?」「長嶺組長からは何も。さっき言ったとおり、別荘に滞在する間のお世話係を頼まれただけです。それと南郷さんからは、先
「――何があったのか、オヤジから聞いた」 千尋の言葉に、和彦はそっとため息を洩らす。「知らせなくていいと言ったのに……」「ダメだっ。大事なことだよっ。それに――オヤジだけ知っていて、俺が知らないなんて、おかしいだろ。先生は、オヤジだけじゃなく、俺の〈オンナ〉なんだ」 和彦はじっと千尋の顔を見つめる。脳裏に、つい最近、三人の男たちに同時に体を嬲られた体験が蘇る。その中に、まだ若い千尋が加わっていたのだ。しかも、行為のあと、和彦の体を丹念に洗ってくれた。その手つきは、優しくはあったが、傲慢でもあった。〈これ〉は自分の
「まずは、一回」 賢吾が低く呟き、限界を迎えようとしている和彦のものを握り、軽く数回扱く。深い吐息をこぼした和彦は、腰を揺らしながら賢吾の手の中で果てていた。 脱力した体はすぐに仰向けにされ、パンツの前を寛げただけの姿で賢吾がのしかかってくる。言葉もなく貪り合うような口づけを交わしながら、賢吾に足を抱えられ、蕩けて喘ぐ内奥を再び貫かれた。 和彦はビクビクと体を震わせながら、賢吾の欲望を締め付け、淫らな襞と粘膜で奉仕する。シャツすら脱いでいない賢吾だが、そのシャツはすでに汗で濡れ、筋肉が硬く張り詰めているのがわかる。本物の大蛇とは違い、この大蛇の体は興奮
一言も反論できなかった。しかし、十歳も年下の青年に言い負かされたままでは悔しいので、精一杯の抵抗を試みる。「……ぼくの周りにいるのが、食えない男ばかりだからだ。だからぼくは、付け込まれる」「それって、俺も入ってる?」 そう問いかけてくる千尋は、やけに嬉しそうだ。和彦は、そんな千尋の頬をペチペチと軽く叩く。「目をキラッキラさせて、そういうことをストレートに聞いてくるうちは、まだまだかもな」 答えながら和彦は、笑みをこぼす。すると、ふいに真顔となった千尋が顔を寄せてきて、チュッと軽く音を立てて唇を吸われ
「千尋……」「大丈夫。何かあったら、俺が守るよ」 千尋の腕の中、身じろいだ和彦がどうにか振り返ったのと、三田村が待合室に飛び込んでくるのはほぼ同時だった。 三田村はわずかに目を見開いたが、次の瞬間には無表情に戻る。「――どうかしたのか」 三田村にそう問いかけたのは、千尋だ。「いえ……。先生に何があったのか、組長に教えられたものですから……」「電話してくりゃ、それで済む話だろ。忙しい若頭補佐が、わざわざ足を運ぶなんて」