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第6話(15)

Auteur: 北川とも
last update Date de publication: 2025-11-19 17:00:06

「デート……」

 つい声に出して呟いた和彦は、秦の存在を思い出してうろたえる。

「お前、何言って――」

『ここんところ、先生忙しくて、俺の相手してくれないじゃん。家でそれをぼやいたら、オヤジに、自己主張しておかないと先生に存在を忘れられるぞ、って、ニヤニヤ笑いながら言われたんだよ』

 余計なことを、と心の中で舌打ちする。おそらく賢吾のことなので、決して息子を励ますために言ったのではないだろう。そもそもまともな親なら、自分のオンナを息子と共有すること自体、ありえないのだ。

 和彦と三田村が関係を持っていることを、千尋は知っている。和彦自身が告げたわけではないが、長嶺組での千尋の存在を思えば、知らないということはありえない。なのに千尋は、そのことで癇癪を爆発させることもなく、相変わらず犬っころのように和彦にじゃれついてくる。だからこそ、和彦としては身構えてしまうのだ。

 賢吾が常に湛えている迫力は確かに怖いが、千尋の、いつ、なんの拍子に豹変するかわからない危うさも、十分怖い。

「お前のこ
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  • 血と束縛と   第40話(36)

    「千尋、もういいから……」 なんとか千尋の頭を上げさせようと、茶色の髪を梳いてやる。しかし千尋は確信を得たように、硬くした舌先で先端をくすぐってくる。ときおり歯が掠め、そのたびにヒヤリとする恐怖に襲われるが、同時に、先日の賢吾との淫靡な行為が蘇る。「あっ、それ、嫌だ、千尋。怖い……」「ウソ。いっぱい、濡れてきた」 わざと和彦に聞かせるように、千尋がピチャピチャと濡れた音を立てて、欲望の先端を舐めてくる。さらには爪の先でも弄られて、和彦は鼻にかかった甘い呻き声を洩らしていた。 まさか賢吾は千尋に話したのだろうかと、つい脳裏を過りはするものの、本人に確かめるわけにもいかない。「ああっ――」 先端から尽きることなく滲み出る透明なしずくを吸われ、さらに出せといわんばかりに舌先でくすぐられる。和彦は甲高い声を上げ、身悶えていた。 汗と、それ以外のものによって湿りを帯びた内奥の入り口を、千尋の指先が掠める。押さえつけるようにして刺激され、ときおり舐められて濡らされながら、ゆっくりと指を挿入されていた。和彦は小さく喘ぎながら、内奥を妖しくひくつかせる。 全身から熱気のようなものを立ち昇らせ、顔を上げた千尋が荒い息を吐く。内奥から指を出し入れしながら、思い出したように呟いた。「……行かせたくないなー。すごく心配だよ。誰かに連れ去られて、戻って来ないんじゃないかって考えると、気が狂いそうになる」 すぐには思考が追い付かなかった。肉を開かれ、擦られる感触に意識を集中していた和彦は、ぼんやりと千尋を見上げる。千尋は愉悦を覚えたように目を細め、もう片方の手を和彦の胸元に這わせてきた。触れられないまま硬く凝った突起を、てのひらで捏ねるように刺激され、意識しないまま内奥をきつく収縮させる。「こんないやらしい和彦を、一人で送り出すなんて、嫌だよ。……どんな男が食いつくか、わかったものじゃない」「人を、魚の餌みたいに言うな……。それに、実の父親と会うだけなんだから、余計な心配だ」「本当にそ

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     身近にいすぎて見過ごしてしまうが、千尋は外見も中身もまだ成長過程にある。犬っころのような青年が、背に彫った恐ろしくも献身的な獣を身の内に宿す日は、近いかもしれない。それとも、すでに棲みついて、息を潜めているのか。 それはとても怖いことだが、一方で、抗い難い魅力も感じてしまうのだ。 ふいに千尋の片手が伸びてきて、髪を掻き上げられる。「何か、考え事してる?」 少し怒ったような声で問われ、和彦はふっと我に返る。「お前も成長してるなと思って。体、鍛えてるだろ?」「最近、人に勧められてさ、ジムに通い出したんだ。スーツ着る機会も増えたし、ちょっとでも映える体つきになりたくて。何より、体力つけないと。この世界、化け物みたいな体力持ったオッサンたちが多すぎるんだよ」「……ほどほどでいいからな」 和彦の言葉に、千尋が意味ありげな笑みを浮かべる。「なんの心配してるの? いやらしいなー、和彦は」 ここでムキになっては相手の思うツボだと、和彦は自分を戒める。反論は、言葉ではなく行動で示した。 興奮して身を起こした千尋の欲望を優しく片手で握り込むと、ビクリと腰を震わせた千尋が短く声を洩らす。「お前もいやらしい。――もう、こんなにして」 握り込んだものを緩く上下に扱いてやると、素直に悦びを表し、硬さも重量も増していく。甘ったれの本領発揮とばかりに、掠れた声で千尋に求められ、ゾクゾクするような興奮を覚えて和彦は応じる。 頭の位置を下ろし、千尋の反応をうかがいながら、欲望の根元から丹念に舐め上げてやる。ときおり唇を這わせ、優しく吸いついてやると、それだけで千尋は切羽詰まった声を上げ、体を波打たせる。 先端から滲み出た透明なしずくを舐め取り、まず括れまでを口腔に含むと、指の輪で欲望を扱きつつ、唇で締め付ける。 たっぷりの唾液を絡ませた舌で、口腔に含んだ先端を舐める。千尋がうわ言のように『先生』と呼びながら、和彦の後頭部に手をかけてきた。望み通り、口腔深くまで欲望を呑み込み、熱く濡れた粘膜をまとわりつかせ、吸引する。 瞬く間に逞しく成長した熱い塊が、和彦の喉を圧迫す

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    「俺、カッとしやすいけど、自分にできることと、できないことの区別はつけているつもりだよ。和彦に何かあったとき、一番動けるのはオヤジ。そのオヤジが止めないんなら、多分俺にできることはない。……長嶺で一番力を持っているのはオヤジじゃなく、じいちゃんだからね。単なる父子ゲンカなら逆らうことも、殴り合うこともできるけど、二人とも、それぞれ組織を背負ってる。そこに面子が乗っかってるんだ。父子でも、絶対的な不可侵ってやつはある。いや、父子だから、かな」 千尋なりに、組織の力学というものをきちんと理解しているのだ。むしろ、裏の世界に引きずり込まれて二年も経っていない和彦より、生まれた瞬間からその世界で育まれてきた千尋のほうが、骨身に叩き込まれているはずだ。 そのうえで尚、千尋は成長している。以前に、和彦が兄である英俊と対面することになったとき、火のような激情を露わにして悔しさをぶつけてきた千尋だが、今は少し様子が違う。感情的になりながらも、経験と知識が歯止めとして働いている。 優しく甘いホットミルクの味が、そう知らせてくるのだ。「――移動の車の中で、俺なりにオヤジの真意ってやつを考えてたんだ」「うん?」「和彦に関することでは、じいちゃんを……、長嶺守光を全面的には信用するな、って言いたいんじゃないかって。だからオヤジは、和彦がまた自分の父親と会うことになった経緯を教えてくれた」 どうだろう、と和彦は心の中で呟き、またホットミルクを啜る。賢吾が何を考えているのか推測することは難しいし、さらに父子間の機微となると、それはもう想像が及ばなかった。 それでなくても賢吾と千尋は一般的な父子とは言い難く、常識が当てはまらない。「……思惑はどうあれ、ぼくは、父さんと会わざるをえない。父さんと会長の間に何かしら密約があって、履行のためにぼくは欠かせない駒なんだ。お前や組長には申し訳ないけど」「そんなこと思わなくていいけどさ……。それより、俺の前でも遠慮なく、オヤジのことを名前で呼んだら? 賢吾さん、って」 思いがけない提案に、噎せて咳き込んだ

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    『まあ、そんなところです。もちろん、あの人がどこにいるかは知りませんよ。ただ、新しい携帯電話の番号は知っています。少し前にうちの店のスタッフが、鷹津さんに似た男から手紙を預かって、そこに書かれてありました』「……どういう意図があって、そのことをいままで黙っていたんだ」『わたしはそこそこ野心は持っていますが、鷹津さんには多少なりと友情めいた感情を抱いているんですよ。さんざんタダ酒を集られましたが、その分の便宜は図ってもらいましたし。そして先生には、命を助けてもらった恩があります。――鷹津さんと先生は、お互いを気にかけていたでしょうから、わたしはささやかなお節介をしただけです。ときどき、先生の様子を知らせるというお節介を。鷹津さんは、聞きたくないとは一度も言いませんでした。ただ黙って聞き入って。そうですか……。あの人やっぱり、先生に会いに行かれたんですね』 危険を冒して、と念を押すように言われ、和彦はゾクリと身を震わせる。長嶺組と総和会から追われている男が繁華街をうろつく危険性は、鷹津自身がよく承知しているだろう。 それでもあえて、鷹津はやってきたのだ。胡散臭い秦からの情報を信じて。 感情が高ぶり、心を揺さぶられるものがあったが、和彦は必死に押し殺す。そうしなければ、鷹津の連絡先を教えてほしいと秦に頼んでしまいそうだった。 ゆっくりと深呼吸をしてから、なんとか平坦な声を作り出す。「確認したかったことは、それだけだ。……鷹津の連絡先を君が知っていることを、他に誰が――」『誰も。先生だけです。本当は、先生にも話すつもりはなかったんですよ。鷹津さんに口止められていましたから』「……昨夜のやり取りは、ヒントのつもりだったのか」『気づかれなければ、それはそれでよかったんです。知れば、先生は煩悶するでしょう?』 しない、と言い張るのも大人げなく、和彦は唇を引き結ぶ。『先生なら大丈夫だと思いますが、わたしと鷹津さんが繋がっていることは他言無用でお願いします。当然、長嶺組長にも。後ろ盾になっていただいている身でわたしも心苦しいで

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