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第8話(21)

Author: 北川とも
last update Last Updated: 2025-12-07 11:00:44

「……お宅の組長、何か企んでいるのか?」

 走り去る車を見送りながら、傍らに立つ三田村に声をかける。表情を変えないまま三田村は首を横に振った。

「俺程度の人間が読み切れる人じゃない」

「だったら、ぼくはなおさら無理だな」

 三田村が何か言いたげな顔をしたので、和彦は素早く釘を刺した。

「そんなことはない、なんて言うなよ。そこは素直に、同意してくれ」

 こんなことでムキになる和彦がおもしろかったらしく、三田村は微笑を浮かべる。賢吾の凄みのある笑みを見たあとだと、ほっとするような表情だ。

 青年を診るため、さっそく部屋に向かっていたが、鉄筋アパートの階段の途中でふいに三田村が足を止めた。

「――あれから、秦は何か言ってこないか?」

 突然の問いかけに、和彦はビクリと肩を震わせる。隣に立った三田村が、容赦なく鋭い視線を向けてきた。

「あっ……」

 小さく声を洩らしてから、答えを逡巡する。
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