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第8話

مؤلف: 酔夫人
last update تاريخ النشر: 2026-01-09 13:30:47

事件は急に起きる。

そこかしこで。 

東京に戻ってあの子の骨を埋葬した数日後、草薙家家に警察官がきた。

あれがなければ、【彼女】のことを過去にできたかもしれない。

俺が結婚した日に死んだというタイミングの悪さに罪悪感めいたものを感じたとしても、不幸にも事故で死んでしまった女だと思えたかもしれない。

 *

うちに来た警察官を、俺は【彼女】の事故の件で追加の確認に来たのだと思った。

夕飯時で、花江さんが忙しそうだった。

俺に用事だと思ったから、俺が出ると花江さんを制した。

警察は俺ではなく、綾子に用事だった。

このときも、特に何も思わなかった。

綾乃はモデルという華やかな業界の人間。

知人も多いから、そのうちの誰かのトラブルだろうと思った。

 .

俺は警察官を離れに案内した。

結局俺は二ヶ月近く北海道にいて、帰ってきたら綾子は離れで生活していた。

母さんたちには、新婚旅行を一日で切り上げたから怒っているのだと言われたが、“怒っている”とは思わなかった。

綾子は俺を愛してなどおらず、『草薙家の奥様』という肩書きがあれば十分だと分かっていたから。

新婚夫婦と振舞う必要もないと、互いに思っているのだろうと俺は放っておいた。

―― な、なんですか?

離れにて、綾子は明らかに、今ほどではないが、怯えた様子を見せた。

警察官を案内したのだと言うと、綾子は明らかに安堵した。

これが、最初の違和感。

いまにして思えば、あのとき綾子が怯えたのは、俺·が·警·察·官·を·連·れ·て·き·た·と思ったからだった。

俺はこのときまで綾子が何かしたなど思っていなかった。

綾子が怯えたのは警察官に対してであって、明らかに安堵したのも、俺が警察官たちを案内してきたから、俺が聴取に立ち会うと分かって安堵したのだと思った。

警察官に対して怯えは、大げさでも感受性のレベルの話で、忌避感を覚えるのはよくあることだ。

北海道にいる間はほぼ警察にいたから、自分は警官の姿に慣れてしまっただけ。

普通は綾子のように、警察官という権威というか、力のある存在が来たことそのものに驚くことは不思議ではない、と思っていた。

綾子が何かしたなどと、俺は思っていなかった。

俺は、その場を離れようとしたが警察官に留められた。

警察官は二人とも男性だから、女性の綾子一人で話をするよりも俺がいたほうが色々いいと言われた。

綾子は、一人で大丈夫だと言った。

いつもの俺なら綾子が一人でいいと言ったのだからといってその場を去っただろうが、これも虫の知らせか、俺は同席を了承した。

警察が綾子を訪ねてきたのは、三沢みさわ加奈かなという女の転落死の捜査だった。

三沢加奈という女を、俺も知っていた。

綾子を通してではなく、彼女を通して。

三沢加奈は彼女と同じ施設の出で、同じ年の二人は高校卒業と同時に施設を出て、そのあとはずっと同居をしていた。

最初は、同姓同名かと思った。

綾子と三沢加奈には接点らしき接点がない。

出身校は違う。

モデルで草薙グループの副社長夫人と、普通の会社員で生活圏も違う。

でも、見せられた写真に写っていた女は、俺が知っている三沢加奈だった。

綾子はよくモデル仲間とクラブで遊んでいたから、そこで知り合ったのか。

妙な偶然もあったものだ。

このときは、そんな風に思っていた。

三沢加奈は彼女が北海道に行ったあと、彼女と同居していたアパートから青山の分譲マンションに引っ越していた。

そのベランダから落ち、下の植え込みで死んでいるところを管理人に発見された。

普通の会社員が二十五歳で分譲マンションとは豪勢だと思ったが、彼女と同居している間に貯蓄ができたのだろうと思って『引っ越し』に特に疑問を持たなかった。

三沢加奈の部屋は鍵が閉まっていて、室内には争った形跡がなかった。

マンションの防犯カメラを調べたが、不審な人物は映っていなかった。

背中から落ちていたため自殺とは考えにくいが、落下地点と手すりに残った指紋などから、他者に押された可能性は極めて低いとのこと。

これらの証拠から警察の判断は「ほぼ事故」だったが、ベランダの柵の高さや構造は、絶対に転落しないことはないが、通常の成人が誤って転落するには違和感があると警察官は説明をした。

また、三沢加奈の隣の部屋の住民が「来ないで」という女の声を聞いたということから、警察は違法薬物の使用を疑い血液検査を行った。

その結果、三沢加奈の体内からベンゾジアゼピン系の抗不安薬が検出された。

違法薬物ではないが、その依存性の高さから医師の処方が必要な薬なのだが、三沢加奈にはその処方履歴がなかった。

処方薬は、医師の診察を受けた上での個人専用のもの。

他人に譲渡・販売・譲与することは違法であり、特に、向精神薬、睡眠薬、抗不安薬などは厳しく規制されている。

三沢加奈は、誰からその薬をもらったのか。

それで警察は三沢加奈の連絡先にあり、なおかつベンゾジアゼピン系の抗不安薬が処方されたとSNSで呟いていた綾子のところに来たのだった。

俺と再婚約する前、彼女はSNS上に「婚約者がある女に奪われそう」「お医者様に相談したら抗不安薬を処方された」「眠ると不安を忘れられる」など悲劇のヒロインっぷりを披露していた。

コメント欄には「頑張って」「NTR女に負けないで」など綾子を応援するコメントが並んだ。

それはさぞかし綾子をいい気分にさせたようだが、このときはそれが仇となった。

警察も、綾子が三沢加奈に何かしたとは思っていなかっただろう。

綾子が「知りません」と関与を否定すると、草薙グループ副社長の妻という権威もあり、警察はさっさと帰っていった。

でも、俺の中には綾子と三沢加奈が知り合いだという事実が残った。

どういう知り合いかは分からないが、綾子が連絡先を教える程度の知人であることは分かった。

そして、俺は三沢加奈と墨田すみだ聡さとしの繋がりを見つけた。

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    【彼女】と【あの子】の骨を引き取る。【彼女】には身寄りがないから、それは簡単に叶う願いだと俺は思っていた。でも、簡単にはいかなかった。思った以上の時間がかかった。それは、俺と【彼女】が何の証明もない関係だったからだ。元恋人という関係は、公的な記録にない。元恋人という関係は証明する手段はなく、そんな関係に法的な力はない。病院、役所、葬儀社相手に、俺はそれを思い知った。役所でも、葬儀社でも、最初に確認されるのは俺と【彼女】の関係性だった。「ご家族ですか」という問いに、俺はいつも一拍遅れて「いいえ」と答えた。婚姻関係のない俺たちは他人。家族ではない記録ばかりが証明できる関係だっ

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    「婚約者のいる男を寝取ろうとする女、か」あの真っ直ぐな【彼女】が、母さんにそんな誤解をされていたとは……なんなんだろう。 「俺は、彼女と付き合う前に綾子には……」「分かっているわ」母は俺の言葉を止めた。いつもより、甲高い声。少し荒い息。緊張、しているのか?母さんが?「いまは分かっているの。あの子はそういう子じゃないって」母さんの顔が歪む。「でも、あのとき、そんな女だという綾子さんの言葉を信じた。あの子に奪われる、綾子さんのその不安に同調してしまった」「……同調?」「お義父様の送別会に、あなたはあの子を連れてきた。あなたは、あの子を大事にしていた。お義父様も、あの子を可

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