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第5話

Author: 言野朝子
智之が千絵美を連れて家に戻ったとき、心臓が不意にドクンと激しく脈打った。

この感覚は、小檜山かほ(こひやま かほ)が死んだあの日と、まったく同じだ。

かほは、彼の幼なじみであり、初恋の相手でもあった。

彼女が不慮の死を遂げたあの日、彼の世界はまるごと崩れ落ちたようだった。

何を見ても面白くない。何を食べても味がしない。

そんな彼の前に、ある日亜紀が現れた。

その顔も、表情も、声も、かほにあまりにもよく似ていた。

彼は、この顔にどうしようもなく惹かれていった。

彼女が何をしても、甘やかしてやり、尻拭いまでしてやった。

けれど、ときどきその顔の奥に映っていたのは、かほではなかった。

ただ、亜紀自身だった。

彼はなぜか、その感覚を怖いと思うようになった。

まるで自分のやったことが、かほへの裏切りであるかのように。

だから千絵美が現れたとき、彼は迷うことなく千絵美を選んだ。

亜紀を遠くへ追いやってしまえば、自分の心は変わっていないことになる。

そう思ったのだ。

けれど頭の中には、さっきの亜紀の目ばかりが浮かんでくる。

引き留める気配もなく、名残惜しむ様子もない
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