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第1章:3

مؤلف: 社菘
last update تاريخ النشر: 2025-07-04 18:00:45

「では、まぁ……お互いに干渉せずに過ごしましょう、ということで……?」

「そうですね。公式な場では妻としての役目をお願いしたいですが」

「それはもちろん……至らない部分があるかもしれませんが、よろしくお願いします」

「はい、こちらこそ。俺は今まで婚約者などがいませんでしたので、女性の扱いに不慣れな部分があります。無神経なことをしたらすみません」

そう言いながらシルヴァンはぺこりと頭を下げる。ロレインより3歳年下だと聞いていたけれど、それにしてはしっかりした青年だなと感心した。

違う国から嫁いできた妻を気遣う夫としては満点の態度だろう。ただ、大人しく見えても彼は獣人。狼の大きな耳と牙、鋭い爪を持つ種族のトップなのだ。部屋で二人きりになると確かに少し威圧感はあるので、怒らせないようにしなくてはと考えてしまう自分がいる。

先ほどのジェイクとの話のように、獣人に嫁ぐのは嫌だと思う人間の感情をロレインはやっと少しだけ理解できた。

「わたくしも懇意にしていた男性はいませんでしたので……お互いに無理はせずに夫婦生活を送りましょう」

なんて綺麗な言葉は建前で、正直な気持ちはお互い関わらないようにしよう、という話だ。今は修道女の服を着て、大聖堂で夫婦の契りを交わした相手の中身が男だなんて、シルヴァンは想像もしていないだろう。バレるかバレないかギリギリのラインに立っているロレインはできる限り彼を遠ざけなければ、性別を偽って結婚したとバレると今後このアストライアで命があるかどうか分からないのだ。

「お伝えしようと思っていたのですが、夫婦の寝室はただの飾りですので」

「飾り、というと……?」

「使うことはないと思います。俺たちはお互いに干渉せず、ですよね」

「陛下がそれでよろしいのであれば、こちらにとってはありがたい申し出です」

「俺たちが不仲だとか、子供ができないとか言われるでしょうが……そもそも獣人と人間の婚姻なので、子供が望めるかも分かりません。あなたは世継ぎのことは気にせず、この国に慣れることを第一に考えていただけたらと思います」

シルヴァンはドライというより、リリアと同じでこの政略結婚をよく思っていなかったのかもしれない。彼の意思ではなく、大臣たちなどの指示だった可能性が高いなと思えてきた。

だからできるだけお互いに干渉せず、子供も作らず、形式だけの夫婦でいようとシルヴァンからも提案されているのだ。

「では、生活する上で何か不自由なことがあれば執事長のマリウスか、メイド長のヴィクトリアに伝えてもらえたら対応します。二人とも獣人ですがこの国にはうちの宰相と同じように人間もいますから、困りごとにも対応できると思いますので」

「分かりました。ありがとうございます」

「俺はこれで……どうかいい夢を」

シルヴァンはロレインの手を取り、手の甲に口付けて部屋を去っていった。

「……めっちゃいいやつじゃね?」

取って食われるかも、と少しでも思ってしまったことを謝りたいくらいには、シルヴァンは紳士的だった。アストライア帝国に来る前にレグルス王国で聞いていた噂では、シルヴァンは人との関わりを避け冷徹な孤高の狼だと聞いていたのだ。やはり噂は噂に過ぎず、自分の目で確かめないと人となりは分からないなと実感した。

「でも修道女作戦は上手くいったな。このままバレなきゃいいんだけど……本当に無理がある設定だよなぁ……」

もしもここが獣人の国ではなく普通の人間が統治している人間だけの国なら、ロレインが女装して嫁いだら一瞬でバレていた可能性のほうが高い。この国にそれを見抜く力のある人がいないというわけではなく、ロレインが男性だとしてもこの国では小さいのが原因だ。

ただ、このまま本当にバレなかったとして。

ロレインが時間を稼いでいる間にヴェストールはリリアを見つけるか、離縁してもいいような打開策を考えると言っていたけれど、それがずっと見つからなかったらどうするつもりだろうか。

今日や半年、または一年ほどは『修道女を目指していたから』と言って性行為を拒否できるかもしれないが、段々と不審に思われるのは目に見えている。シルヴァンは『獣人と人間の間に子供が望めるか分からない』と言っていたけれど、周りの人が全員そう考えているとは思えないし、怪しむ人も出てくるだろう。

ずっと性別を隠し通せるわけはないと思うけれど、この生活をいつまで続けたらいいのかゴールが見えないので悩ましい。

「リリア……」

ヴェストールにリリアを見つけ出してほしいかと問われると、ロレインの気持ちは複雑だった。全く知らなかったけれど、妹には家と縁を切ってでも添い遂げたい相手がいたのだ。

彼女は生まれた時から自分の役割が決まっていて、いつかレグルス王国のために知らない誰かに嫁がないといけない運命が決まっていた。リリアは王女としてその運命を受け入れていたと思うけれど、そう分かっていても誰かを愛してしまったのだろう。

ロレインはリリアが見つけた愛を引き裂いてまで国のために結婚し、ロレインをこの状況から救ってくれと彼女に面と向かって言えるかと問われると、答えはノーだ。

できれば結婚ではなく違う手段でアストライア帝国と同盟を結べればそれが一番いいのだが、その手段がなかったからシルヴァンと結婚の話になったわけである。

「う〜〜〜……かと言って、今の俺は無力だ……リリアになりきるしか術がない……」

大きすぎるベッドにぼふりと身を投げる。柔らかい枕に顔を押し付けると、レグルス王国でロレインが使っていたオイルの香りがして、少しだけ心が落ち着いた。

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  • 身代わり花嫁の女装王子は狼陛下を遠ざけたい   第6章:5

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  • 身代わり花嫁の女装王子は狼陛下を遠ざけたい   第4章:2

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    last updateآخر تحديث : 2026-03-24
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