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第15話:国家間交流と、恋する政略

Penulis: fuu
last update Terakhir Diperbarui: 2025-07-14 12:00:50

「外交、ですって?」

エリシアが口をあんぐりと開けたのも無理はない。

「うん。ついに来たよ、国交樹立のお誘いが!」

ネフィラが書状を振って誇らしげに報告する。

「え、え、どこの国から?」

「三つ来てるわ。“氷雪の王国グレイスフロスト”、“砂の自由商都エリゼール”、そして……“新王制を掲げたルヴァーニュ共和国”」

「多いな!?建国から何ヶ月だと思ってるのよ!?恋する暇ないじゃない!!」

「逆ハーレム国家、外交もハーレム構造なのか……?」

ユスティアが若干引きつった表情で呟く。

◆◆◆

「というわけで!」

エリシアは気合を入れて、各国の使者を迎えるための“大歓迎セレモニー”の準備に取りかかっていた。

「国家間の友好関係は、“第一印象”が大事よ!ここで『この国イケてる!恋もできそう!』って思わせなきゃ!」

「その基準で外交してるの、世界広しといえどグランフォードくらいですよ……。」

クレインがため息をつきつつ、宴会のメニュー表に目を通す。

「でも正直、心配なのはルヴァーニュ共和国ね。」

ネフィラが神妙な顔で続ける。

「彼らは、“感情”より“実利”を重んじる国家。うちの『恋する国政』に、どう反応するか……。」

「ってことは、逆に“感情面”を刺激すれば、突破口があるってことね!」

「……エリシア様、それ、まさか――。」

「決まってるじゃない。政略恋愛よ!!」

「また爆弾投下したぁ!!」

◆◆◆

三国の使者が一堂に会したグランフォード迎賓館。

冷ややかな視線のグレイスフロスト王子リューディル、陽気で策略家のエリゼール貴族リャム、そして――

「“共和国特使”、クロード・ヴァンス。以後、お見知りおきを。」

静かに礼をとる、黒髪の青年。その瞳はどこか、エリシアの“素の顔”を見透かすように深い。

(あ……この人、恋愛経験、たぶんあるタイプだ……!)

エリシアの内心がざわついた、その瞬間。

「それでは、三国に対し――グランフォードより、“対等の国交”を申し入れます!」

彼女の宣言が、今、政略と恋のステージの幕を上げた。

「では、グランフォードの国是“恋するための国家運営”について、詳しくご説明を――。」

「……その必要はありません。」

クロード・ヴァンスの言葉に、空気がぴたりと止まる。

「え?」

「既に貴国の記録、すべて把握しています。“逆ハーレム建国”という大胆不敵な思想も。」

「うわ、完全にネタ国家扱いじゃない……!?」

ユスティアがボソリと呟く。

クロードは一歩、エリシアに近づいた。

「ですが――それでもなお、興味がある。“恋”という、非合理な情動が、なぜここまで国を動かせるのか。」

「……じゃあ、調べてみたらいいじゃない。」

エリシアは堂々と胸を張った。

「“恋”がどれだけ強くて、面倒で、でも心を動かすものか!この国にいれば、嫌でもわかるわよ!」

クロードの口元がわずかにほころぶ。

「それは、光栄な招待ですね。“非合理な恋”の調査、喜んで引き受けましょう。」

◆◆◆

数日後。

エリシアとクロードは、“文化交流”を名目に、連日視察を共にしていた。

「こちらは“告白成功率アップの神社”です!創建は二週間前!」

「伝統という概念が破壊されている……!」

「こちらは“カフェ・初恋”。片思い中の人専用で、両想いになると強制退店です!」

「運営方針が異常だ……しかし客入りが良すぎる……!」

クロードは常に冷静で論理的。

だがその態度に、少しずつ“揺れ”が生まれていることに、エリシアは気づいていた。

「……それで?クロードさんは、誰かに恋したことある?」

「私個人の感情に、国家は関与すべきでは――。」

「うちの国は“恋”が外交に直結するんだけど?」

「……ぐ……。」

クロードは目をそらす。

「……“選ばれた”ことは、あります。だが、“選んだ”ことは……ない。」

「……そっか」

エリシアは小さく微笑んだ。

「じゃあ今度は、あんたが“選ぶ”番ね。誰を、どんな国を、どんな未来を。」

クロードの瞳がわずかに揺れた――そのとき。

「報告です!王都ルヴァーニュにて、“対恋愛派”によるクーデター未遂発生との情報が!」

「……!!」

クロードの顔から、仮面のような冷静さが消えた。

「急ぎ帰国します。“情動”の影響が、我が国の統治機構にも及び始めた……。」

「じゃあ、これだけ言わせて。」

エリシアは一歩踏み出し、彼の胸元を指で突いた。

「恋は“感染する”のよ。覚悟してね?」

クロードは何も言わず、ただひとつ、静かに頭を下げた。

◆◆◆

その夜、ユスティアがぽつりと漏らす。

「……エリシア、あれ、完全に“第二王子ルート”じゃん。」

「いやいやいや!恋愛未満よ!政略未満未満未満!」

しかし、その頬は少しだけ赤くなっていた。

——〈次話〉“仮面の国と、真実の選択”

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