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3 見合い話の数日後、彼らは消えた

Author: 缶小豆
last update Petsa ng paglalathala: 2026-07-15 15:43:58

第一騎士団団長、レオンハルト――若干25歳

大会優勝の実績に、先の戦での武勲。

生まれは貴族ではないが、年のわりに突出した実力があったことから、騎士団では誰もが一目置く存在だった。

第一騎士団長に推薦し、団内をまとめあげてくれたのは前第一騎士団長で総司令官に昇進したダリウスだ。

彼こそ第一騎士団団長に相応しいと周りを説得して、推薦してくれた。

それを機に、一代騎士爵となり、誰もが羨むこの第一騎士団団長の立場を手にすることになった。

王族を護る近衛騎士団が貴族の子息ばかりで、平民出身のレオンハルトに対して嫌がらせも多い中で、いつも庇ってくれたのもダリウスだった。

そんなある日――

「お前、見合いする気ないか?」

あまりに唐突なダリウスの言葉に、レオンハルトは無表情で即答した。

「……正直、職場の統制で手一杯です。近衛騎士団の嫌がらせをかわすだけでも精一杯。妻に割く時間なんてありません」

「だよなあ……。誰にでも頼める話じゃないし、お前が駄目なら諦めるしかないか」

妙に残念そうな顔だ。

……これは見合い相手はもう決まってるな?

ダリウスが女の話を自分から持ち出すのは初めてだった。

戦場で命を救ってくれた錬金術師に惚れ込んでいるダリウスは、他の兵たちのように娼館にも行って遊ぶこともない。

もちろん、浮いた噂もないし、彼女を溺愛しているという噂だった。

そんな彼からの見合い話は、どう考えても本気の話だ。

「ちなみに、相手は?」

世話になっているし、一応話だけでも聞いておこうか?

レオンハルトはそう思い、ダリウスに見合いの内容を聞くと、やはりダリウスの彼女関連の話だった。

「俺が付き合ってる女性が育ててる子だ。今年で18歳。結婚できると思うんだ」

「……結婚“できる”年齢、の間違いでしょう? 何でそんな急ぐんです」

18歳は若すぎるだろう。

自分との年の差もそこそこあるし、これから出会いも増える年頃の子に、慌てて伴侶を押し付ける必要はない――そう思った。

だが、あれっ?と首を傾げる。

たしかダリウスの彼女は30歳ぐらいじゃなかったか?

18歳の子……

俺の表情を見て、疑問に気付いたのだろう。

ダリウスは付け加えるように、彼女のことを話し始めた。

「彼女、娘が心配らしいんだよ。子供は、一度、親に捨てられた子で、俺との関係も悪くない。ただ、そうは言っても、俺の立場やいろんなことを考えて、俺と一緒に暮らすのも未成年の間は遠慮してたみたいだ。やっと18になったが……彼女なりに子供の将来を気にしているんだ」

「へえ、そんなに若いうちから、血のつながらない子を引き取って?」

その場は彼女の事情を聞くだけにとどめた。

だが、なんとなくその子のことが気になって店の前を通ってみた。

「ここが月影亭か」

石造りで出来た建物だが、錬金術師が作った大きなガラスのはめ込みが、中から外へ暖かいランプの灯りを外まで運び、思わず入りたくなるような空間を作り出している。

レオンハルトは、そっと客を装い店内に入る。

従業員は何人かいるが、一人だけ少女と呼べる年の子が接客している。

「年が若いし、あの子かな?」

お客に呼ばれて、質問にも的確に答えている。

いや、他の店員にも呼ばれているな。

しっかりした子だ。

説明を繰り返しているから、商品のことは全部頭に入ってるんだろうな。

これは、相当な勉強量だ。

あの子なら、一人でもやっていけそうだがな。

見合い、本当に必要なのか?

そう思っていた数日後――ダリウスは、彼女と共に姿を消した。

だが、不可解なのは、あれほど心配していたあの娘は残していったことだ。

ダリウスが、レオンハルトを騎士団長に推薦したこともあり、何か知っていることはないかと事情を聞かれたが、何も答えられなかった。

なんとなく、数日前の見合いの話は言わない方が良い気がして、取り調べでは話さなかった。

実際、ダリウスが思っているだけで、あの娘は何も知らない話の可能性が高いだろうし……

それに、自分は簡単な尋問で済んだが、娘は相当激しくやられているらしいから、迂闊なことも言えない。

もしダリウスが犯罪に関わっていたたとしたら....

レオンハルトは、眉間に皺を寄せた。

ダリウスは金に執着のない人間だった。

戦の後にはよく食べる騎士全員に食事を奢るような人だ。

家も公爵家で、父は王の弟だ。

横領というが、そもそも金に困るような人間じゃないからな……

ダリウスは、恋人の錬金術師に騙されたのだろうか。

もしかしたら、娘もグルかもしれない……

そう思って、レオンハルトは心の中で訂正をする。

娘はまだ18の少女だろう。

その娘も騙されただけかもしれない。

先日の彼女の仕事ぶりを思い出し、人を騙すような人間には思えなかったのだ。

再び、道を通り過ぎるふりをしてあの店の前を通る。

「こりゃ、ひどいな」

入り口は壊され、温かそうに光を外に放っていたあのガラスも割られていた。もはや、廃墟同然。

あの時一生懸命に接客していた少女の姿はもうなかった。

だが、道を歩くふりをして、ちらっと視線を端に送る。

店の周辺は監視が何人かいるな。

なんだ?こんなに店をボロボロに壊して、さらにこんな大人数で監視を続けるっておかしくないか?

えらくこの事件に執着しているな。

その時、レオンハルトはふと思い出す。

「そういえば……あの時……」

レオンハルトはハッとする。

あの見合いの話の後にダリウスに頼まれた、あの言葉をレオンハルトは思い出したのだった。

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