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4 隠れ家から始まる生き残り計画

作者: 缶小豆
last update 公開日: 2026-07-16 18:21:40

ミレイユは、一通り塔の中を探り続ける。

だが、中が暗く、手探りで動き続けるしかなかった。

「誰かがいる様子はないし、とりあえずは安全なのかな?何をどういってもこの以外住む場所はないんだし……」

ボロボロになったお店と住居が兼用だった。

あれだけ壊されてしまったら、もう住むことはできない。

ミレイユは、この古びた塔を新しい住居にすることに決めた。

「ここで生活を立て直す。そして、お金が貯まったら絶対にこの国を出るんだから……」

そう強く心に誓う。

激しい尋問で傷だらけになった体は、ポーション一本では全然回復しきれなかった。

だけど、どんなに体が悲鳴を上げていても、食料の確保は急務。

長く何も食べていない。

じっとしていられない。動かなきゃ……。

蔦の隙間から覗く月明かりだけを頼りに、二階の小さな部屋へと移動する。

布をそっとめくると、埃をかぶったベッドが姿を現した。

そして、その隣には魔石ランプが置いてあって、ようやく灯りをつけられた。

ぼんやりと光が広がり、その部屋は多くの書類と本が積まれ、人がかろうじて過ごすスペースがあるだけだということがわかる。

ベッドの脇にはガラス棚があり、私はその扉の中に見慣れた瓶があることに気づく。

師匠が用意してくれたポーションや解毒剤がきちんと並んでいる。

「これは、ハイポーションじゃないの!他にもポーションに解毒剤に……色々あるじゃないの。

師匠!ありがとう……?いや、師匠のせいでこんな目に遭ったんだから違うか?」

小さく心の中で呟きながら、ミレイユは棚にあったハイポーションを一気に飲み干した。

体の中の傷が一気に熱を持ち、体の中の血流がぐっと増えていく感覚がわかる。

その傷が、急激に塞がり、滲む血も止まる。

すると、痛みがなくなり、今度は一気にここ数日の疲れが襲ってきた。

散らばった資料も見えるけど、今はとにかく体を休めることだけに集中しよう。

ぐったりとミレイユはベッドに倒れ込む。

そして、そのまま、まるで底なしの深みに落ちていくように、深い眠りに沈んでいった。

どのくらい眠ったのか?

目が覚めて、ぼんやりと天井を見上げる。

「……夢?いや、そんなものは見ていないはず」

いろんなことがありすぎて、師匠の夢でも見られたらいいのにと思ったのに……

起こったことは全て悪い夢だったらよかったのに……

ミレイユは、滲み出る涙をぐいっと腕で乱暴に拭いて、ベッドを片付ける。

「それにしてもよく寝た。店も仕込みもなくて、こんなにゆっくり起きられるのは初めてかも」

腕を上げたり、足を上げてみる。

ハイポーションの効果は凄まじく、昨夜はまだ、残っていた体の痛みはすっかり消えていた。

だが、空腹を和らげる効果はほぼゼロに等しい。

「水だけじゃお腹は満たされないわよね。」

とりあえずベッド脇にある窓を開けてみると、目の前はびっしりと蔦で覆われていた。

夜、月明かりだけとはいえ、真っ暗だったのはコレが原因か?

「これじゃあ外の様子もわからない……今は朝?昼?それとも夜?」

まだ時間の感覚も戻っていない。

ただよく寝たという感覚があるだけだ。

「まずは何か切るものを……」

棚を探ると、店でも扱っている冒険者セットが入っており、その中には見慣れない小型ナイフが入っていた。

「これでいける!」

ミレイユは、ナイフで蔦をざくざくと切り落としていく。

「うん、切れ味は最高!」

不恰好だけど、一束ずつナイフが蔦を切り落ちていくたびに光が差し込む。それによって、ようやく日の高さから朝だとわかった。

蔦の中には枯れている部分も多く、次々とザクザク切り落とされていく。

案外、スムーズに切れることに、ミレイユは安堵した。

階下に降りると、師匠の育成促進キットで育ったじゃがいもが、数日どころか一晩で食べられるほどに成長している。

「師匠、すごすぎる!私がやっても、これが育つのに最低でも3日はかかるのに!」

一晩で育成促進って、もはや魔法だ。

これで、豆も芋も夕方には収穫できそうで、希望が膨らむ。

「そうなると、調理するための火をいれないとね」

野菜の種が入っている横にあった火打ち石を取り出し、慎重に火を起こす。

枯れ葉や落ち葉、枝をくべて、焚き火がゆらゆらと燃え始めた。

更に、湖の水を汲んで、鍋で煮沸しながらじゃがいもを煮る準備も万端だ。

「よし、これで最低限の生活はなんとかなる」

ほっと胸を撫で下ろしたその時――

「ん……?」

突然、辺りが煙でいっぱいになった。

焚き火の上からもくもくと黒い煙が立ち上っている。

木や葉っぱが完全に乾燥していなかったからだろうか?

「ひゃあああ!!やばい!これ、外から見たら火事だよ!絶対バレる!」

焦ってバケツの水をひっくり返し、必死で火を消そうと焚き火に水をかける。水がかかってパチパチと音を立て、白い煙に変わり、立ち上がる炎が消えていくのを見てようやく一息ついた。

「はぁ……危なかった。火を起こすって思ったより難しいなあ」

ミレイユはため息混じりにぽつりと呟く。

「たかが火起こし、されど火起こしって感じ……」

火が消えてほっとしたのもつかの間、疲れが一気に押し寄せてきて、途方に暮れてしまう。

そんな彼女の背後で――

気づかぬうちに、昨夜ここへ転移してきたときに使った魔法陣が、静かに、しかし確かに光り始めていた。

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