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Author: 酔夫人
last update publish date: 2025-12-23 11:00:39
ずっとぼんやりとしていた頭がやっとはっきりしてきた。

やっと”私”が返ってきたような感覚。

車に押し込まれる瞬間に臭ってきた刺激臭はおそらく素人が使ってはいけない薬品。

すぐに体の力が抜け、意識が朦朧とした。

誘拐されたときの心得その一、「騒いで犯人を刺激しない」が守られたのは良かったと思おう。

だから私は、無傷でここにいる。

いま寝転がされているのは、ワンボックスカーの三列目のシート。

縛られてはいないけれど、体の力はあまり入らないので動けないのとほぼ一緒。

私を浚った男たちは私が目覚めていることに気づいていない。

声から判断して車に乗っているのは三人。

一人は運転席で、残り二人は真ん中のシート。

刺激臭を感じてすぐに息を止めたから吸い込んだ量は男たちの思っているよりかなり少なく、まだ目が覚めると思っていないんだろう。

……油断するだけの余裕。

おそらく、こういうことは初めてではない。

聞こえてくるのは同年代の男二人の浮かれた声。

人を浚うという罪を犯したことへの恐れみたいなものはない。

常習者だから慣れている?

いえ、それよりも「絶対に大丈夫」と思わせる存在がいる?

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