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第1660話

作者: 桜夏
「大島取締役……」

近藤取締役は不満げに声を上げた。だが、周防取締役はそれを遮るように、さらに大きな声で言った。

「もう十分だ。十五分あれば足りる。今どこまで来ているのか、こちらから電話で確認する」

周防取締役はスマホを取り出し、執事へ電話をかけた。相手はすぐに出た。

「今どこにいる?取締役会はもう待っているぞ」

執事は答えた。「すでに下へ到着しております。若旦那様は先にエレベーターへ乗られました」

「よし、分かった。分かった」

周防取締役は興奮を抑えきれない様子で答え、それから大島取締役へ向かって口を開いた。

「大島取締役、新井社長はもうエレベーターに乗っています。一分もかからず到着します」

そう言うと、会議室にいる全員が周防取締役を見た。近藤取締役たちの顔色はよくなかったが、そこまで不安そうでもなかった。

蓮司が来たところで、何ができるというのか。すでに流れは決まっていた。結果を覆すことなどできなかった。

「周防取締役、わたくしは若旦那様の歩みに追いつけず、少し遅れております。若旦那様が取り乱されるようなことがあれば、どうか止めて差し上げてください」

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    ビルの下には、確かに警察車両が停まっていた。ほどなくして、警察に付き添われながら車へ乗り込む悠斗の姿が見えた。これで、蓮司の言葉がすべて事実だと分かった。電話で確認を取った近藤取締役も、その場に立ち尽くしたまま、しばらく我に返れなかった。あれこれ策を巡らせてきたというのに、博明一家が新井のお爺さんを害した事件に関わっているとは、まったく計算に入れていなかった。これでは、自分たちの主張の土台が崩れてしまう。下手をすれば、蓮司から「共犯」の嫌疑までかけられかねなかった。近藤取締役の予想通り、続いて蓮司が口を開いた。「近藤取締役を筆頭とする一部の取締役たちは、俺を急いで交代させようとしている。表向きは外部招聘と言っているが、実際には、誰もが分かっているはずだ。彼らは博明の側に立っている。こちらには、彼らが俺の祖父を害した件に関与していると疑うだけの十分な理由がある。彼らは共犯であり、新井グループ全体を掌握しようとしている」「ふざけるな!」それを聞いた近藤取締役は、思わず声を荒らげて反論した。「我々は新井会長を害する計画になど関与していない!そのドローン事件とやらも、まったく知らなかった!」「近藤取締役、その話は警察署で直接、警察に説明してください」蓮司は冷たく言った。「あんたが本当に無実なら、警察が調べ終えた後、当然、潔白は証明される。それとも、警察署へ行くことすら怖いのか?」蓮司の言葉が挑発だと分かっていても、近藤取締役は乗らざるを得なかった。先代の新井グループトップを害したという汚名を着せられれば、今後の社内での立場も、築いてきた名誉も、すべて失われるからだった。「行ってやる!やましいことがない人間は、何も恐れない!」近藤取締役は蓮司を睨みつけて言った。その後、蓮司は大島取締役へ視線を向けた。「大島取締役、たとえ取締役会が俺の退任を望んでいるとしても、近藤取締役たちが連れてきた人間に俺の後を任せることには同意できない。彼らの側は、俺の祖父を害して権力を奪おうとした。その連中が探してきた人間など、間違いなく操り人形だ。もし取締役会がどうしても社長の交代を進めるというのなら、候補者を変えてほしい。候補者の選定は、大島取締役が直接主導してください。そのほうが、誰もが納得できるはずです」蓮司の言葉

  • 離婚まであと30日、なのに彼が情緒バグってきた   第1660話

    「大島取締役……」近藤取締役は不満げに声を上げた。だが、周防取締役はそれを遮るように、さらに大きな声で言った。「もう十分だ。十五分あれば足りる。今どこまで来ているのか、こちらから電話で確認する」周防取締役はスマホを取り出し、執事へ電話をかけた。相手はすぐに出た。「今どこにいる?取締役会はもう待っているぞ」執事は答えた。「すでに下へ到着しております。若旦那様は先にエレベーターへ乗られました」「よし、分かった。分かった」周防取締役は興奮を抑えきれない様子で答え、それから大島取締役へ向かって口を開いた。「大島取締役、新井社長はもうエレベーターに乗っています。一分もかからず到着します」そう言うと、会議室にいる全員が周防取締役を見た。近藤取締役たちの顔色はよくなかったが、そこまで不安そうでもなかった。蓮司が来たところで、何ができるというのか。すでに流れは決まっていた。結果を覆すことなどできなかった。「周防取締役、わたくしは若旦那様の歩みに追いつけず、少し遅れております。若旦那様が取り乱されるようなことがあれば、どうか止めて差し上げてください」スマホの向こうから、執事の声がまた聞こえた。それを聞き、周防取締役は内心で思った。怒るなら怒ればいい。手を出さない限り、止めるほどのことではない、と。周防取締役は執事の頼みに応じた。そして通話が切れたその瞬間、会議室の扉が外から押し開かれた。全員が音のしたほうへ目を向けた。次の瞬間、蓮司が中へ入ってきた。表情は冷えきっており、瞳には鋭く冷たい光が宿っていた。蓮司はまず、周防取締役と大島取締役たちに軽く会釈した。それから近藤取締役へ視線を移した。目の奥に滲む荒々しい怒りは、どう隠しても隠しきれなかった。近藤取締役はその気迫に気圧され、無意識に上体をわずかに後ろへ引いた。それでも何とか踏みとどまり、足までは下げなかった。「新井社長、病院で自ら辞任すると口にしたのは、あなた自身です。加えて、あなたはこのところ会社を失望させるようなことをあまりにも多く起こしている。だから取締役会は、暫定的にあなたを退かせ、外部から人材を招いてあなたの職務を引き継がせると決めたのです」近藤取締役は背筋を伸ばして言った。「外部招聘か。ずいぶん聞こえのいい言い方だな。結局は、あんたらの

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    近藤取締役は言った。「だからこそ言っているのです。新井社長が身動きの取れない状況で、なおかつ会社を止めるわけにはいかない以上、能力のある人間に職務を代行させる。それは合理的で、ごく当然の判断ではありませんか。池田俊哉(いけだ しゅんや)こそ、今もっとも適した人材です。経歴は申し分なく、金融の中心地で世界有数の企業の重役を二十年務めてきた。まさに今の新井グループが必要としている人材です」近藤取締役がそう言い終えると、周防取締役は彼を睨みつけた。相手側が外部招聘という形を取ろうとしている以上、周防取締役も完全には否定しきれなかった。もし悠斗をトップに据えようとしていたなら、私利私欲のためだとか、悠斗自身の業務能力にはまだ検証の余地があるとか、筋道立てて反論できたはずだ。「周防取締役、新井社長は本当に出席しないのですか?」中立派であり、グループの発展と利益だけを重視する大島取締役が、周防取締役に尋ねた。「この時点でなお本人が姿を見せないのであれば、こちらとしては、自ら役職を放棄したと受け取ることもできます。取締役会に出席しないというのは、取締役会そのものを軽んじている行為です」大島取締役は続けた。「私個人としても、新井社長が今、私的な事情に追われていることは理解できます。ですが、近藤取締役の言葉にも一理あります。会社は前へ進まなければならない。発展し続けなければならない。どのような出来事があっても、そこで停滞するわけにはいきません」大島取締役のその言葉で、中立派の態度ははっきりした。それを聞いた近藤取締役側は、顔に喜色を浮かべた。勝利を確信したような目で、近藤取締役は口を開いた。「大島取締役、今日の会議はここまでにしましょう。池田俊哉を正式に代理執行役として迎えればいい。これ以上、周防取締役たちと言い争う必要はありません。彼らはどうせ反対するだけです。彼らが見ているのはグループの利益ではなく情です。新井蓮司を無条件で支持することしか考えていません」その言葉を合図にしたように、近藤取締役側の取締役たちは席を立つ準備を始めた。中立派の面々も、それに続こうとしていた。その時、彼らが今にも結論を押し通そうとしているのを見て、周防取締役は両手を固く握りしめた。歯を食いしばり、低い声で言った。「誰が新井社長は出席しないと

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