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第561話

Auteur: 小春日和
佐藤泰一がすっと手を差し出したその瞬間――佐藤茂が前に出てきて、その手を軽く押し下げた。「……ほんと馬鹿だな。遼介は他人と握手なんてしないんだよ」

佐藤泰一は自分の手をちらりと見下ろし、どうやら自分にはまだ黒澤と握手する資格がないらしいと思った。

佐藤茂はそのまま目の前の黒澤を笑みを含んだ目で見つめ、「黒澤様、ちょっと上まで付き合ってもらえませんか。お話ししたいことがありまして」

その申し出に対して、黒澤は一瞬もためらうことなく、隣に立っていた真奈の腰に片腕を回しながら言った。「うちの嫁も一緒に行く」

いきなり人前で「嫁」と呼ばれた真奈は、思わず頬が熱くなるのを感じた。真っ赤になった顔で黒澤を睨みつけ、少しだけ声をひそめながら言い返す。「ちょっと……誰が一緒に行くって言ったのよ。ふたりで話してきなよ、私は邪魔しないから」

そう言い終えると、彼女は黒澤の手をぱしんと払いのけた。

佐藤茂はそのやり取りに薄く笑いを浮かべると、傍に控えていた執事に「頼む」と声をかけた。執事は静かに頷き、彼の車椅子を押してエレベーターへと向かった。

その様子を見届けた幸江が、すぐに真奈の腕を小突い
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    その場に沈黙が落ちた。真奈はテーブルの上の車の鍵を手に取り、冷ややかな声で言った。「私には私の考えがあります。佐藤さんが本心からそうしてくれたのか、それとも別の思惑があるのか……正直、どうでも構いません。望む結果にたどり着けるなら、私は迷わず行動します。これから先は私一人でやります。二人とも、手出ししないでください」そう言いながら真奈は黒澤を一瞥した。だが、どうしてもきつい言葉は言えず、ただ黙って背を向けて歩き出した。黒澤はすぐにその後を追った。伊藤と幸江も、居心地の悪そうな面持ちで立ち尽くしていた。伊藤は鼻をこすりながら、間の悪さを誤魔化すように言った。「あの……じゃあ、俺たちは

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