Share

第431話

Auteur: 似水
里香は微笑んで、「いいわ、もし将来そう思う時が来たら、絶対にみんなに言うから、その時はみんなで出資して、私がシェフになるね」

かおるが「問題なし!」とすぐに返事をした。

三人はそのままダイニングルームに入った。

祐介は色鮮やかで香り豊かな料理を見て、目を輝かせた。「帰国して初めての食事は記念しないとね」と言いながら、彼はスマホを取り出し、写真を撮り始めた。

里香とかおるはテーブルの端に立っており、二人の手も一緒に写真に写り込んでいた。

祐介は写真を撮り終えた後、すぐにSNSに投稿し、「本当に腹が減った、いただきます」と言った。

「どうぞ」と里香が応えると、三人は再び席について食事を始めた。

食卓の雰囲気は先ほどよりも賑やかになっていった。

夜が深まる中、酒場にて、月宮は退屈そうにスマホを弄りながら、どうやってユキと話を切り出そうかと考えていた。そんな時、祐介の投稿に気づいた。

月宮が投稿を開いてみると、映っていたのは色鮮やかで香りの良い6種類の料理とスープ。見ただけで料理の腕前が確かだとわかるほどだ。

そして、テーブルの端には二人の手が写り込んでいる。

彼は目を細め、映っている手をよく見て画像を拡大した。そして、じっと見つめながらボソッと、「かおるだな?」とつぶやいた。

雅之は顔を上げ、彼に視線を向けると「そんなに久しぶりでもないのに、もう彼女が恋しくなったか?お前、もう恋愛脳か?」と冷たく言い放った。

月宮は「違うよ、祐介が投稿した写真にかおるが映っててな、しかもその隣に誰かいる。顔を映してないけど......」とつぶやきながら、彼は雅之にスマホを手渡した。「憶測はやめておこう。ほら、お前の奥さんだ。彼女の手か確認してみろよ」

雅之は眉間にシワを寄せながらスマホを受け取って、その写真をじっくり見た。彼は一目でそれが里香の手だとわかった。

里香の体に魅了され、細かい部分までも知り尽くしている雅之にとって、その手を見間違えることはありえない。

祐介が帰国したのか......しかも、帰国後の初めての食事が里香と一緒だったとは。

くっ......

雅之はスマホを強く握りしめ、不機嫌そうな表情を浮かべた。

月宮はスマホを取り返して、「祐介が海外での仕事を片付けて、今回は簡単には帰らないかもな」と言った。彼が優れた成果を上げれば、父親から
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Latest chapter

  • 離婚後、恋の始まり   第1041話

    白くてすらりと伸びた美脚が空気中にさらされ、男の指先はわずかにその余韻を残していた。太ももを掴んだときの感触が、まだ皮膚にこびりついているようだった。賢司の瞳はさらに深く沈み、表情は一層冷たく引き締まった。鋭い輪郭と整った顔立ちは無愛想そのもので、どこか人を寄せつけない空気を纏っている。冷たく、まるで氷のように。「覚えておく」低く言い残すと、彼はソファに腰を下ろし、脇にあった電話を取ってかけ始めた。「えっ?」舞子は瞬きをしながら彼を見つめた。「覚えておく」……って?つまり、見返りはあとで決めるってこと?でも、よく考えてみれば、この男、必要なものなんて何一つなさそうだ。今さら何かを欲しがるとも思えない。なら、それでいいか。舞子はベッドからゆっくりと体を起こし、「服を一式、持ってきて」と一言。そう言って布団をはらりとめくり、不快感を堪えながら、ゆっくりと浴室へと足を運んだ。賢司の視線は、静かに彼女の後ろ姿に注がれていた。完璧に引き締まったプロポーション、細い腰に丸みのある尻、長い脚。そして白い肌のあちこちには、彼の痕跡が散りばめられていた。本来なら、薬の効果を打ち消し、事を収めるだけのつもりだった。それなのに、一度触れてしまえば、自制心など意味をなさなかった。彼女が正気に戻り、「やめて」と言ったとき、普通ならそこで止まるべきだったのだ。だが、あの時の彼は、何もかも構わなかった。言葉も、懇願も、理性すらも。浴室のドアが閉まり、ようやく賢司は視線を逸らした。舞子はシャワールームの鏡の前に立ち、ぼんやりと映った自分の姿にしばし呆然とした。……なにこれ、人間のやること?首も、鎖骨も、胸元も――目につく場所という場所に痕跡が残っている。まるで彼女の身体をキャンバスにして、スタンプでも押したみたいに。最っ悪。舞子は唇を歪め、不機嫌そうに顔を背けた。そして、勢いよくシャワーを浴び始めた。だが、不運なことに、浴室には予備のタオルがなく、彼女はびしょ濡れのまま、裸で出るしかなかった。一方そのころ、賢司は整ったスーツを身にまとい、最後のボタンを腹筋のあたりまで留め終えたところだった。シャツの隙間からは鍛えられた胸筋と、薄く浮き出た腹筋が覗いていた。ベッド脇には、すでに女性用の衣服がきちんと揃

  • 離婚後、恋の始まり   第1040話

    薬の効果がようやく切れ、舞子はすでに力尽きて、ベッドの上にうつ伏せになっていた。汗に濡れた肌はしっとりと艶を帯び、美しい蝶のような背筋には、かすかに赤いキスマークがいくつも残されていた。肩と背中に落ちる重い吐息が、彼女のかすんだ視界に溶け込むように揺れていた。「……私、もう大丈夫……だから、終わらせて」掠れた声で、舞子は苦しげに言葉を絞り出した。けれど、さっきまでの狂気の余韻はまだ体内を渦巻いており、心も身体もまだ冷めきっていなかった。無意識のうちに捕まえた男の体力に、驚きを覚えていた。それでも、背後の男は動きを止めなかった。何も言わず、ただ無言で、彼女の細い腰をまるで壊れもののように強く、しかし容赦なく握りしめていた。「ん……やめろって言ってるの、聞こえてる……?」舞子の声に焦りが混じる。何なの、この人……助けるだけって、約束だったはずでしょう? もう平気なんだから、止まるべきじゃないの?必死に抵抗しようとしたが、薬の影響と長時間の消耗で、身体は言うことを聞かず、すぐに力尽きてしまった。それでもなお、彼女は必死に首をひねり、男の顔を確かめようとした。だがその瞬間、意識が再び濁り、まるで津波のように理性が押し流されていった。くそっ……!何も言わず、止まりもせず、限度すら知らないなんて……!抑えきれない甘い吐息が、舞子の喉から漏れた。もう、疲れ切っている。これ以上は無理だ。過去に見た数少ない映像から得た知識を頼りに、彼女は残る力を振り絞った。ぐっと力を込めた瞬間、大きな手がぎゅうと締めつけられ、男の口から低いうめきが洩れた。すべてが静まり返った。ただ、互いの呼吸だけが交互に響いていた。舞子は目を閉じたまま、動かない指先に力を込め、懸命に体を仰向けに返した。目に映ったのは、隣に倒れこむ男の姿だった。短く整えられた髪は汗で濡れ、深く整った顔立ちは伏し目がちで、その表情を読み取ることはできなかった。眉間には、まだ消えない情欲の痕が残っていた。彼はまだシャツを着ていたが、乱れた前立てはボタンが二つしか留まっておらず、大半は汗に濡れて肌に貼りついていた。「……あなた、って……」舞子はようやく思い出した。かつて、かおるに想いを寄せていた――そう、確か瀬名家の長男だったはずだ。その記憶が

  • 離婚後、恋の始まり   第1039話

    賢司は一言も発さず、そのまま電話を切った。「んっ……」背後から、少女のくぐもった苦しげな声が漏れた。彼女はベッドの上で身をよじらせ、その柔らかな肌は淡く紅潮していた。賢司の表情はさらに曇り、緩んでいたネクタイを無造作に引き絞った。先ほど舞子に引っ張られていたせいで、すでにその結び目は緩んでいたが、今の一撫ですっかりたるみ、少し力を入れれば簡単に外れてしまいそうだった。かおるはどうしたんだ?人を呼びに行ったんじゃなかったのか?まだ戻ってこないのか?苛立ちを隠しきれない表情のまま、賢司はドアに手をかけた。「……たすけて」その瞬間、堪えきれないような泣き声が、背中越しに響いた。嗚咽を混じえたその声は、まるで胸元に熱く燻る煙草の火を押し当てられたかのように、賢司の心をじりじりと焦がした。彼は、唐突に熱を帯びたような感覚に包まれた。こんなことは、ほとんどなかった。「お願い……お金だって払うから……タダじゃないから……」舞子は泣きじゃくりながら、必死にすがるように言った。彼女には、あの男がまだ部屋を去っていないとわかっていた。惨めでみっともない自分をさらけ出してでも、彼に見捨てられることの方がずっと恐ろしかった。賢司は無言のまま、その言葉に対してどこか可笑しさすら覚えて、ふっと笑った。自分は、何だと思われているんだ?苦笑にも似た妙な感情を胸に、彼は振り返り、ベッドに近づいた。呻きながら身をよじる舞子を、静かに見下ろした。彼女の身にまとっていた薄いドレスは、今や見る影もなく乱れていた。胸元は大きくはだけ、白い肌があらわになっている。彼女はなおも、自分のスカートを裂こうとしていた。頬は汗に濡れ、熱を帯びて真っ赤に染まっていた。薬の効果はまだ消えていない。体を焼くような苦しみとともに、舞子の理性はじわじわと侵食されていた。気づけば、賢司の呼吸までもが荒くなっていた。どこか、かおるに似たその顔を見つめながら。舞子は明らかに助けを必要としていた。哀れなほどに助けを求める声をあげ続け、理性が崩れ落ちそうになったその瞬間、唇が塞がれた。その口づけは粗雑で、激しく、技巧のかけらもなく、まるで彼女を貪り尽くすかのような勢いだった。決して心地よいキスではなかった。だが、彼女は抗う間もなく、体の奥がもっと

  • 離婚後、恋の始まり   第1038話

    「動くな」賢司の声は低く、冷徹に響いた。だが、舞子はすでに薬物の影響下にある。賢司の警告が耳に届くはずもなく、むしろ彼女の行動は、本能のままに渇望するものに向かってさらに踏み出していた。彼女の手はためらうことなく賢司の服の内側へ滑り込み、彼の胸元の硬い筋肉に触れた。「ん……」舞子の唇から漏れるかすかな声。その声音が示しているのは、その感触を楽しんでいるのか、あるいは薬物の効果がさらに猛威を振るい始めたのか。しかし、賢司はその声だけで舞子の気持ちを正確に知ることはできなかった。胸の奥でわずかに乱れる呼吸。賢司は一瞬の逡巡の後、すぐさま判断を下した。ここに留まり続けることは危険だ。この理性を欠いた女が次に何をするか、それを予測することなど不可能だ。周囲に視線を走らせると、人気の少ない方向を見定め、素早く裏口に向かった。そのまま外に出た後、別の扉から再び別荘内へ戻り、階段を上がって二階へ向かう。賢司が選んだ最も近くの部屋のドアを開けると、手際よく舞子をベッドの上に横たえた。安心する間もなく、舞子の手が賢司の垂れ下がったネクタイを掴んだ。それは弱々しいはずの手だったが、不意を突かれた彼をそのまま引き寄せるには充分だった。距離は一気に詰まり、鼻先と鼻先がほんのかすかに触れ合うほどに近い。賢司の表情は険しさを増した。その内側では、その表情以上の激しい葛藤が渦巻いていた。意識を手放し、頬を紅潮させた舞子の姿を見つめながら、喉仏は上下し、彼の理性は揺らぎかけていた。彼は男だ。正常な一人の男として、生々しい挑発に対して何も感じないはずがない。だが、同時にその感情を押し殺し、自らを律する術も十分に心得ていた。忙殺されるような日々の中で、そうした感情や欲望を抱かせる相手と巡り会う機会もほとんどなかった。いや、一人だけいた。だがその出会いは遅すぎた。彼女は既婚者で、その夫を深く愛していたのだ。舞子の顔を改めて見ると、均整の取れた美しい造形に改めて気付かされる。完璧に施されたメイク、花弁のように柔らかい唇が僅かに開き、その官能的な膨らみに目を奪われる。彼女は唇の渇きを感じ、時折舌先でそれを湿らせる仕草を見せる。そのたびにピンク色の舌がちらりと覗くさまが、彼の目を釘付けにした。彼女は、かおるに少し似ている。だが

  • 離婚後、恋の始まり   第1037話

    「は、放してっ!」舞子は必死にもがいた。しかし、体に回された腕を振りほどくには、あまりにも力が足りなかった。薬の影響で体力はどんどん奪われ、思うように動けない。男はすでに理性を失い、舞子の言葉など耳に入っていなかった。背後から無理やり舞子を抱え込み、裏口へと向かおうとする。そのとき。「ねえ、彼女が『放して』って言ってるの、聞こえないわけ?」鋭く、きつい女の声が響いた。男がびくりと肩を震わせ、顔を上げると、目の前にはいつの間にか一人の少女が立っていた。「誰だてめえ、関係ねぇだろ。どけ」そう言ってにらみつけた相手は、見覚えのない顔。だが、少女――かおるは眉をひそめ、舞子の様子を一目見て表情を険しくした。そして迷いなく、男の頬を思いきり平手で叩いた。「こんな奴にやられかけるなんて……あんた、どうしたのよ?」かおるはぐいと舞子を引き寄せた。朦朧とした意識の中で、舞子は聞き覚えのあるその声に反応し、ゆっくりと目を開けた。そこにあったのは、かおるの顔。緊張で硬直していた体から、力がふっと抜けそうになった。「はやく……病院、連れてって……」舞子の体は恐ろしいほど熱を帯び、触れるのもためらわれるほどだった。「チッ……俺に手ぇ出すとはな。俺が誰か知ってんのか?瀬名家との関係も知らずに!」男は怒りを滲ませて頬を押さえ、かおるに向かって今にも襲いかかろうとした。かおるは反射的に二歩下がり、警戒の色を強めるその瞬間。「へえ、それで?彼女が誰か知ってんのかよ?」低く抑えた声とともに、男の腕が強引に背中へねじ上げられた。「瀬名家の名を盾にする奴はよくいるが、俺はあんたと瀬名家の『関係』ってやつを、ぜひ拝ませてもらいたいね」現れたのは徹だった。男の腕をねじり上げたまま、徹はそのまま前方のホールへと引きずっていく。「い、痛っ……放せって!悪かった、もうしない、許してくれよ……!」苦痛にうめきながらも、男はしきりに許しを乞うたが、徹は一切耳を貸さず、瀬名家の執事に男を引き渡すと、そのまま背を向けて去っていった。「……お礼も言えなかったじゃない」かおるはため息混じりに呟き、腕の中の舞子を見下ろした。「ねえ、大丈夫?」冷たい声でそう問いかけたが、舞子は答えず、体はどんどん力を失っていく。

  • 離婚後、恋の始まり   第1036話

    舞子は、かおるが足早に立ち去る背中を見つめ、困ったように小さく首を振った。どうしたらいいんだろう?かおるの心の傷は、まだ癒えていない。その痛みを少しでも和らげるには、どうすればよかったのか。舞子にはわからなかった。舞子はひとまず宴会場へと戻った。そこでは男女がグラスを交わし、和やかに談笑していたが、舞子の心はその輪にはなかった。通りかかったウェイターから何気なくシャンパンを受け取り、ゆっくりと口をつけた。だが彼女は知らなかった。グラスを傾けるその姿を、近くの男がいやらしく舌で唇をなぞりながら見つめていたことを。シャンパンを半分ほど飲んだところで、舞子の体に異変が現れ始めた。力が抜け、身体の芯がじんわりと熱を帯び、どこかむず痒いような不快感が広がっていく。「……なんだろう、これ」舞子は眉をひそめた。歩き出そうとしたが、足取りがふらつき、廊下の曲がり角で思わず壁に手をついてしまった。まさか、薬を……?ぞっとする思いが舞子の背筋を駆け抜けた。ここは月宮家の邸宅、しかも大勢の招待客が集まる宴の最中だ。そんな場で、誰がこんな真似を――誰が、自分を狙っているの?舞子は唇を噛み、意識を保とうとした。バッグは休憩スペースに置きっぱなしだ。携帯を取って、助けを呼ばないと……けれど、このままでは、そこまでたどり着ける自信がなかった。それでも歯を食いしばり、足元のおぼつかないままトイレへと滑り込む。蛇口をひねり、冷たい水で何度も顔を洗った。冷水の刺激に、少しだけ意識が戻ってくる。その時だった。「お嬢さん、トイレをお間違えですよ」静かで、冷ややかな声が響いた。舞子は洗面台に手をつき、うつむいたまま体内を這う熱をなんとか押さえ込もうとしていた。「すぐに出ます……」かすれた声でそう答えながらも、なぜかその男の声がやけに耳に残った。賢司は、明らかに様子のおかしい少女を見つめていた。頬は濡れており、顔を洗ったばかりなのがわかる。目の焦点も合っていない。だが、月宮家で起きることはすべて家の名誉に関わる。余計なことは避けたいというのが本音だった。「お嬢さん、大丈夫ですか?」努めて抑えた口調でそう声をかけたが――「出るって言ってるでしょう?……邪魔しないでくれる?」舞子の声は震えていた。それなのに、その低く落

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status