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第4話

Author: エンエン
霜乃は鎮痛ポンプに頼りながら廊下で一夜を過ごし、ようやく手術の順番が回ってきた。

体の痛みも、心の痛みも、もう区別がつかない。痛みが重なり、やがて何も感じなくなりそうだった。

「申し訳ありません、桐島さん。右手は粉砕骨折に加えて、手術まで時間が経ってしまったため、一部の筋肉が壊死しています。これからは重い物を持つのは難しいでしょう」

医者は気まずそうに笑った。

「あなたも医学を学ばれていたそうですね。残念ですが、もうメスを握ることはできないと思いますね。

林社長にご相談されてはどうですか?林家は医療界でも大きな影響力があります。海外で治療すれば、あるいは希望があるかもしれませんよ」

霜乃は首を振り、包帯で覆われた自分の右手を見つめた。今は、指を曲げることすらできない。

「新しいスマートフォンを買っていただけますか?警察に通報したいんです」

その言葉が終わらないうちに、「バンッ」と扉が勢いよく蹴られて開いた。

入ってきたのは、北斗だった。

険しく強ばっていた表情が、包帯だらけで点滴を打たれている霜乃の姿を見た瞬間、わずかに驚きと和らぎの色に変わった。口を開いたが、結局何も言葉は出てこなかった。

彼はすぐに紙とペンを手に取り、書き始めた。

【昨夜、君がそんなに重症だとは思わなかった。その右手は、海外の専門医に連絡して治療してもらう】

霜乃は鼻で笑った。少し可笑しくてたまらなかった。

「いらない。自分の手は自分で治す」

北斗は眉をひそめた。霜乃の反応が気に入らないようだった。

霜乃は離婚のことを口にしかけたが、言うだけ無駄だと悟って口をつぐんだ。

北斗は再び内ポケットから小切手帳を取り出し、金額を記入してテーブルの上に置いた。

【これは君への補償だ。明希のことを責めないでほしい】

その名を見た瞬間、霜乃の全身がわなわなと震え始めた。

「出てって!もう顔も見たくない、林北斗!

何が明希よ、絶対に警察に通報するから!お金なんかいらない!」

彼女はテーブルの小切手を手に取り、真っ二つに引き裂いて、北斗の体に叩きつけた。

北斗は一瞬、呆然とした。霜乃がここまで激しく怒った姿を見るのは初めてだった。

【俺は、明希を傷つけさせない】

その言葉は、鋭い針のように霜乃の心に突き刺さった。

北斗は何も言わず病室を出て行った。部屋には、全身を震わせる霜乃だけが取り残された。

「あと十日……十日で、私たちは本当に終わるのね」

……

「桐島さん、林社長からお花が届いています」

北斗は三日連続で花を送ってきていたが、霜乃は見ることもせず、乾いた声で「ありがとう」とだけ答えた。

松葉杖をついて、簡単に荷物をまとめると、退院することにした。

病室のドアを押し開けて出たところで、霜乃はようやく気がついた。病院のこの廊下全体が花の海で埋め尽くされていた。ここ数日、北斗が送ってきた花とまったく同じ、すべて赤いバラだった。

霜乃の心臓が一瞬跳ねた。北斗は、どうして今日自分が退院することを知っていたの?

だが、次の瞬間、廊下にいた他の患者たちの声が、その幻想を無残に打ち砕いた。

「林グループの林社長って本当に優しいよね。顔を立てるために、顔色一つ変えずに明希先生のために病院中のすべての病室に花を送ったんだって。しかも明希先生のいるフロアは全部リフォームまでしたんだってさ」

「毎日十数万かかってるらしいよ。やっぱり金持ちの恋愛は違うよね」

「しっ!声を抑えて、林社長の奥さんもまだこの病院に入院してるのよ」

……

霜乃は息を整えながら、顔面蒼白のまま壁に手をつき、自嘲気味にひとつ笑った。

歓声が次々と上がり、霜乃は反射的に身を乗り出して下を覗いた。

すると、一階のロビーも真っ赤なバラで飾り直されていて、その中央に北斗と明希が立っていた。

「明希、これからもずっと一緒にいてくれないか?」

北斗は片膝をつき、ありふれた台詞を口にした。

明希は頬を赤らめ、恥ずかしそうにしながら、彼の差し出した指輪の箱を受け取った。周囲の人たちが拍手し、祝福していた。

北斗は明希の唇にキスをした。

霜乃は無意識に自分の唇に触れた。最後に北斗に触れられたのは、いつだっただろう?

たった千日あまりの時間なのに、もう思い出せない。あの頃、彼は緘黙症だけでなく、極度の潔癖症でもあったのかもしれない。

その瞬間、霜乃は自分の世界がまるで大きな芝居のように感じた。

自分の緘黙症の元夫が、元恋人に堂々と愛を告白している。

そうか、愛されないことこそが罪だったのか。
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