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第1488話

Author: かんもく
とわこは眉間を揉み、目を開けて窓の外を見る。

景色が後ろへ流れていき、高層ビルや花壇、途切れることのない車の流れがはっきり目に入る。

最近、ちゃんと休めていないせいだろうか。

こういう症状が出たのは、前にY国で手術を受ける前だった。

でも手術後に退院して、再検査も受けたし、結果には問題がなかった。

きっと最近、疲れすぎているだけだ。

奏と婚姻届も出したし、胸につかえていたものは下りた。これからは、しっかり体調を整えないと。

数日ゆっくり休めば、きっと元に戻るはず。

車はほどなく館山エリアの別荘に到着する。

家に戻ると、蒼はリビングでおもちゃ遊びをしていて、奏は昼寝中だ。

三浦は彼女に、部屋で休むよう勧めたが、あまり眠気はない。

「今日、一郎さんが来て、プレゼントを持ってきたよ。桜が一か月分のお給料で選んだそうだ」三浦は言う。「桜、本当に優しい子ね」

とわこは驚く。「桜は稼ぐのも大変なのに、そんなにお金を使ってくれるなんて。申し訳ないわ」

「お返しをすればいい。気持ちを込めて選んだものだから、断ったらきっと悲しむよ」三浦は笑う。

「うん」

「プレゼントはとわ
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