宏は有名な監督に連れられて、投資の話をしているようだった。私は京極さんと楽しく会話していたが、そこへウェイターが近づいてきた。「お嬢様、ジュースでございます」「ありがとう」こうしたパーティーでは、ドリンクのサービスも用意されている。特に気にも留めず手を伸ばして受け取ったそのとき、夏美がこちらに歩いてきた。それを見た京極さんは眉を寄せて、夏美のおでこに手を当てる。「菅から聞いたけど、お腹の具合悪かったんでしょ?もう大丈夫?」「うん、もう平気だよ、お母さん」夏美は素直な表情で彼女の隣に立ち、憧れるような目で佐々木逸子に向き直った。「逸子さん、ネットで見たんだけど、来月からスローライフ系の番組に出るんでしょ?一緒に行って、ちょっと体験させてもらえないかな?」その言葉で、だいたい察しがついた。――芸能界に入りたいという気持ちは、まだ消えていないようだ。逸子が出演するというその番組は、制作チームが田舎の村を一つ選び、実力派の俳優と数人の新人を連れて、みんなでご飯を作ったり農作業をしたりする、ゆったりした生活を描く番組。国民的人気が高く、毎シーズン大きな話題になる。素人がゲストとして顔を出すチャンスもあるにはあるが、そういうのはどの業界でも一目置かれるような人物に限られている。……もっとも、夏美が出られないとも限らない。生まれながらの強運という意味では、彼女も「トップクラス」と言えるのかもしれない。ただ、京極さんは少し眉をひそめて、菅さんと視線を交わす。どうやら、娘が自分を飛ばして直接逸子に頼み込んだことが意外だったようだ。逸子も一瞬きょとんとした表情を見せたが、そこは場慣れしたもの。さらりと受け流しつつ、京極さんに話を振った。「それはね、お母様のご意向次第じゃないかしら。芸能界ってとっても大変な世界よ?可愛い娘さんが苦労するの、きっと見たくないでしょ」私はその返しに、まったく驚かなかった。なにしろ、彼女が立てているのは、いつだって夏美の顔じゃなくて、京極さんの顔だからだ。それに、今の京極さんほどの立場なら、娘を芸能界に入れる意味はあまりない。むしろリスクの方が大きいだろう。彼女が通ってきた苦労を、娘には味わわせたくないのだ。だが、夏美はその気持ちを理解できていない。不満
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