All Chapters of 離婚後、恋の始まり: Chapter 1221 - Chapter 1225

なんだか、少しずつイメージが崩れていく気がする。間近で彼と接したあと、由佳の心はすでに落ち着きを取り戻していた。確かに景司は相変わらずのイケメンで、見つめているとついぼんやりしてしまうこともある。けれど、以前に比べればだいぶ平気になった。うん……きっとこのまま長く一緒にいれば、そのうち彼のことを好きじゃなくなるはず……よね。由佳がうとうとし始めた頃、テーブルに豚骨ラーメンが運ばれてきた。店主が笑顔で言う。「彼女さんですか？」「違う。借金の取り立て中の奴だ」「……」店主は二人を交互に眺め、相変わらず笑顔を浮かべたまま言った。「最近の若いもんはわからんねえ。わしはラーメンしか作れんから、ゆっくり食べてくれ。足りなければ声をかけな」「ネギとパクチーは抜いてくれ」由佳は瞬きをして首をかしげる。「食べないなら、なんで最初から入れるの？」景司は彼女を一瞥し、低く吐き捨てるように言った。「俺が何のためにお前を連れてきたと思ってる」「……」またしてもイメージが崩れる。良心の呵責でも芽生えて、ほぼ徹夜でこき使ったお詫びに何かご馳走してくれるのかと思っていたのに。はあ、考えすぎだった。諦めてネギとパクチーを取り除き、片手で頬杖をつきながら力なく差し出す。「はい、どうぞ」本当に疲れていて、今にも眠り落ちそうだった。景司はようやくスマホをしまい、ラーメンをすすり始める。濃厚な香りが鼻をくすぐり、由佳の空腹を刺激した。ごくりとつばを飲み込む。急に少し元気が出て、店主に声をかけた。「店主さん、私にも豚骨ラーメン一つください」「はいよ！」景司は止めもせず、黙々と自分のペースで食べ続ける。すぐに由佳の前にもラーメンが置かれ、彼女は勢いよく箸を取った。うん！めっちゃ美味しい！濃厚なスープは絶品で、麺にはしっかりコシがある。最高！眠気も少し飛び、夢中で箸を進める。景司はそんな彼女を一瞥した。食べ始めてから一度も自分に視線を向けていないことに気づき、面白くない気分になりながらも、最後の一口のスープを飲み干し、箸を置いた。立ち上がり、そのまま去ろうとする。「え、どこ行くの？」ラーメンを口に頬張ったまま、慌てて問いかける。「家に帰って寝る」振り返りもせずに景

たかが二度キスしただけではないか。そこまで怒らなくてもいいだろう。由佳の我慢は、もう限界に近づいていた。外の空を見やりながら、静かに口を開く。「景司さん、もうすぐ雨が降りそうです。先に何か召し上がって、お腹を空かせないでください。雨が上がったらまた買いに行きますから……それでいいですか」「だめだ」景司はきっぱりと断ち切るように言った。「今すぐ買いに行け」由佳の笑みがすっと消える。「もし私が行かなかったら、どうするの」「ほう」興味をそそられたように、彼は冷たくなった彼女の表情を見据えた。「いいだろう」景司は長い脚を組み、薄く笑みを浮かべて言う。「誰も無理強いはしない。ただし、配信はやめておけ。どうしてもやるなら、対戦企画だけはやめるんだ。さもないと――」その先に待つのは、彼女を社会的に抹殺するための、あらゆる手段。由佳はその脅しの響きを聞き取り、深く息を吸い込んだ。この人は大物だ。逆らえない。今はまだ警告にすぎないが、本気で怒らせれば、ほんのひと振りの権力で自分のアカウントなど一瞬にして消し去られるだろう。そうなれば、これまで積み重ねてきた努力がすべて水の泡になる。「……わかった。行ってくる」由佳は怒りを必死に抑え込んだ。すべては未来のため。その美しすぎる顔を見ていると、胸を焦がしていた熱が少しずつ冷えていくのを、はっきりと感じた。せいぜい、今のうちにわがままを言えばいい。思う存分やればいい。あんたなんか好きじゃなくなったら、ただのゴミよ。ふん！彼女は立ち上がり、そのまま部屋を出て行った。背中にはぷんぷんと怒気が漂っていた。景司は去っていく彼女の後ろ姿を眺めながら、妙に愛らしいと思い、胸の奥がむずむずとした。彼女が出てから五分も経たないうちに、大粒の雨が突然降り出し、窓を激しく叩きつけた。景司はちらりと外を一瞥したが、気に留めることもなく、スマホを取り出してゲームを始めた。由佳は、今日は本当にツイていないと思った。まず景司を怒らせ、二度目の豚骨ラーメンを買いに行かされ、その帰りには車がエンスト。どうしてもエンジンがかからない。さらに追い打ちをかけるように、雨まで降ってきた。タクシーも捕まらない。車の中に座り、言いたいことは山ほどあったが、結局はすべて長い