「出発する前にね、ひなのと陽平が、『いつ寂しい夜おじさんに会えるの?』って聞いてたわ」弥生は彼の胸に顔を埋めながら、小さな声でそう言った。「......うん」瑛介は短く応じ、それから言葉を継いだ。「......今回はもう会わない」その言葉に、弥生は彼の胸元から顔を上げ、不思議そうに見つめた。「どうして? 私には会いに来たのに、ついでに子どもたちにも会えばいいのに」瑛介は目を伏せ、真剣なまなざしで彼女を見つめたあと、彼女の赤く染まった唇にそっと口づけた。「帰国してから会うよ。でも、そのときには......呼び方を変えてくれてたら嬉しいな」弥生は唇を噛み、言葉を返さなかった。「......やっぱりダメ?」彼は彼女の額に頬を寄せながら、掠れた声でささやいた。「あれだけキスしてたのに......それでもダメ?」最初は、弘次への対抗心でいっぱいだった。でも、さっきのキスのあとでは、不思議とそんな嫉妬心は消えていた。彼女の反応と、寄せてくれた身体の温もり、それだけで十分だった。あとは、自分がこの地の問題を片付けて、無事に帰国できれば、家族4人での生活が始まるはずだ。そう思うと、自然に唇の端が上がった。「帰ったら、うちの両親も会いたいって言ってて......先に一度、会わせてもいいかな?」彼女が答えないのを見て、瑛介はすぐに自分の態度を引き締めた。「もちろん、無理ならいいんだ。今の話はなかったことにする。親にも何も言わない」彼女が何を気にしているか、彼はちゃんとわかっていた。彼女はずっと、誰かに子どもを奪われることを恐れていた。だから、彼女が嫌がることは絶対にしないというのは彼の答えだった。弥生は一瞬言葉を止めた。自分は何も言っていないのに、彼はもう先に身を引いた。昔の彼だったら、こんなふうに低姿勢になることなんてなかったのに......そう思うと、弥生はふっと息を吐いて言った。「......私、何か言った?」「ん?」「まだ何も言ってないのに、勝手に先回りして答えを出すの?」この話になると、さっきまで彼女を強く抱きしめていたときの余裕などすっかり消え、まるで別人のようだった。「......だって、君が嫌がるかと思って」瑛介は静かに答えた。そしてふ
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