「もう謝らなくていいよ。傷つけたのは......あなた自身なんだから」そう言い残して、若子は立ち上がった。「......じゃあ、行くね」「若子......」西也がその手を掴んだ。「本当に......暁と引っ越すのか?」若子はその言葉に、じっと彼を見返す。「そんなこと聞いてどうするの?―まさか、自分に銃を撃ったのは、『苦肉の策』ってわけ?私と子どもを引き止めるために?」「......違う!そんなわけないだろ!命を懸けて芝居なんて、誰がするんだよ!......俺だって、死ぬかもしれなかったんだぞ!俺は......ただ、お前と離れたくなかった。それだけなんだ。本当に、苦肉のつもりなんかじゃない」「じゃあ、もうその手の質問はしないで。私は、しばらく子どもと離れて暮らすつもり。お互い、冷静になる時間が必要だと思う」「......じゃあ、まだ離婚するつもりなのか?」「もしそう言ったら、また自分を撃つ?―今度は、私を脅すつもり?」「違う!そんなつもりじゃない......!」西也の顔色は蒼白で、言葉もどこか震えていた。「若子、俺は......ただ、藤沢に償いたかったんだよ......」「分かってる。信じるよ。あの一発が、修への『償い』だったってこと」西也の顔に、ほんの少し安堵の色が浮かぶ。だが―若子はすぐに、続けた。「でも......私はそれでも、離婚するつもり」その言葉に、西也の顔がまた一瞬で引きつった。「なんで!?なんでなんだよ......!」「......だって、あなたは私に嘘をついた」若子の声は、静かで、そして確固たる決意に満ちていた。「私は......本当に、あなたに失望したの」「でも、俺は償ったじゃないか!あの一発で!」「それは修への償いでしょ?あなた自身がそう言ったじゃない。私への償いじゃない。私が離婚を決めたのは―私に嘘をついたから。だから私は、もうあなたを信じられない......それが理由。その一発を、今度は『私への脅し』に使う気?それは通らないよ」若子の目は鋭く、声には一点の迷いもなかった。彼女の言葉には、もう、何も割り込む隙間はない。「違う!本当に......違うんだ......!」西也は必死に否定する。でも―その声は、もう彼
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