-㊾ 墓参りの後- 2人は美麗の力になりたかった、しかし何もできなかったのでただ悔しかった。それを知った美麗は2人の気持ちだけでもうれしかった。 しかし、暫くの間美麗はテレビを見る事が出来なかった。ニュース番組が放送される度に犯人の顔が映るからだ。あの「無表情」を決して見たくなかったのだろう。龍太郎と王麗も美麗がホールで働いている時は店のテレビを消す様にしていた、実際はしっかりと動作するのだがずっと「故障中」の貼り紙を貼り付けていた。客①「テレビ、まだ治んないの?」王麗「ごめんなさいね、うちの店お金が無いんだよ。」客②「こんなにいっぱいお客さんがいるのに?」王麗「そうなの、バカ店主が全部競馬や競艇に突っ込んじゃうもんだから。」 調理場で咳ばらいをする龍太郎を横目に現実味のあるジョークをかます王麗。そんな両親の気遣いが何よりも嬉しかった美麗は数日後、大学の帰りに好美と待ち合わせをして花束を購入した後に秀斗の眠る墓地へと足を運んだ。 「金上家之墓」と書かれた墓石を見つけると花束と生前好きだった缶ビールをお供えして涙ながらに手を合わせた。美麗「心臓をありがとう、かんちゃんとこれからも生きていけると思うと嬉しくなって来たよ。ずっとウジウジしていても仕方がないから前を見ようと思うんだ、寂しくないって言ったら嘘になるけどずっと見ててね。また会いに来るし、ずっとかんちゃんの事は大好きでいるつもりだから「さよなら」なんて言わないからね。じゃあ、またね。」 後ろで手を合わせていた好美は美麗の力強い言葉に感動していた、ただ美麗本人はずっと震えていた。やっぱり女の子なのだ。好美「かんちゃんが美麗にくれた人生、大切に生きていかなきゃね。」美麗「うん・・・。好美、一緒に来てくれてありがとう。今日ってうちでのバイト休みだったっけ?」 好美はシフト表を確認した。好美「えっと・・・、明日まで休みだけど。」美麗「じゃあ、今から呑みに行こうか!!」好美「いや、あんたコロっと変わり過ぎでしょうが。」 2人は近くの居酒屋に転がり込んで日本酒を冷酒で頼んだ、周りから見れば結構本格的なチャイナ服を着た女子大生が町中華にて餃子で青島ビールや紹興酒を吞んでいるという滑稽なシーンが繰り広げられている。 しかし、先程までケロっとしていた表情はいつの間にか涙で崩れていた。美麗「か
Last Updated : 2025-09-28 Read more