「透子、知ってる?今、あなたの一挙手一投足が、みんなに注目されてるのよ。バッグ一つ持っただけで、次の流行になっちゃうんだから」理恵は、透子に電話でそう言った。透子は返した。「理恵、それは大袈裟よ」理恵は言った。「全然、大袈裟じゃないわ。本当にそうなの。あなたが今、京田市の上流階級で、どれほどの地位と価値を持っているか、全然分かってないんだから。あなたは、瑞相グループ唯一の令嬢で、橘さんの実の妹。まさに、トップオブトップのセレブで、お姫様みたいなものよ」透子はそれを聞き、思わず苦笑した。理恵に何かを言い返そうとしたが、その前に、理恵がまた尋ねてきた。「あのさ、透子。あなたの理想のタイプって、本当に身長185cm以上、26歳以下で決まりなの?えーっと、もうちょっとだけ、条件を緩めたりできない?例えば、三つか五つくらい年上とか」兄の聡は身長はクリアしているが、問題は年齢だ。これでは、アプローチする資格さえない。透子はそれを聞き、答えた。「インタビューでのこと?あれは、実は新井を意識して言っただけで、本当は、そんなに厳しい条件はないわ」理恵はそれを聞くと、途端に声が明るくなり、問い詰めた。「本当?」透子が頷こうとした、その時。ふと、何かがおかしいと気づいた。透子は尋ねた。「どうして、三つか五つ年上って、条件を緩めてほしいの?」理恵は言った。「だって、そうすれば、お兄ちゃんがあなたにアプローチできるじゃない!」透子は頭をかしげた。え……理恵は、まだ諦めていなかったのか。自分は、もう何度も説明したはずなのに。透子は、ため息をついて言った。「理恵、私とあなたのお兄ちゃんは、あり得ないわ。恋愛感情はないの」理恵は言った。「どうしてよ、二人、すごくお似合いじゃない。まさか、お兄ちゃんが年を取りすぎてるって言うの?でも、五歳差なんて、普通でしょ。橘さんだって、私より八つも年上よ」透子は言った。「……年齢の問題じゃないわ。聡さんは私のことが好きじゃないし、私も彼に恋愛感情はないの。せいぜい、友達止まりよ」理恵は請け合った。「信じて。私の知る限り、彼は絶対にあなたに気があるわ。彼は顔だって、悪くないでしょ。新井より格好いいと思うし、スキャンダルもないし。えーっと、性格がちょっとアレで、口が悪い時もあ
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