僕は半ば諦めて、芯を解放する覚悟を始めた。 こうなってしまっては、芯は離れてゆくだろうから仕方ない。大切なものを失った時は、また僕がどこかで泥に塗《まみ》れればいいだけ。 芯との日々を思い、後悔よりも泣き顔に熱くなる感覚が蘇る。それももう、二度と湧くことはない。そう思ったけれど、反抗期真っ盛りな芯は、ここで上手く作用してくれた。「あっそ。アンタのミスくらい、俺がカバーしてやっから。つかもうアンタのじゃねぇんだわ。だからさぁ、馴れ馴れしく俺のに触ってんなよ」 まさか、芯が僕を取り戻そうとしてくれるなんて、微塵も期待していなかった。僕が流す涙の理由が変わる。 僕が言うのもアレだが、奏斗さんのイカれた雰囲気に物怖じもせず、対抗できる人が居るなんて思わなかった。「はぁ? ガキのクセに、口だけは一端だねぇ。ヒーロー気取りかよ。なぁ、お前なんかがコイツ満足させれてんの? コイツ満足させんの、大変だろ」「あ? 元カレ面ウザイんだけど。ソイツ、もう俺じゃないと満足できなくなってるから。いいからさっさと返せよ。俺のだって言ってんだろ」 芯は僕の手を引いて、奏斗さんから強引に奪い取った。まだ上手く脚に力が入らず、よろけて芯に抱きつく。 芯は僕を抱きとめてくれたが、耳元でこう囁いた。「後で全部聞くからな」「ま~っ、アツいねぇ。連絡先、変わってないよね? また連絡するから、無視··しないでね」 口調は穏やかなのに、重くて逆らえない圧が全身を怯えさせる。 奏斗さんがヒラヒラと手を振るのを、ちらっと盗み見る。不敵な笑みを浮かべているのが怖い。 震える僕の肩を抱く、芯の手にグッと力が入る。「うっせぇ! 連絡してくんな」 芯が悪態をついてくれる。その後は、何も言わずに僕の家まで手を引いてくれた。 かっこいい芯。けれど、やはりこれで芯に触れるのは最後になるだろう。 分かっている。芯の言葉の全てが本心ではない事。大丈夫、分かっている。 〜〜〜
Terakhir Diperbarui : 2025-06-08 Baca selengkapnya