カウンターの方で、優希と志音が揉めているように見えた。でも実際は、志音がひどく酔っぱらっていただけだった。「早く飲んで!一杯も付き合ってくれないなんて、それでも友達なの!」そう言って志音はグラスを優希の口元にぐいぐい押し付けた。優希はこんなに強いお酒は飲みたくないと思い、二人がもみ合っているうちに、グラスからお酒がこぼれてしまった。こぼれたお酒で、優希の胸元はびっしょり濡れてしまった。コートの下に着ていたのは、体にフィットするオフホワイトのセーターだ。だから濡れた部分は少し透けて見えた。すると優希は眉をひそめ、ついに我慢の限界がきた。志音からグラスを奪うと、カウンターに、タンッと叩きつけた。次の瞬間、彼女は志音の手を取り、腕を背中に回して押さえつけた。優希は力を加減したけれど、それでも志音は痛くて何度も悲鳴を上げた。それから優希は片手で志音を押さえながら、もう片方の手でコートからスマホを取り出す。そして電話帳を開き、安人の番号にかけた。年末で、安人は忙しいはずだ。でも、優希からの電話にはいつもすぐに出るようにしているから、コールが二回鳴っただけで電話はつながった。優希は眉をひそめたまま言った。「お兄ちゃん、私は夜桜クラブにいるの。友達が酔いつぶれちゃって、一人じゃ手に負えないから、運転手さんをこっちへよこしてくれる?」「わかった」スマホから安人の声が聞こえた。「今、隣の市にいるんだ。誰か迎えに行かせるよ」「うん」そして、電話を切ってスマホをポケットに戻した彼女がふと目を向けると、志音はもうカウンターに突っ伏して眠っていた。優希は唇を結んでため息をつき、志音の手を離したあと、彼女が楽な姿勢になれるように体を支えてあげると、自分のコートを脱いでその肩にかけてあげた。一方、志音は眠りながら、無意識に湊の名前を呟いていた。それを聞きながら、優希は志音の隣に腰を下ろし、彼女の寝顔を見つめた。志音がこの何年もの間、湊のためにどれだけ犠牲を払って努力してきたか、優希はずっと見てきた。湊のためじゃなかったら、志音は法律の道なんて選ばなかっただろう。湊のためじゃなかったら、北城に来ることもなかったはずだ。志音も湊も、もとは雲城の出身だ。雲城だって、国内では指折りの経済都市。だから優希も志音も、湊が卒業後、もし東都
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