大輝は一日中スマホを眺めていた。真奈美から電話がかかってくるのを待っていた。しかし、心のどこかでは、電話がかかってこないでほしいとも願っていた。離婚届を出した時、北城の役所では手続きの完了日までなら離婚申請の取り下げはまだ可能と言われていた。つまり、真奈美から連絡がなければ、取り下げの申請をしに行ってもいいわけだ......大輝は密かに、真奈美がこのことを忘れていてくれることを願った。そうすれば自分が申請を取り下げに行けたのに。しかし、真奈美は忘れていなかった。昼頃に、彼女の電話がかかってきた。「明日の午前中、時間空けておいてね。離婚の手続期間が終わるから、承認を完了させにいかないと」大輝はスマホを握りしめ、しばらく黙り込んだ後、低い声で答えた。「分かった」「登録とか変更するのに、身分証明書忘れないでよね」真奈美は念を押した。大輝は胸に針で刺されるような、チクチクとした痛みが続いていた。彼は緊張した声で、「ああ」と答えた。「じゃあ、これで」真奈美は電話を切った。電話から聞こえるプープー音に、大輝の黒い瞳は一層暗くなっていた。その時、大介がドアを開けて入ってきた。「社長!中島先生と連絡が取れました!」大輝は驚き、慌てて立ち上がった。「本当か?」「はい。まだ電話は繋いでいます。直接話してください」大輝は大介からスマホを受け取った。......栄光グループ、社長室。真奈美は電話を切り、スマホをデスクに置くと、再び書類に目を通し始めた。霞がドアをノックした。「どうぞ」霞はドアを開けて入り、人気のレストランで持ち帰ってきたばかりのうな重を差し出した。真奈美はそれが大好きだった。「社長、お昼ご飯が届きました。食べましょう」「ええ」真奈美は書類を閉じ、休憩室に入って手を洗ってから戻ってきた。霞は既にうな重の蓋を開けていた。うな重を見て、真奈美は目を細めた。「ちょうど食べたいと思っていたのよ。あなたって気が利くね」今朝起きた時、無性にうな重が食べたくなったのだ。人気のレストランのうな重は数量限定なので、霞に頼んで予約してもらおうと思っていたのに、会社に着いたら忙しくてすっかり忘れてしまっていた。だから、霞が自分の食べたいと思っていたうな重を買ってき
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