白川麻衣の実家STグループは大手の通販会社を経営しており、洋服だけでなくインテリアや生活用品、雑貨小物までありとあらゆる物を販売していた。中でもファッション関係は彼らの強みで、ベビーから年配層まで、カジュアルから正装、礼服、ドレス、部屋着や寝衣、肌着、ランジェリー等々…およそ扱ってない物はないのでは?と言われるほど幅広く扱っていた。しかも自社ブランドも持っていたので価格的にも抑えめで、もちろん高級品の取り扱いもあったので、販売対象も一般家庭から富裕層まで網羅し、希望があればオーダーメイドも受け付ける為、デザイナーまで抱え込んでいた。この最早通販会社とは言えない一大企業を担う白川哲司(しらかわてつじ)は麻衣の父親で、雪乃は彼女を通じて自分のデザインが商売になるのかを見てもらい、そしてその機能性を考慮した高いデザイン性に目をつけた彼に、スカウトを受けていた。「それは駄目よ、お父さん。彼女は自身のブランドを立ち上げたの。で、私とこの子ー」「よろしくお願いします」「友香と雪乃の3人でデザイン事務所を開いたのよ」雪乃と麻衣よりも2歳年下の友香がペコリと頭を下げ、麻衣はフフンと得意気に父親に対して顎を上げた。「私に黙ってそんな事を?資金はどうしたんだ?」白川哲司が娘を心配して眉を寄せるのを、雪乃は微笑ましげに見つめた。「心配ないわ。まだ開いたばっかりで小さな事務所だし、人だって私たち3人だけだから。後のことは稼いでから考えるわ」その無謀とも思える楽観的な計画の無さに呆れたように苦笑する哲司は、雪乃をちらりと見てしばらく考えに沈んだ。そして徐ろに提案した。「どうだろう。うちは縫製事業もしているから、君のデザインをうちに売ってくれないだろうか?もちろんデザインの価格はその都度交渉させてもらうとして、利益還元もきちんとさせてもらうし、それに君にとっては名前を売るチャンスになると思うんだが?」雪乃を始め、麻衣も友香も、その破格の申し出に瞳を輝かせ、特に麻衣はすぐさま父親に飛び付いて喜びを伝えた。「ありがとう、お父さん!大好き!」「いい歳をして、やめなさい」そう言いながらも嬉しそうに目を細める父娘の姿は、雪乃の胸の中に一抹の寂しさと羨ましさを湧き上がらせた。雪乃の両親は格別厳しかったり、冷淡だったりしたわけではない。たぶん世間一般的な、どこにでもいる
Terakhir Diperbarui : 2025-06-13 Baca selengkapnya