それに、私が電話をかければ、雅臣は仕事中でも何でも、すぐに駆けつけてくれるよ。たとえ……」清子の目に、毒蛇のような鋭く毒々しい笑みが浮かんだ。「あなたたちが夫婦の時間を過ごしていても、彼は私のもとへ駆けつけてくれるんだよ」星は思わず拳を握り締めた。爪が手のひらに食い込んでも、痛みは感じなかった。清子の電話で、雅臣が自分の元を去っていったのは、一度や二度だけではなかった。自分は、彼を引き止めたこともあった。しかし雅臣は、「くだらないことを言うな」とだけ言い残し、なにも残すことなく自分の元を去っていった。まるで、先ほど見せてくれた情熱は、ただの幻だったかのように。自分は、ただ弄ばれたような気持ちで、一人残された。清子の顔を見ながら、星は笑った。「つまり、彼は私を置いて、あなたとベッドタイムを過ごしに行ったて言いたいわけ?」清子の表情がわずかに硬くなったが、すぐにいつもの表情に戻った。「私と雅臣は……あなたが思っているほど汚い関係じゃないわ」他のことなら嘘をつけれたが、この件に関しては、彼女は嘘をつけれなかった。たとえ彼女が雅臣の初恋の人であろうと、まだ雅臣は離婚していない。愛人と言われるだけだ。ネットでは、男の心すら掴めない女たちが、偉そうに不倫は許してはならないとか言っているが、彼女と雅臣の方が、ずっと昔から互いを知り合っていた。「汚い?」星は、その言葉を繰り返したが、怒っている様子はなかった。「何もないくせに、どうしてそんなに得意げなの?清い関係だってこと?彼に子供を産んであげられなかったこと?それとも……彼と結婚できなかったこと?」清子は星に痛いところを突かれ、笑顔が消えた。「それがどうしたっていうの?私が彼と結婚できなくても、子供を産んであげられなくても、私が空にある月が欲しいとも言えば、彼はなんとかしても取ってきてくれるわ」何かを思い出し、清子は再び笑顔になった。「あら、あなたと雅臣が予定していた結婚式も、私がもらっちゃったわね。あのウェディングドレス、私が好きなデザインだったの。まさか、雅臣がそんなに昔の私の好みを覚えていたなんて……」星は眉を上げた。「偽物の結婚式で、そんなに喜ぶなんて。そんなに自信があるなら、雅臣に離婚してもらって、あなたと結婚してもらえばいい
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