もっとも、人の仲を引き裂くような遊び心には、確かに妙な面白さがある。雅臣は、わざわざ多くを弁解するような男ではなかった。彼は勇に視線を向け、低く命じる。「勇、星に謝れ」勇は内心忌々しく思いながらも、清子の病を案じているため、不承不承口を開いた。「星、俺はただ、ちょっとからかっただけだ。そんなに気が小さいのか?」星は彼のぞんざいな態度を気にすることもなく、ふっと微笑む。「謝りたくないならそれでもいいわ。あなたと小林さんはそんなに仲がいいんでしょう?だったら彼女のために薬を試すくらい、なんでもないはずよね?」勇は怪訝そうに眉をひそめた。「良薬は口に苦しって言うけど、毒にもなるだろ?俺は病気じゃないからな。飲んで、逆に体を壊したらどうするんだ?」星はさらりとあしらう。「不治の病じゃなくても、病気なのは事実でしょ?第一療程の薬は比較的穏やかで、解毒成分も入ってるの。顔に悪いどころか、むしろいい効果があるはずよ」彼女は手のひらの黒い丸薬を軽く揺らしてみせた。「原料はどれも希少で高価なものばかり。一粒を金に換算すればとんでもない値打ちよ。十数粒しかないけれど、これを作るのに丸七日かかっているの。幾重もの複雑な工程を経て、ようやく完成したのよ」勇はその調子にすっかり呑まれ、目を丸くする。「そんなにすごいのか?」星は淡々と告げた。「すごいもなにも、小林さんの病を治せるかどうか、それに尽きるわ」半信半疑ながらも、勇は星の手から薬を受け取り、口へと運んだ。だが、いざ飲もうとした瞬間、手が止まる。「星、もしこれで俺の身体に異常が出たら......お前、ただじゃおかないからな!」彼は険しい目つきで脅す。星は微笑みを崩さない。「何かあれば、どうぞ私を恨めばいいわ」――もっとも、足湯に使った水で煎じた薬に大きな問題はない。葛西先生にも確認済みだ。鼠の糞やゴキブリについても、「大したことはない」と言われた。どうせ鼠の糞なんて毎日口にするわけじゃないし、ゴキブリは高タンパクだし。星の言葉に背中を押され、勇は一気に薬を飲み下した。だが、異常は起きない。半時間以上経っても、体調は変わらなかった。安堵した勇は清子を振り返る。「大丈夫みたい
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