会社に入ると、すぐに彼女に気づいた者がいた。受付にいる若い男性社員は、目を丸くして彼女を見つめていた。天音は背が高く、黒のスウェットのセットアップを着ていた。黒い髪を無造作に下ろし、ラフな格好なのにまったくだらしなく見えない。中性的な装いで、後ろのフードを軽くかぶっていて、女の子なのに、どこかクールで格好いい雰囲気がある。気分のせいか、その瞳には強いアンニュイさが漂い、目の下にはうっすらとクマができている。しかし、それが彼女の魅力を損なうことはなく、むしろ独特の凄みと美しさを醸し出していた。天音は受付を一瞥すると、淡々と言った。「洵に会いたい」我に返った受付の男性は、慌てて答えた。「社長はつい先ほど接待で外出されまして……ですが、もうすぐ戻られるはずです。よろしければ、休憩室でお待ちになられますか?」天音は少しだけ眉をひそめた。仕方がない。洵がいないからといって、このまま引き下がるつもりはない。休憩室に通された天音は、顔が半分以上隠れるまでフードを深く被り直した。ポケットに両手を突っ込んだままソファに深く腰掛け、目を閉じてじっと待った。オフィス特有のホワイトノイズに包まれているうちに、彼女はいつの間にか眠りに落ちた。……洵と陽介が外出しているのは、ゲームのイメージキャラクターの件で打ち合わせをするためだ。今回のゲームはターゲット層が広く、男女問わず楽しめる仕様になっているため、広告塔にも男女一名ずつを起用する予定だ。話し合いが一段落し、二人のタレントが実際にゲームを体験してみたいということになったため、二人はそのまま会社へと戻ってきた。道中、洵は自ら積極的にタレントたちとコミュニケーションを取っており、普段はおしゃべりな陽介の方が相槌役に回っていた。陽介はここ数日、洵の様子がどこかおかしいと感じている。言葉でうまく説明できないが、洵は相変わらず仕事熱心で精力的に動いているため、傍目には異変に気づきにくい。あえて言うなら、仕事以外の場面ではほとんど口を開かず、一人の時はひどく沈んだ空気を纏い、ただじっと考え込んでいることが増えた。おそらく天音が関係しているのだろうと察した陽介は、深くは追及しなかった。彼の中で整理がつけば、いずれ自分から話してくれるはずだろう。会社に戻るなり、受付から「
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