Semua Bab 子供にはあたりまえ: Bab 21 - Bab 30

35 Bab

第二十一話「異変からの現実」

  第二十一話「異変から現実」       ※※※※※   異界を体験したその日、帰宅した颯太は、すぐにベッドに入って泥のように眠った。翌朝、颯太は脱衣所の洗面台で顔を洗ったあと、鏡で自分の眼の色を確認した。「本当だ、灰色になってる……」 瞳孔は灰青色、虹彩は薄い灰色に、角膜は濃灰色。以前の黒眼から明らかに退色していた。「半分って眼の色か? ちょっと視界もぼやけてる?」 視力も半分になったのかもしれない。それ以外の体の変化はなさそうで、颯太はホッとする。 台所に向かうと、母が朝食の支度をしていた。昨夜、泥のように眠っていたから、気づかなかった。夜のうちに親が帰ってきたのだろう。「おはよう」颯太が母に声をかけると、振り返った母が、颯太の眼を見るなり、動きを止め、口を開けて、言葉が出てこない様子だ。母が何を言いたいのか察しがついて、先に颯太は言う。「なんだか眼の色が変わっちゃった」「颯太、それ、どうしたの!」 母が血相を変えて、颯太の両頬を手のひらで包んで、颯太の眼をまじまじと見つめる。「眼だけ? 他は? どこも痛くないの? 眼は? 痛い?」 矢継ぎ早に質問してくる。「痛くはないよ、ただ視界がぼやけてる」 すると母がスマホを取り出し、何かを調べ始め、次に通話し始める。颯太の眼の状態を説明している。どうやら病院にかけているらしい。 通話を切ると、母が意を決したように「颯太、これから都内の大きな病院に行くわよ。秩父で患ると変な噂する連中がいるだろうからね。行くわよ。お父さん! ちょっと! 車、出して!」母の行動は迅速だった。父は大慌てで着替えている。颯太も着替えてくるように言われた。母は手早く持ち物を揃えて、三十分後には家を出発していた。&n
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-25
Baca selengkapnya

第二十二話「汚す者」

第二十二話「汚す者」  その日の昼過ぎ、颯太の家にケイタ父子が訪れた。颯太の母には、ケイタ父子が来ることは伝えていたので、昼食は近所の蕎麦屋の出前にした。もちろん大地の分も。夕方に帰宅する父のためにも、生蕎麦も大量に届けてもらった。 ケイタの父と颯太の母との、大人の話し合い場に、子供がいても仕方ないので、出前を食べ終わると、秩父神社に三人、徒歩で向かう。 三人で、のんびり散策する。 先日、尊の説明が途中で中断したので、今日は三人で続きを聞くつもりだ。 天神地祇社の写真も撮ってなかったし、自由研究も終わっていない。 授与所に行くと、窓からひょっこり尊が顔を出してくる。「すみません、もう少し待っててもらえますか。いま手が離せなくて」 慌ただしく言って、頭を下げてくる。颯太は「忙しいときに、ごめんなさい。ゆっくりでいいです。境内を歩いていますから」 こちらも頭を下げてから、授与所を離れる。 散策していた三人を、押しのけるように、年齢層高めな女性の集団が、無神経に幅をとる。集団の中心にいた針金みたいな印象の女性が、甲高い興奮した声をあげた。「もう私たちを待ちきれなくて、三峯神社から狼さんがお迎えに来ているわよ、早くおいで、っておっしゃってるわ」と、周囲の女性たちに誇るようにさらに大声を出す。「ご眷属さんを遣わしてくれるなんて、導きね、やっぱり呼ばれているわねぇ」 針金が嬉しそうに、はしゃぐ。「どうしても来てほしい、って夢に出てこられたら、行かなきゃいけないでしょう。ご眷属さんを寄こすなんて、どうしても来てほしいのね」 狼を迎えによこすほど三峯は親切ではないし、呼ばれてもいないだろう。女性たちに競うように針金が恥ずかしげもなく語っている。三峯神社は特に厳しい気質なのは、一度でも行ってみれば肌でわかるような鋭さだ。 神様に呼ばれたから、仕方なく行ってあげるのよ、私! と言うストーリーが脳内で、できあがっているらしい。おまえの頭の中だけにし
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-26
Baca selengkapnya

第二十三話「再び紗幕」

  第二十三話「再び紗幕」       ※ ※ ※ ※ 神社の境内の裏手に回りこんだとき。あれほどうるさかった蝉の声が消えた。ケイタは覚えのある感覚に、周囲を見渡す。子供たち三人の他は色がなくなっている。紗幕が降ろされた世界だ、これは。颯太と大地も異変に気づき、あたりを見回している。秩父神社の境内なのに、異界に重なっている。三人の目の前に、猿面をつけた子供のような背格好の人物が、突然、ここにいる。颯太と大地が驚いて、声をあげた。「誰?」 猿面が黙って立っている。ケイタが代わりに答える。「壬申(じんしん)だ。僕にあのホウズキをくれた存在だよ。颯太と大地は姿を見るのは初めてだよね。ヤオゴコロオモイノカネ様の神使だよ」壬申は頷く。「出てくるつもりはなかったんだが。こうして三人揃って参ってくれて、嬉しくなって、ついね」と、気さくな感じで手をあげる。「我が主さまの差配もでもある。君たちは以前のような『力』はなくなってしまったが、『補う力』は、もう得られただろう?」 壬申が颯太を指して、君は、と続ける。「聴力の鋭さを」 君は、と大地を指して「五秒後に起きることが見える」 君は、とケイタを指して「見たものを一瞬で記憶するようになった。いずれも君たちを助ける『補う力』だ。君たちは三人で協力し合って生きるように、と我が主さまからの伝言だ。深淵なるご思慮で我が主さまがそのようになさった。よくよく肝に銘じて、生きなさい」 颯太、大地、ケイタと顔を見回して、壬申は頷いた。「正式に決まってから、こちらに報告しに来ようと思っていたんだけど」ケイタは壬申を見つめる。「颯太の家に下宿して、学校に通うことになるかもしれないんだ。いま、お父さんと颯太のお母さんが、話し合っている」それを聞いて大地が驚く。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-27
Baca selengkapnya

第二十四話「ははそにて」

  第二十四話「ははそにて」   尊の姿が見えなくなるとケイタは、尊の残していった言葉の意味を考えた。「他人を救おうなんて思わないでくださいね」 確かにそうだ。他人を救おうだなんて、奢った考えだ。救われたかったのは、、まず自分だった、とケイタは己の感情をいまなら素直に認められる。 小さい頃は無邪気に感じたままを、清香に話せた。聞こえた声の存在を話してしまった。 ケイタと、颯太や大地との違いは、お互いに共感してくれ関係性の友達がいたかどうか。ケイタにはいなかった。そして母に、それを利用されてしまった。決定的にそこが違う。颯太は大人に自分の感覚を話さなかったのだろう。利用されないためには重要なことだ。 自分を現実に引き戻すことができたなら、清香も暴走しなかった。 見えないものが見えても、聞こえないものが聞えても、誰かにとってそれが不思議なことでも、その世界が心地よくても、現実に戻ることができなければ、ただの現実逃避だ。 清香は、ケイタを通じて自分には感じられない世界に心地よさを感じ、現実世界を受け入れられずに、ついには自分で力を欲した。そして飲み込まれた。 見えても聞えても、超えてはならない境界線を、そうとは知らずに清香は、越えてしまった。 力を特別視して、自身の承認欲求を満たそうとするあまり、ケイタの伝えていたメッセージを、己の力として得たあとの、清香の世界にはケイはいなかった。 例えば清香が飲み込まれずに、メッセージを受け取れたとしても、それが何に繋がっているのかを判断できなければ、メッセージを送ってくる清らかなものになりすました何者かに、いかにもなメッセージで操られる危険性があることに気づかなければならない。 メッセージを手放しで喜んで受け取ることの、怖さを検証もせずに他人に伝える危うさを、見落してしまう。危険と隣り合わせなのだ。 聞こえるなら、何者が発しているのかを疑う注意深さを、常に意識しなければ、なりすましの声に、飲み込まれてしまう。現に清香は飲
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-28
Baca selengkapnya

第二十五話「束の間」

  第二十五話「束の間」       ※ ※ ※ ※ ※  颯太の家に三人で帰ると、颯太の父が帰宅していた。「あれ? お父さん、早いね」 颯太が居間に顔を出すと、ケイタの父と、颯太の父が、真剣な顔つきで話し合っている。それを中断して颯太の父が「おう、夕飯が天ぷら蕎麦、って聞いたからな」 笑顔を向けてくる。 母が、台所で天ぷらを揚げている。「颯太、ケイタ君を洗面所に連れて行ってやって。大地君も手を洗っていらっしゃい。そろそろ夕食が出来上がるから」 母に促されて颯太は洗面所にケイタを案内した。大地は勝手知ったる他人の家なので、先に行けせた。手を洗って三人で戻ってくると、ジュワジュワと天ぷらを油切りしているところだった。「颯太、これ居間のテーブルに持って行って」 天ぷらの乗った大皿を手渡される。居間のテーブルの中央に、颯太が置く。大地が二皿目を持って来て、それをドンッと置く。台所に颯太と大地が戻ると、母が、大鍋に生蕎麦を入れて、あっという間に茹でていき、水で締めてザルに人数分、盛っていく。 それを母が、颯太、大地、ケイタに手伝わせて、居間のテーブルに並べた。 昼間も蕎麦だったが、母の前でそれに触れてはいけない、と颯太は心の中に仕舞って、自分もテーブルを囲んで定位置に座る。 母がようやくテーブルについたので、各々、手を合わせて、いただきますをする。 颯太の父が、ケイタの父に「久能さんも食べていってください」 と、勧めると、ケイタの父もやっと箸をとった。 ケイタの苗字が久能というのを、初めて知った颯太と大地は、頭の中でクノウを変換できずに、「苦悩??」と二人で首をかしげる。それを感じ取ったケイタが「久しいに才能の能だよ」と、こっそり耳打ちしてくれる。「あぁー」 納得して、、颯太はピーマンの天ぷらを箸でつ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-29
Baca selengkapnya

第二十六話「病院で」

  第二十六話「病院で」       ※ ※ ※ ※ ※   三峯神社に宿泊したときに、清香が宿坊の二階から飛び降り救急車で病院に搬送された。父に連絡して、迎えに来てもらいたいと伝えた。ケイタは、たった一人で押しつぶされそうな不安で、いっぱいだった。 清香を壊そうとして、ケイタが言った言葉を、思い返す。「どう? お母さんが望んだ『神様からのメッセージ』は? きちんと受け取ってね」 あの時の清香への感情は、憎しみだった。 いくら求めても、清香からの愛情なんて、ケイタには返ってこない。それなのにケイタはまだ、清香に母としての、自分への愛情を期待している。 清香からの『バケモノ』という罵倒も、甘んじて受けよう。あのときの、清香のケイタを見る目は、血のつながった息子を見る目ではなかった。異常にぎらついた目で、ケイタを恐れていた。「ぼくは『バケモノ』だ。お母さんを追い詰める。でもその『バケモノ』を作ったのはお母さんだよ」 一人、明かりの制限された薄暗い病院の廊下で、父を待つ時間、そんな独り言が出た。誰も答えてはくれない。いつも一人だ。とても孤独で苦しい。「不安だったら、いつでも連絡してこいよ」 大地の声がよぎった。まだ……颯太と大地は、起きているだろうか? アプリをタップして、大地に通話を試みる。だが出ない。たぶんもう、眠っている時間だ。颯太にもかける。祈るような気持ちで。出てくれ。誰かに話さないと、現実から逸脱してしまいそうだった。祈る。まだ正気でいたい。 眠そうな声で颯太が出てくれた。「どうしたの?」 声を聞いただけで、胸の中にあった冷たい感情が溶けていくように、涙がこぼれて止まらない。表現しようのない思いが、堰を切ったように溢れてくる。「泣いているの?」 嗚咽を堪えているケイタに、そっと寄り添うように
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-30
Baca selengkapnya

第二十七話「大人の義務」

  第二十七話「大人の義務」   颯太が両親を伴って、ケイタが待つ病院に来てくれた。それだけでホッとする。 颯太の父が、ケイタの父に「うちに子が失礼なことを言ったみたいで、すみません」 と、頭を下げたあと「だいたいの話は聞きました。あなたのお立場もあるでしょうし、ケイタ君の言い分もあると思います。良かったら、お話を聞かせてもらえませんか」 和やかな口調で声をかけ、颯太の父がその場のとげとげしい空気をやわらげた。「夏美、ちょっとあっちで、子供らと、飲み物でも買って、休ませてあげてくれ」 颯太の父が、颯太の母へ、ケイタを気づかわげに言うと、ロビーの自販機前のソファを指した。 颯太の母の名前が夏美というのか。夫婦が名前を呼び合うのを新鮮な驚きを感じる。ケイタの両親が一緒に住んでいたころは、「パパ」や「ママ」と呼び合っていたから。夏美に促されて、颯太とケイタは自販機でそれぞれ飲み物を買ってもらって、ソファに座った。父親同士が話し合いをしている場所から離れて、ケイタは緊張感が緩んだ。夏美は何も言わず、颯太の髪をひと撫でした。それが、愛しさが溢れていて、そんな仕草をしてもらったことがないな、とケイタは羨ましくなる。夏美が撫でた颯太の頭に目線を向けていたケイタに気づいて、颯太が「ありきたりなことしか言えないけど、大変だったな」 小さな声で言う。ケイタは喉が何かに塞がれたように何も言えなくなって、返事ができずに、頷いて見せる。「ケイタのお母さんは、無事なの?」 颯太が聞いてくる。「足にヒビが入って、しばらく歩けないみたい。あと、いろいろな声と見えないものが見えて惑わされてるからか、心神耗弱状態って言われた。そっちの治療は、別の病院で、って説明があったよ」「そうなんだ? 見えたり聞こえたりが、慣れてなくて混乱すると、実際の診断はそうなるよね。ケイタのお母さんみたいに」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-30
Baca selengkapnya

第二十八話「居場所」

  第二十八話「居場所」  「どうかな、ケイタ君」 颯太の父が、しゃがみ込んで、ソファに座っていたケイタと、目線を合わせる。「学校は……? どうするんですか?」 ケイタは不安になって尋ねる。 特に親しいクラスメイトなどはいなかったが、転校となれば、諸々に支障が出るのではないか、という意味での問いかけだった。「うちの颯太もいるし、田舎の学校が嫌でなければ、私たちが手配する」颯太の父が、しっかりとケイタの不安を払拭するために、きっぱりとした口調で、ケイタに答えた。本物の親よりもケイタの身を案じてくれているのがわかって、胸が熱くなる。「イヤじゃないです、ただ……」ケイタは言葉を切って、しばらく考える。どう伝えたらいいんだろう。迷った末に、ストレートに颯太の父聞いてみる。「迷惑じゃないですか? こんな厄介な事情のあるぼくを下宿させるなんて」「もう君ひとりで頑張る必要なんてないんだよ。迷惑に思うくらいなら、最初からこの病院まで来たりはしていない」 颯太の父が大きな手で、ケイタの背中をそっとさする。不快じゃなかった。むしろ人の手の温かさを、生まれて初めてケイタは知った。ケイタは戸惑って、颯太の父にさらに尋ねる。「本当に?」 大人はケイタを利用する大人ばかりだったから、今のケイタに、何かを引き換えに颯太の家族にあげられるものが、ひとつもないのに、親切にしてくれるのは……。「なんで?」 声に出してしまった。「うちの颯太が、君を助けたいと、願っているからだよ。親バカなんだ」 ケイタの心を軽くするために言ってくれているのか、本気で親バカなのか、判断がつかないが、颯太が十分に両親に大切にされていることだけは、よくわかる。「だから」 颯太がソファから立ち
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-30
Baca selengkapnya

第二十九話「五秒後の景色」

  第二十九話「五秒後の景色」   朝、大地は、颯太の家にいくために、時間に余裕をもって自転車で、自宅を出発した。 『幸運』を奪われて以来、大地は時間と気持ちに余裕を持って行動することを覚えた。 自転車で出かければパンクをするし、歩いていれば水たまりを踏んだ自転車から泥水を被って服を汚すし、家にいれば階段を踏み外す。それらが頭の中で『五秒後の景色』としてみえるようになった。頭の中で見えるそれらの不幸を回避するために、慎重に動くようにする。そのための時間と気持ちの余裕だ。 今日は夏休みの最終日。 ついに昨日の朝、秩父神社の模型が完成して、颯太の発案で秩父神社の神職の今園尊に、できあがったばかりの模型を見せに行くことにした。 この夏休みはいろいろなことがあった。 模型を作るために大地は、ふだん行かない図書館に行った。颯太は図書館を利用しているからか、すぐに目的の本を見つけられたようだが、大地には本の中から本を探すことなんて、まったくできない。 颯太の父にDIYの道具を貸してもらい、大地が自分で板を切ったりした。このときの颯太は本当に不器用で、ほとんどの板を大地が形にした。図工の時間も、、そういえば颯太の手先は危なっかしかったな、と思い出すくらいには、使い物にならなかった。 それに昔から颯太は、大地には視えないものをよく視てしまうらしく、何もないところに視線を向けていることがよくあったし、不思議なことを言い当てられたりもした。そのことを知っているのはいつも行動を共にしていた大地だけだ。大人にしたら、カンのいい子、くらいしか思われない程度にさじ加減しているのを、大地はわかっていた。「青龍が昇っていくから、これから雨が降るよ」と颯太が言ったときには、本当に雨が降ってくる。だから、颯太が言っていることや、視ている世界は事実なのだ、と大地は信じていた。今年の夏休みの始まりに、颯太が視ていた存在も、秩父神社の青龍なのかもしれない。模型の配置や縮尺の相談で、尊に会うために行った秩父神社で
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-31
Baca selengkapnya

第三十話「子育ての答え合わせ」

  第三十話「子育ての答え合わせ」  颯太の家に着くと、自転車を庭に停めて、インターフォンを鳴らす。颯太は出てこないので、勝手に家に上がる。居間で景汰と颯太が話している姿が、頭の中の景色で見えた。颯太はすでに黒のカラコンとメガネをかけて、出かけられる準備はできているようだった。直接、居間に行く。「おはよう、颯太、景汰」「おはよう、大地」 二人が楽しそうな笑顔で迎えてくれる。テーブルの角の位置に大地は座る。 颯太の家に来る前の景汰は、こんなに楽しそうな表情をしなかったから、よほど浅賀家に馴染んでいるのだとわかる。「何を話していたの、楽しそうだけど」 すると颯太が悪そうな顔で「大地がうちに来る自転車の音を拾って、ぼくが実況中継していたんだ」 あっさり白状する。「げ。人が悪いな、全部、聞えていたの?」「うん、車を避けて先に行かせてたでしょう?」「そんな音まで拾えるの?」「そうだね、何かを回避したなー、って」「そこまでわかってんなら、そんなに楽しそうに人をネタにしないでくれ」「違う違う、ネタじゃなくて、大地が無事にうちに来られるように、福笑いしていたんだよ」「ああ、正月にやるやつか」「で、無事に大地が到着して安心したの」 颯太と会話していた大地の顔を見て、景汰が安堵した様子で「良かった」と大地に爽やかな笑みを向ける。「ま、眩しい。眩しすぎるよ、景汰」 冗談で大地が景汰の前に手をかざして、顔を背けて目を細める。 ひとしきり笑いあっていると、颯太の母の夏美が、冷たい麦茶を持って来てくれる。「あ。ありがとうございます」 意外と喉が乾いていたので、大地は一気に冷えた麦茶を飲み干す。 夏美が三人を急かすように両手を前に押し出す仕草をした。「いつまでじゃれあってるの。今
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-31
Baca selengkapnya
Sebelumnya
1234
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status