第二十一話「異変から現実」 ※※※※※ 異界を体験したその日、帰宅した颯太は、すぐにベッドに入って泥のように眠った。翌朝、颯太は脱衣所の洗面台で顔を洗ったあと、鏡で自分の眼の色を確認した。「本当だ、灰色になってる……」 瞳孔は灰青色、虹彩は薄い灰色に、角膜は濃灰色。以前の黒眼から明らかに退色していた。「半分って眼の色か? ちょっと視界もぼやけてる?」 視力も半分になったのかもしれない。それ以外の体の変化はなさそうで、颯太はホッとする。 台所に向かうと、母が朝食の支度をしていた。昨夜、泥のように眠っていたから、気づかなかった。夜のうちに親が帰ってきたのだろう。「おはよう」颯太が母に声をかけると、振り返った母が、颯太の眼を見るなり、動きを止め、口を開けて、言葉が出てこない様子だ。母が何を言いたいのか察しがついて、先に颯太は言う。「なんだか眼の色が変わっちゃった」「颯太、それ、どうしたの!」 母が血相を変えて、颯太の両頬を手のひらで包んで、颯太の眼をまじまじと見つめる。「眼だけ? 他は? どこも痛くないの? 眼は? 痛い?」 矢継ぎ早に質問してくる。「痛くはないよ、ただ視界がぼやけてる」 すると母がスマホを取り出し、何かを調べ始め、次に通話し始める。颯太の眼の状態を説明している。どうやら病院にかけているらしい。 通話を切ると、母が意を決したように「颯太、これから都内の大きな病院に行くわよ。秩父で患ると変な噂する連中がいるだろうからね。行くわよ。お父さん! ちょっと! 車、出して!」母の行動は迅速だった。父は大慌てで着替えている。颯太も着替えてくるように言われた。母は手早く持ち物を揃えて、三十分後には家を出発していた。&n
Last Updated : 2025-07-25 Read more