初恋を忘れられないあなたへ、継母なんてもうごめん のすべてのチャプター: チャプター 31 - チャプター 40

「どうしたんだい？」「子どもたちが少し私を拒むんです。明日の誕生日会に来てほしくないって」「きっとあの継母の入れ知恵だろうね？」真理は眉根を寄せた。そうかどうかはともかく、蒼司にはそう思わせなければ、彼女はそう腹をくくった。翌日―子供たちが目を覚ますと、階下はにぎやかな気配で、人がたくさん来ているようだった。「ママ」「さあ、お着替え。もうお客さまが来てるわ」彩乃は二人を呼んで小さな礼装に着替えさせる。彩乃は早くから会場を整え、来客の一部を出迎えると、子どもたちを迎えに二階へ上がってきた。後から来た人たちは、みんな蒼司と真理が招いた客だったからだ。「あの人も来た？」若葉は尋

この考え方は、彩乃にはどうしても受け入れられなかった。彼女の両親は決してそんな言い方をせず、いつも嬉しそうに寄り添って誕生日を祝ってくれた。大切なわが子が無事に健やかに、また一つ大きくなったね、と。どうして、祝うべきで記念すべき日を、わざわざ苦しみの日にしてしまうのだろう。そこで彩乃ははっきりと言った。「お子さんに、そんな伝え方はなさらないでください。母親への感謝は大切です。それは人としての土台で、血のつながりの継承でもあります。でも誕生日は、この子たちがこの世界に来たことを祝う日です。人生でいちばん大事で特別な日であって、不幸を持ち込む日ではありません」由香は彩乃が言い返すとは思

蒼司はあなたのメンツを気にして口をつぐんでいるけれど、私はこの顔に泥を塗ってでも言わせてもらうよ」彩乃は三人をまっすぐに見据えた。いつからだろう。私のそばに、誰もいなくなったのは。真理を恨んでいる。彼女が現れたせいで、一夜にして無責任な継母の烙印を押されたから。でも、それ以上に蒼司を恨んでいる。どうして、誰にでも私の顔を踏ませることを許すの？彼は一度たりとも、私の気持ちを気にかけたことがない。もう、我慢しない。子どもたちの誕生日は終わった。こことも、そろそろお別れだ。でも行く前に、この胸につもった屈辱は置いていく。きっちり返していく。彩乃は傘を置き、家政婦に合図した。「

彩乃は感謝してもしきれない思いだった。わずか四時間半で、彩乃は重要情報を二枚の紙に整理して並べた。「こんなに早いのか？」和真は驚き、紙を受け取って目を通した。「少し話せるか？」「どうぞ」二人は和真の部屋のソファに腰を下ろし、彩乃が口を開いた。「もし実情が私の分析どおりなら、蒼司と比べてあなたには勝ち目がありません」和真は顔を上げ、「出鼻をくじくつもりか？」と苦笑する。彩乃は口元をわずかに上げた。「私が取りに行きます」和真は眉をぴくりと動かした。「どうやって？ 蒼司の手から奪うってことか？」「まだプロジェクトは確定していません。なのでまだ彼のものでもありません」彩乃の瞳

そう考えた蒼司は、少し距離を保ったまま歩み寄り、「彩乃」と声を掛けた。その声に、人々がいっせいに振り向く。蒼司の視線は、無意識のうちに、穏やかな笑みを湛えた亮介の眼差しとぶつかった。男同士にだけ生まれる警戒と敵意が、蒼司の胸に一気にせり上がる。先に口を開いたのは和真だった。「蒼司さんも来てたんだ。ずいぶん奇遇だね」奇遇？水野グループが目を付けた案件には、和真が必ずと言っていいほど絡んでくる。だが、なぜ彩乃が和真と一緒に？ふと、あの日の「働く」という彩乃の言葉が脳裏をよぎる。まさか、鳴海グループに入ったのか？そこまで考えた途端、怒りを抑えきれなくなった蒼司は、彩乃の腕を素早