真琴の気だるげな様子を見て、信行は優しく声をかけた。「ああ、もう影響はない。全部終わったことだからな」その言葉に安心したのか、真琴は目を閉じ、消え入りそうな声で呟く。「うん……じゃあ、早く休んで」絵に描いたような美貌に、透き通るほど滑らかな肌。ほのかな明かりが横顔に落ち、その気だるげな雰囲気が、妙に艶めかしく見えた。伸びた手が真琴の額にかかる乱れ髪を払う。信行の穏やかな声が降ってきた。「昨日、お婆様に年内には子供を作るって約束したばかりだろ。なのに、俺を待たずに寝るつもりか?」瞳は閉じたまま、真琴は淡々と返す。「それはあなたが約束したことでしょ。私が約束したわけじゃありませんね」昨夜の本家での食事会。祖母からの質問を、彼女はすべてやんわりとかわした。何一つ明確な答えは出さずに。真琴は眠たげだ。信行が身を乗り出し、唇を重ねようとした瞬間、彼女の右手がそれを遮った。拒絶。真琴は瞼が開かない。ただ眉間をわずかに寄せ、冷ややかに告げる。「匂います……シャワー、浴びてきて」全身から漂う、由美の匂い。彼が部屋に入ってきて、近づいた瞬間に分かった。このジャスミンの香りは、由美専用のものだ。露骨に嫌がられ、信行はすぐには立ち上がらず、自分の服を引っ張って嗅ぐ。洗剤の香り以外、特に変な匂いはしないはずだ。それでも、彼は笑って頷く。「分かった。先に浴びてくるよ」そう言って、着替えを持って洗面所へ向かった。しばらくして。シャワーを終えて寝室に戻り、真琴の枕元に横たわると、信行は後ろから彼女を抱きしめた。昨日、祖母に約束したことは、決して出まかせというわけではない。眠りが浅かったせいか、抱きしめられた感触で真琴の意識が浮上する。目は開けない。腰に回された信行の手を振りほどくこともしない。ただ、寝たふりを決め込む。だが、這う指先が本気になり、寝間着を解き始めるとそうもいかない。真琴は反射的にその手を掴んだ。「やめてください。すごく眠いんです。明日は仕事がたくさんありますから」ようやく反応した妻を抱き寄せ、信行は喉の奥で笑う。「寝たふりはもう終わりか?」手を掴んだまま、真琴は繰り返す。「疲れてるんです。やめてください」真琴が疲れたと言うので、信行もそれ以上の無
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