視線が交わり、真琴は信行の瞳の中に答えを見た。彼女の分析は正しかった。あれはやはり、由美の仕業だった。だが、真実を知っても心は波立たなかった。あの時、彼が自分を捨て駒にしなかったことに対して、安堵さえ覚えなかった。月明かりが二人に降り注ぎ、向かいの街灯が煌々と輝いている。その光には、数匹の蛾が羽音を立てて群がっていた。真琴は自分の頬に添えられた信行の右手を掴んで静かに外した。澄んだ瞳で信行を見据え、真琴は平然と言い放つ。「あなたが由美に抱いているのは、成美さんへの恩義だけじゃないわ」言いかけて、真琴は口をつぐんだ。少しの間、深刻な顔で考え込み、やがて淡々とした声で続けた。「……突き詰めない方がいいこともあるわ。口に出せば、誰かが傷つくだけだから」彼の由美への甘さ、内海家への過剰な援助は、とっくに恩義の枠を超えている。共に過ごすうちに情が移ったのか、あるいは他に理由があるのか。だが、もう深く考えるのも、信行の腹を探るのも億劫だった。真琴が言葉を濁して話を切り上げると、庭から野太い声が響いた。「辻本さん、こりゃ駄目だ。一晩かかってわしに一勝もできんとは。もっと腕を磨いてもらわんと困るな。また明日来るぞ」哲男の声が応える。「おう、また明日な」祖父たちの声が庭から聞こえてくる。真琴は慌てることなく信行の体をどけ、門を開けて笑顔を作った。「お爺ちゃん、平本さん」「おや、真琴ちゃん、散歩帰りかい?信行くんも一緒か。こりゃ一家団欒の邪魔をしちゃ悪いな」そう言うと、平本は軽く挨拶をして帰っていった。平本を見送り、真琴は祖父に肩を貸して屋敷に入った。すると哲男は早速言い訳を並べた。「さっき信行くんと数局指してな、脳味噌を使い果たしたんじゃ。だから平本の爺さんに勝てんかった」真琴は「そうね、そうね」と子供をあやすように頷いた。その傍らで、信行の視線は真琴の横顔に注がれていた。彼女の余裕のある笑み、少しも機嫌を損ねていない様子。それを見て、彼の胸には澱のような感情が溜まった。重荷を下ろして晴れ晴れとした今の真琴は、世の男たちが束になっても敵わないほど、潔く、颯爽としていた。十時近くになり、哲男が舟を漕ぎ始めたので、真琴は信行を見て言った。「今夜はここに泊まってお爺ちゃんの側
Read more