「あそこまで強がりだと、いっそ哀れになってくるわ」美穂の声は、周囲に丸聞こえになるほどの大きさだった。当然、柊也の耳にも届いているはずだ。だが柊也は無表情を貫き、微塵も心を動かされた様子はない。まるで詩織の存在など視界に入っていないかのように、その意識は志帆一人に向けられている。周囲が詩織の話をしている間も、彼は志帆だけを見つめ、静かに尋ねた。「緊張してるか?」志帆が答えるより先に、横から美穂が割って入った。「お姉ちゃんは金融の博士号まで持ってるのよ?たかが修士課程の入試ごときで緊張するわけないじゃない!」志帆は困ったように笑い、たしなめた。「美穂、やめて。高村教授の研究室は、そんな甘いところじゃないわ」「もう、お姉ちゃんは謙虚すぎるんだから!昔から成績はずっとトップだったし、実力が違いすぎるでしょ。『WTビジネススクール』からオファーをもらえる人間なんて、そうそういないんだからね」美穂は唇を尖らせて得意げに胸を張る。太一もそれに同調した。「そうだよ、志帆ちゃんが謙虚すぎると、俺たちみたいなポンコツの立つ瀬がないって!」やはり、本物の実力者は謙虚なものだ。太一は、圧倒的な才能を持ちながらも驕り高ぶらない志帆の姿勢に、改めて敬意を抱いた。それに比べて、江崎詩織は……太一は再び詩織のほうをチラリと見た。せいぜい高いところから落ちて、無様に泣き喚かなきゃいいけどな。「さて、みんなありがとう。そろそろ時間だから、私行くわね。みんなも自分の用事に戻ってちょうだい。とくに柊也くん、会社のこと放っておいていいの?ここで待たずに戻ってくれていいから。終わったら私がそっちに行くわ」志帆は時計を確認し、柊也を気遣うように言った。「構わない。ここで待つ」柊也の返答は短く、しかし揺るぎない。「きゃー、お姉ちゃん!お義兄さんが待たないわけないでしょ?いつだってお姉ちゃんファーストなんだから!」美穂が甘ったるい声を上げて囃し立てる。「美穂ったら、茶化さないで」志帆は従妹を軽く小突いたが、その表情は喜びに満ちていた。会場へ向かう直前、彼女は柊也の胸に飛び込み、きつく抱きしめた。まるで、少しの間も離れがたいとでも言うように。校門をくぐり、セキュリティチェックを通過した詩織は、振り返って京介に手を振ろうとした。そ
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