チッ、ガードが固いな。自信がないならそう言えばいいのに。ミキがさらなる煽り文句を打ち込もうとしたその時、画面上部に知らない番号からの通知が割り込んだ。【本港市にいるのか?】誰だ?と首を傾げていると、追撃が来た。【白彦だ】ミキの表情から一瞬で生気が消え失せた。興味も何もかもが氷点下まで冷え込み、彼女は迷わず「ブロックして削除」のコンボを叩き込んだ。せっかくのいい気分が台無しだ。なんで死人が生き返ってメッセージを送ってくるのよ。心霊現象か。ミキはスマホの電源を切り、ふて寝を決め込んだ。今回のチャリティ晩餐会は、財界の重鎮から旬の芸能人までがこぞって招待され、かつてない規模で開催されようとしていた。ミキの参加は急遽決まったことだったため、当日は詩織、そして澪士と共に三人でレッドカーペットを歩く手筈になっている。運営の実務を取り仕切るのは、広報マネージャーの相田さやかだ。彼女は以前、百合子の元でこの種のイベント企画に携わっていた経験があり、その手腕には定評がある。詩織とミキが当日のジュエリーを選んでいると、さやかが控えめにドアをノックして入ってきた。「江崎さん、少々トラブルが。あるタレントがレッドカーペットの歩行順に不満を漏らしておりまして、変更を要求しているのですが……彼女の『格』では、その位置は不相応なんです」ミキがジュエリーを手に取ったまま、ふと尋ねた。「そのタレントって、だれ?」「早川璃々子です」チッ。世間とは、なんと狭いものか。さやかとしては、何とか先方を説得し、当初の構成通りに進めるつもりだった。わざわざ詩織に判断を仰ぎに来たのは、璃々子のバックに北里市の名門・由木家がついているからだ。無下にはできないと判断したのだろう。だが、それを聞いた詩織の反応は拍子抜けするほど淡々としていた。「その人の参加資格、取り消して」さやかは自分の耳を疑った。え、今なんと?詩織は視線も上げずに続ける。「ブラックリストに入れて。今後一切、ウチの案件には関わらせないで」「……承知いたしました」さやかは理由を尋ねなかった。詩織がこれほど断固とした処置を下すからには、確固たる理由があるはずだ。その早川璃々子という女が、詩織の逆鱗に触れるような不義理を働いたのだろうと、彼女は静かに
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