秦の口調はあまりに穏やかで、しかも笑みすら浮かべているため、和彦は心のどこかで、冗談ですよ、という秦の一言を期待していた。だが、その期待は簡単に裏切られる。 和彦は、鏡の中で自分の顔色が、蒼白から、羞恥の赤へと染まっていく様を呆然と見つめていた。秦の手によってパンツと下着を引き下ろされ、膝で引っかかる。「この世界で、特殊な立場にいるなら、もう少し用心深くなったほうがいい。そうでないと、誰に狙われるかわかりませんよ、先生」 剥き出しになった腰を撫でながらの秦の言葉に、和彦は必死に羞恥を押し殺し、鏡に映る秦を睨みつける。しかし、すぐに強い眩暈に襲われ、きつく目を閉じていた。「……それを、身をもって教えてくれるために、こんなことを……?」「単なる親切で、ここまでできませんよ」 秦の手に両足の間をまさぐられ、和彦のものがひんやりとしたてのひらに包み込まれる。ここ最近味わっている誰の手とも違う感触に、鳥肌が立っていた。「この先しっかり警戒して、こんな不埒なまねを許すのは、わたしだけにしてください。そうすることで、わたしたちの秘密は旨みを増す」「自分勝手な、理屈だ……」「先生がそれを言いますか。ヤクザなんて、自分勝手な奴ばかりでしょう。そして先生は、そのヤクザに囲われて、大事に大事にされている」 話しながらも秦の手は、和彦のものをゆっくりと扱いていた。なんとか体を起こそうとするが、両手に力が入らない。だったらいっそのこと、体の感覚も麻痺すればいいのに、秦の手から送り込まれる刺激だけは鮮明だ。「うっ……」 急に秦の手の動きが速まり、無視できない快感から這い上がってくる。和彦が唇を噛み締めると、背に覆い被さってきた秦の唇が耳に押し当てられ、思わず身震いしてしまう。背に、ゾクリとするような疼きが駆け抜けていた。「長嶺組長にたっぷり愛されているんでしょうね。わたし相手にも愛想がいい体だ」 秦の指に、欲望の形をなぞられる。こんな状況でも、和彦のものは男の愛撫に対して従順だった。しっかりと反応していたのだ。
Last Updated : 2025-11-24 Read more