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All Chapters of 血と束縛と: Chapter 211 - Chapter 220

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第6話(41)

 秦の口調はあまりに穏やかで、しかも笑みすら浮かべているため、和彦は心のどこかで、冗談ですよ、という秦の一言を期待していた。だが、その期待は簡単に裏切られる。 和彦は、鏡の中で自分の顔色が、蒼白から、羞恥の赤へと染まっていく様を呆然と見つめていた。秦の手によってパンツと下着を引き下ろされ、膝で引っかかる。「この世界で、特殊な立場にいるなら、もう少し用心深くなったほうがいい。そうでないと、誰に狙われるかわかりませんよ、先生」 剥き出しになった腰を撫でながらの秦の言葉に、和彦は必死に羞恥を押し殺し、鏡に映る秦を睨みつける。しかし、すぐに強い眩暈に襲われ、きつく目を閉じていた。「……それを、身をもって教えてくれるために、こんなことを……?」「単なる親切で、ここまでできませんよ」 秦の手に両足の間をまさぐられ、和彦のものがひんやりとしたてのひらに包み込まれる。ここ最近味わっている誰の手とも違う感触に、鳥肌が立っていた。「この先しっかり警戒して、こんな不埒なまねを許すのは、わたしだけにしてください。そうすることで、わたしたちの秘密は旨みを増す」「自分勝手な、理屈だ……」「先生がそれを言いますか。ヤクザなんて、自分勝手な奴ばかりでしょう。そして先生は、そのヤクザに囲われて、大事に大事にされている」 話しながらも秦の手は、和彦のものをゆっくりと扱いていた。なんとか体を起こそうとするが、両手に力が入らない。だったらいっそのこと、体の感覚も麻痺すればいいのに、秦の手から送り込まれる刺激だけは鮮明だ。「うっ……」 急に秦の手の動きが速まり、無視できない快感から這い上がってくる。和彦が唇を噛み締めると、背に覆い被さってきた秦の唇が耳に押し当てられ、思わず身震いしてしまう。背に、ゾクリとするような疼きが駆け抜けていた。「長嶺組長にたっぷり愛されているんでしょうね。わたし相手にも愛想がいい体だ」 秦の指に、欲望の形をなぞられる。こんな状況でも、和彦のものは男の愛撫に対して従順だった。しっかりと反応していたのだ。
last updateLast Updated : 2025-11-24
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第6話(42)

「もう、やめ、ろ――」「まだですよ。もっとしっかり、先生の秘密を知りたいんです。たとえば、こことか……」 和彦が鏡を凝視していると、秦が思わせぶりに指を舐める。その指がどこに向かうか察したとき、必死に洗面台の上で上体を捩ろうとしたが、弛緩している和彦の体を容易に押さえつけて、秦の指が内奥の入り口をこじ開け始める。「あぁっ」 ビクビクと腰を震わせて、和彦は秦の指を呑み込まされる。内奥の造りを探るように慎重に指が蠢かされ、感じやすい襞と粘膜を擦り上げられていた。 異物感に呻いていた和彦だが、秦の指が、ある意図をもって浅い部分を執拗に擦り始めたとき、鼻にかかった声を洩らしていた。すでに両足から完全に力が抜け、洗面台に上体を預けきってしまうと、秦にすべてを支配されているも同然だった。「……しずくが垂れてますよ、先生」 笑いを含んだ声でそう言った秦が、ハンカチで和彦のものを包み、軽く扱いてくる。意識しないまま内奥に挿入された指を締め付けると、巧みに蠢かされていた。 強烈な眠気と快感に、和彦の意識は朦朧とする。理性は見事にねじ伏せられ、秦に何をされているのかすら、認識が怪しくなっていた。「安定剤ですよ。効き目が強いんで少ししか混ぜなかったんですが、さすがにあれだけの量の水を飲むと、効果は抜群ですね」 秦の言葉に、ひどく納得していた。ここまで体の自由を奪われ、意識が飛びかけているのは、アルコールのせいではなく、水に混ぜられた安定剤のせいだったのだ。この店にきて、大きなグラスで水を飲んだが、水割りにもその水は使われていたのかもしれない。「まだ寝ないでくださいね。もう少し、先生に楽しんでもらいたいので」 内奥を指で掻き回されて解される。この頃には和彦の息遣いは乱れ、熱を帯びていた。「はあっ……、はあ、はっ――……」「ここにいつも、長嶺組長の熱いものを受け入れて、擦り上げてもらっているんですよね? 物欲しげに、よく締まってますよ。たまらないでしょうね。先生のここに受け入れてもらって、愛してもらったら」
last updateLast Updated : 2025-11-25
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第6話(43)

 それがなんであるかわかったのは、内奥に含まされてからだった。秦の指で奥まで押し込まれ、前触れもなく小刻みに振動する。「ひあっ……」 背後から伸びてきた秦の手にあごを掬い上げられた和彦は、鏡に映った自分の顔を嫌でも見てしまう。目を潤ませ、頬を上気させた、明らかに発情した男の顔が、目の前にあった。背後には、堪えきれないような笑みを浮かべた秦がいる。「わかりますか、先生? 今、先生の中に、ローターが入っています。すごく美味しそうに咥え込んでますよ」 そう囁かれると同時に、内奥深くに押し込まれて震えるローターが引き抜かれそうになる。秦がコードを引っ張ったのだ。和彦は反射的に内奥をきつく収縮させていた。「うっ、ううっ」「締め付けてますね。気に入りましたか? このおもちゃ」 再び秦の指によってローターが内奥深くに押し込まれ、そのうえ、振動が強くなる。足掻くように片手を伸ばした和彦は、鏡に触れる。すると、その手の上に秦が手を重ね、握り締めてきた。 ハンカチで包まれた和彦のものが緩く上下に扱かれ、内奥深くで響くローターの振動も加わり、和彦は一人静かに乱れる。そんな和彦の耳に何度も唇を押し当てながら、秦は掠れた声で囁いてきた。「――これは、わたしと先生の秘密ですよ」 ようやく和彦が顔を上げると、鏡越しに秦と目が合い、美貌の男は艶然と微笑む。喘ぐ和彦の唇の端に、そっと唇が押し当てられていた。「名残惜しいですが、そろそろ終わりにしましょうか。先生の忠実な騎士が、いつ駆け込んでくるかわかりませんから」 すぐにローターが引き抜かれるのかと思ったが、内奥の入り口に、さらに熱く硬い感触が押し当てられる。「あっ」 和彦は思わず声を上げるが、かまわず〈それ〉はこじ開けるようにして、すでにローターを呑み込んでいる内奥に、太い部分を呑み込ませようとする。 秦に犯されようとしている――。 そう強く認識したとき、和彦の体に嫌悪と同時に、甘美な感覚が駆け抜けた。
last updateLast Updated : 2025-11-25
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第6話(44)

「んあっ、あっ、あっ、あうっ……」 ハンカチ越しに秦の手に扱かれ、和彦は精を迸らせていた。 スッと体を離した秦によって、半ば強引にローターが引き抜かれる。激しく息を喘がせ、体を震わせる和彦に対して、秦は愉悦を含んだ声でこう言った。「先生との最初の秘密としては、上出来ですね。先生の奥を味わえないのは残念ですが、焦ることもないでしょう。これからも仲良くできるでしょうから」 和彦はすでにもう、怒りも羞恥も戸惑いも感じることはできなかった。わずかに残る意識で、秦が自分が思っていたような男でなかったことと、迎えにくる三田村に、こんな姿は見られたくないということを考えるので、精一杯だ。 秦に格好を整えられ、抱きかかえられるようにして体を起こされても、その腕から逃れることすらできない。 そんな和彦を、秦は両腕でしっかりと抱き締めてきた。「――先生みたいな人でなかったら、わたしもこんな手段は取らなかったんですけどね。なんとなくわかるんです。先生に対して、この手段は有効だと。これで先生は、嫌でもわたしを意識せざるをえない。先生の引いた境界線の内側に、わたしも入れたということですよ」 秦の顔が近づいてきて、和彦はなんとか顔を背けようとしたが、ささやかな抵抗はあっさりと無視され、唇を塞がれる。「んっ……」 柔らかく唇を吸われて、舌先でくすぐられる。自分では歯を食い縛ったつもりだったが、もしかすると口腔に秦の舌を受け入れたかもしれない。和彦にはもう、よくわからなかった。 支えられながらパウダールームを出て店内に戻ると、恭しいほど丁寧にソファに座らされようとしたが、突然、店に駆け込んでくる慌ただしい足音がした。「先生っ」 しっかり耳に馴染んでいるはずのハスキーな声が、いままで聞いたことのないような動揺を滲ませていた。あれだけ言うことをきかなかった和彦の体が、何かの力を得たようにしっかりと自分の足で立つことができ、秦を押し退ける。「三田村っ……」 救いを求めるように手を伸ばすと、駆け寄ってきた三田村に受け止められる。
last updateLast Updated : 2025-11-25
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第7話(1)

** 和彦が小さく呻いたとき、優しく頬を撫でられた。次に髪を梳かれて、思わずほっと吐息を洩らす。ただ、ひどく頭が重く、深い沼の底で漂っているようで、意識がはっきりしない。 もしかして自分は、本当に深い沼に沈められているのだろうかと、現実的でない不安感に襲われ、和彦はハッと目を開く。まっさきに視界に飛び込んできたのは、もちろん暗く澱んだ世界ではなく、木目の美しい天井だった。「――大丈夫か、先生」 ふいに傍らから、柔らかなバリトンで話しかけられる。そして、顔を覗き込まれた。 賢吾の真剣な顔を間近に見て、和彦はドキリとする。まばたきもせず見上げていると、賢吾が眉をひそめ、やや強めに頬を撫でてきた。驚いてまばたきをすると、ヤクザの組長という物騒な肩書きを持つ男は、安堵したように表情を和らげた。 珍しいものを見たと、ぼんやりと和彦は思った。意識はまだ完全に覚醒したわけではなく、強烈な眠気は健在だ。 瞼を閉じそうになりながらも、なんとか現状を把握しようとする。「ここ……」「本宅だ。三田村が連絡を寄越してきたから、俺が運び込ませた。酒を飲んでひっくり返ったと聞いたときは、驚いたぞ」 誰かに頭を掴まれて、ずっと揺さぶられているようだ。眠気と気持ちの悪さに、たまらず和彦はきつく目を閉じる。「……ひっくり返ったって、誰が……」「記憶が混乱してるのか? 秦という男の店で、気付けの酒を飲ませてもらったんだろ。急性のアルコール中毒なら、すぐに救急車を呼べと怒鳴るところだが、三田村の説明だと、ただ眠っているということだったからな」 賢吾の大きな手に頬を包み込まれたとき、和彦は心地よさ以上に、ゾクリとするように肉欲の疼きを感じた。おかげで、曖昧な意識の中から、ある記憶だけが浮上する。 再び目を開いた和彦は、優しい手つきとは裏腹に、賢吾がおそろしく怜悧な表情をしていることを知った。「――怖かったか?」 突然の問いかけに、咄嗟に和彦は返事ができない。かまわず賢吾は言葉を続けた。「何があったか
last updateLast Updated : 2025-11-25
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第7話(2)

 和彦はゆっくりとまばたきを繰り返し、なんとか賢吾の話を頭に留めようとする。いろいろと考えようとするのだが、思考はどこまでも散漫だ。「……蛇蝎の、サソリ……」「ああ、そうだ。あれは、悪党ってやつだ。暴力団担当の刑事だったくせに、その立場を利用して悪辣なことをヤクザ相手にやらかして、それこそ蛇蝎みたいに嫌われていた。そこで、ある組が鷹津をハメたんだ。かなり大問題になってな、警察の監査室まで引っ張り出して、県警の本部長のクビが飛ぶかという話までいった」 淡々と話す賢吾のバリトンの響きが耳に心地いい。ふっと意識が遠のきかけたが、もう少しつき合えと囁かれ、髪を手荒く撫でられる。和彦はわずかに身じろぎ、このときになってやっと、自分が浴衣に着替えさせられていることを知った。「結果として、組はこれまでのことに目をつむり、警察も事態を内々に処理して穏便に済ませた。もっとも、鷹津はそうもいかない。警察側の事情もあって免職にできない代わりに、自己都合での退職を迫ったが、それを蹴ったんだ。交番勤務としてどこかに飛ばされた――と聞いていたが、最近になって暴力団担当係に戻ったそうだ」 鷹津という刑事をハメた組とは、きっと長嶺組のことなのだろう。誰が中心になって進めたのか、考えなくてもわかる気がする。「あんな毒にしかならないような男が現場に戻るぐらいだ。警察が本腰を入れるような事件の捜査をしている……と、考えると、一つ心当たりがある」 賢吾の中に住む大蛇が、ゆっくりと鎌首をもたげていく光景が脳裏をちらつく。「ここのところ、うちのシマどころか、総和会のいくつかの組も、シマを〈汚されて〉いる。三田村がここのところ忙しいのは、その件をあたっているからだ。鷹津が呼び戻されたのも、それが関係あるかもな」「それがなんで……、千尋やぼくを脅すことになるんだ」「少しは頭が冴えてきたか、先生?」 ニヤリと笑いかけられて、和彦はまたぐったりと目を閉じる。すると、指先で唇を擦られ、わずかに口腔に含まされた。その感触で、秦にキスされたことを思い出した。 体を駆
last updateLast Updated : 2025-11-25
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第7話(3)

「鷹津は、組が動いてハメなきゃいけないぐらいには、刑事としてはそこそこ有能だ。が、性格に問題がありすぎる。あのキレた男が、職務なんて屁とも思ってないと知ったところで、俺は驚かないな。今は……私怨で動いているんだろう。俺を、どうやって痛い目に遭わせてやろうかって考えながら」 やはり、鷹津をハメた張本人は、賢吾なのだ。ヤクザの言うことすべてを鵜呑みにする気はないが、和彦が受けた印象からして、鷹津を悪党と言った賢吾の表現は間違っていないだろう。 悪党同士――蛇蝎が互いに睨み合う状況に、気づかないうちに和彦は巻き込まれてしまったのだ。 ため息をつくと、和彦自身の唾液で濡れた指先が唇に擦りつけられる。人が動けないのをいいことに、賢吾は和彦で遊んでいるようだ。「……危ないんじゃ、ないか。あんたの身が。あの男、ひどく嫌な感じがする……」「光栄だな。心配してくれているのか?」「あんな男につきまとわれたら、ぼくが迷惑なんだ。ヤクザより嫌な男に、初めて会った」 短く笑い声を洩らした賢吾に、軽く唇を塞がれる。少し間を置いてまた唇を塞がれたとき、口移しで水を与えられた。喉の渇きを自覚した和彦は、素直に喉を鳴らして飲む。「――ヤバイ男がウロウロしていることだし、いっそのこと、先生をここに閉じ込めておこうか」 本気とも冗談ともつかないことを賢吾が洩らし、和彦はわずかに目を開ける。眼前に、大蛇を潜ませた怖い目があった。「先生は、どんな男だろうが関係なく引き寄せるから、危なっかしくていけねー。一人寄ってきたと思えば、すぐに、二人、三人と――」 まさか、秦とのことを知られたのだろうかと、内心動揺しながらも、このときばかりは強烈な眩暈が和彦を救う。 気持ち悪さにきつく目を閉じると、瞼に賢吾の唇が押し当てられ、思わず吐息を洩らす。「……蛇蝎の片割れは、あんた狙いだろ。ぼくのせいにするな」「酔っていても、減らず口は健在だな」 ここで和彦に限界が訪れる。一度は浮上した意識だが、賢吾に与えられた情報が頭の中で散らばっ
last updateLast Updated : 2025-11-26
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第7話(4)

** 障子を通して、朱色を帯びた陽射しが部屋に差し込んでいるのを、薄目を開いた和彦は初めて知る。眠り込んでいるうちに、夕方になったのだ。 もうそろそろ体を起こせそうだと思った次の瞬間、ある気配を感じて体を強張らせる。部屋にいるのは、和彦だけではなかった。いつの間にか足元に、人の姿があったのだ。 反射的に体を起こそうとした和彦だが、獣のように飛びかかられるほうが早かった。布団の上に押さえつけられながら、覆い被さってきた相手の顔を見上げる。 和彦としては、安堵の吐息を洩らせばいいのか、呆れてため息をつけばいいのか、微妙な相手だった。 賢吾は、自宅の安全性を過信していたようだ。和彦を守るための獣が何匹も揃っていると言っていたが、獣の中に、一番手がかかる〈子犬〉を含めて考えていたらしい。「……お前は、ぼくが昼寝を楽しんでいるように見えたのか? なんだ、この態勢は」 滅多にないほど真剣な顔をした千尋が、犬っころが甘えてくるように肩に顔をすり寄せてきた。「先生、全然起きないから、心配で離れられなかったんだ」「ただ、酒を飲んでひっくり返って、眠っていただけだ」「酔っ払って気を失ったにしては、様子がおかしいって、オヤジと三田村が話してたよ」 さすがに、筋金入りのヤクザ二人の目を誤魔化せたと考えるのは、甘かったらしい。 和彦は、秦に飲まされたものが安定剤だけではなかったことを思い出し、小さく身震いする。内奥に飲み込まされたローターの振動が、一瞬蘇っていた。「先生?」 怯むほど強い光を放つ目が、間近から顔を覗き込んでくる。和彦は障子のほうに視線を向けながら、平静を装った。「どうして、急いで酒を飲む事態になったのかは、聞いたか?」「――あいつに脅されて、連れていかれそうになったんだろ」 そう言った千尋の言葉からは、抑えきれない怒りが迸り出ているようだ。「あいつが先生に怖い思いをさせたのは、これで二度目だ。……俺だけ狙えばいいのに、あいつ、先生にも目をつけた」「…&hel
last updateLast Updated : 2025-11-26
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第7話(5)

 子供のような仕種で頭を振った千尋の顔を、和彦はまじまじと見上げる。父親は、蛇蝎云々と話しながら悠然としていたのに、一方の息子は、牙を剥いていきり立ったかと思えば、すでにもう途方に暮れた犬っころのような顔をしている。 和彦は、片腕で千尋の頭を抱き締めた。「そんな顔するな。お前は、キャンキャン吠えて怒っているほうが、こっちも安心する」「なんだよ、それ……」 ふて腐れたように言いながら千尋が、和彦の体にかかったタオルケットを押し退けてしまう。熱い体にきつく抱き締められ、その生々しさに身じろぐ。安定剤の効き目はもう消えたようだが、秦の淫らな愛撫の余韻は、厄介な疼きとなって体内に留まったままなのだ。「千尋……、ぼくについてきていた組員の二人はどうなった?」 千尋の気を逸らすためというより、本当に気になっていたことを問いかける。「大丈夫だよ。ただ、職質されただけ。多分、先生と引き合わせないよう足止めしたんだ」「……つまり本当に、鷹津って刑事はぼくを連れて行くつもりだったのか」 秦がやった行為はともかく、あの場は秦に救われたということだ。「――先生、俺も聞きたいことがあるんだけど」 息もかかるほど間近に顔を寄せ、千尋が言う。和彦はその千尋の下から抜け出そうとしたが、がっちり押さえ込まれているので動けない。「なんだ……」「先生を助けた秦って奴、何者?」「……三田村から聞かなかったのか」「総和会の中嶋さんの友人。クラブ経営者。――最近、先生と仲良し」 最後の言葉を告げるときだけ、千尋の眼差しが険しくなる。自分の知らないところであれこれ邪推されて探られるのも嫌だが、直情型の千尋らしく真っ向から問われるのも、息が詰まる気持ちだ。 和彦は心臓の鼓動が速くなるのを感じ、動揺を懸命に押し殺す。「クリニックのインテリアのことで、相談に乗ってもらっているんだ」「ものすごく、イイ男なんだって?」「三田村から聞き出したな
last updateLast Updated : 2025-11-26
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第7話(6)

「千尋っ……」「甘やかしてよ、先生。今ここで、俺のことを目一杯、甘やかして」 子供のようにせがみながらも、千尋は野性味を湛えた大人の男の顔をしている。 ため息をついた和彦は、千尋の頬を手荒く撫でてやる。「ぼくのことを、心配してくれたんだな」「当たり前だろ。先生は、俺にとって一番大事な人だ」「……心配してくれるのはありがたいが、のしかかってきて、甘やかせ、と迫ってくるのはどうなんだ」 こう話している間にも、和彦の体はうつ伏せにされ、腰を抱え上げられる。唾液で濡らされた指に内奥の入り口をまさぐられたかと思うと、肉を掻き分けるようにして挿入された。和彦は唇を噛み、身を強張らせる。 内奥が、淫らに蠢いているのは自分でもわかった。ローターと秦の指で中途半端に官能を刺激され、秦の欲望によってこじ開けられかけた場所は、ずっと肉の疼きを鎮めたがっていたのだ。「千尋、今は、嫌だ――……」「でも、先生の中、すごく発情してる。俺の指に、吸い付いてきてる」 ねっとりと撫で回すように内奥で指が動かされると、たまらず呻き声を洩らす。もっと深い場所を、逞しいもので押し開いてほしいと体が要求していた。 和彦の無言の求めがわかったように、背後で忙しい衣擦れの音がしたあと、千尋の熱く滾ったものが擦りつけられた。「あっ、ああっ」 硬く逞しいものが、まるで歓喜するかのように収縮を繰り返す内奥に挿入されていく。それでなくても脆くなっている襞と粘膜を力強く擦り上げられ、和彦は腰を震わせながら、喉を鳴らす。満たされる感触が、たまらなくよかった。 軽く腰を突き上げた千尋が大きく息を吐き出し、和彦の尻に両手をかける。欲望を呑み込んでいく様子をよく見ようとしているのか、双丘を割り開かれていた。「はっ……、あぅっ、んっ、んっ……」「先生って、酒に酔ったぐらいで、ここまで乱れる人だったっけ? それとも、寝起きだから? 怖い思いをしたあとだと、いつも以上に欲しがりになるのかな」
last updateLast Updated : 2025-11-26
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