**** 座卓に頬杖をついた和彦は、ぼんやりと考え込む。ただ、考えることが多すぎて、思考は散漫だ。 結婚披露宴で和彦に話しかけてきた父親の同僚のことを考えると、必然的にその父親のことを――自分の家族のことにまで考えが及ぶ。和彦にとって家族とは、この世でもっとも関わりたくない存在なので、正直、戸惑っていた。 戸惑うといえば、もう一人の存在を忘れてはいけない。 意識しないまま顔が熱くなってきて、一人うろたえた和彦は慌ててグラスを取り上げ、残っているワインを飲み干す。その勢いで、肩にかけていた羽織が滑り落ちた。気だるい動きで羽織に腕を通そうとすると、ふいに声をかけられる。「――艶めいた顔だな。鷹津のことを考えているのか」 ドキリとした和彦は、自分のその反応を誤魔化すように、正面に座っている賢吾を睨みつけた。さきほどまで、携帯電話であちこちと連絡を取り合って仕事の話をしながら、手元の紙に何か書き留めていたはずだが、いつの間にか、しっかり和彦を観察していたようだ。賢吾の口元には、人の悪い笑みが浮かんでいた。「違うっ」「そんなにムキになって否定すると、認めているようなもんだぞ、先生」 今日、和彦と鷹津の間にあった出来事を、賢吾はすべて知っている。隠し通せると思っていない和彦が、報告のため本宅に立ち寄ったとき、自分から告白したのだ。ただ、父親の同僚と出くわし、捕えられそうになったことは告げていない。 今の生活を〈壊したくない〉と感じるのは、道徳的に間違っているだろう。それでも、異物となるものを持ち込みたくなかった。和彦にとって自分の家族は、まさに異物そのものだ。今の生活に入る、ずっと前から――。 どこかソワソワとして落ち着かない和彦を一人にしておけないと思ったらしく、今夜は本宅に泊まるよう賢吾に言われたのだが、マンションの広い部屋で一人で過ごしたくなかった和彦としては、その言葉はありがたかった。 賢吾がふっと目元を和らげ、手招きしてくる。わずかに逡巡してから、羽織を肩にかけ直した和彦は場所を移動し、賢吾の隣に座った。 すかさず肩を抱かれたので、和彦も賢吾にもたれかかる。
Última atualização : 2026-01-03 Ler mais