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第13話(15)

「お前に行動を予測されるなんて、自分が単純だと言われてるようで、軽くショックだ……」「ひでーよ、先生。俺こそ、どれだけ先生に単純だと思われてるんだよ」 たまらず声を洩らして笑った和彦は、並んでいるマフラーを指さす。「お前の予測だと、ぼくのマフラーを一緒に選ぶ、というのも入ってるのか?」 もちろん、と返事をした千尋が、率先してマフラーを取り上げ、和彦の首元に持ってくる。その状態で、側に置かれた鏡を覗き込んだ和彦は、今度こそ本気で驚いて目を見開く。反射的に振り返ると、そこには、さきほど別れたばかりの澤村が立っていた。 和彦以上に驚いた様子の澤村は、咄嗟に言葉が出ないのか、物言いたげな表情で千尋を指さした。和彦は慌ててマフラーを千尋に押し返し、澤村に歩み寄る。「どうかしたのか、澤村先生。女の子たちを待たせているんじゃないのか」 冗談交じりに言ったつもりだが、動揺して声が上擦ってしまい、ひどく不自然な話し方になってしまう。澤村はようやく我に返ったのか、ぎこちなく頭を動かした。「……えっ、ああ、そうなんだ、が――」 澤村の視線は、まっすぐ千尋に向けられる。千尋は困ったように頭を掻いたあと、人好きのする感じのいい笑顔を浮かべた。カフェでバイトしていた頃は、千尋はこの表情がトレードマークだったのだ。「お久しぶりですね、澤村先生」 千尋から屈託なく声をかけられ、澤村はうろたえた素振りを見せながら答えた。「あっ、えっと……、久しぶり。長嶺くん」 まるで助けを求めるように澤村から目配せされ、和彦も驚いている場合ではなくなる。 明らかに、和彦と千尋が一緒にいるのは不自然なのだ。澤村の同僚であった頃も、和彦たちは関係を隠しており、カフェで顔を合わせるときも、あくまで客と従業員として接していた。その後、和彦は逃げるようにクリニックを辞め、千尋もまた、カフェのバイトを辞めた。 時期は微妙にズレているが、澤村の前から姿を消した二人が、こうして一緒にいて親しげにしていれば、何かしら不審なものは感じるはずだ。「長嶺くんとは
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第13話(16)

「そうなんです。佐伯先生と一緒だといろいろ奢ってくれるから、俺がよく誘うんですよ。就職活動中のフリーターには、ありがたくて」 咄嗟の機転は千尋のほうが上だと、内心で和彦は感心する。和彦はまったく気が回らなかったスーツ姿の理由まで、違和感なく説明してしまった。 千尋にさりげなく腕を小突かれた和彦は、深く追究される前に澤村に問いかけた。「どうしてここに? 用があるんじゃなかったのか」 この瞬間、澤村の視線が落ち着きなく動く。必死に言い訳を〈探して〉いるのだと、和彦は思った。「あー、駐車場に行こうとして、家にハンカチを忘れたのを思い出したんだ。それで、ついでだからお前と一緒の店で買おうかと思って、追いかけてきたら――」 千尋がいたというわけだ。 気まずい空気が三人の間に流れ、和彦はどう会話を続けようかと悩む。すると、空気を読んだのか、澤村は片手を上げた。「じゃあ、俺はこれで。急いで行かないといけないんだ」 言葉通り、澤村はハンカチ一枚を素早く選んで買い求めると、もう一度和彦たちに向けて片手を上げたあと、立ち去ってしまう。「――澤村先生、絶対おかしいと思ったよね」 隣に立った千尋がぽつりと洩らし、思わず和彦は苦笑いを浮かべる。千尋に押し付けたままのマフラーを受け取ると、鏡を覗き込む。「おかしいと思っても、またぼくと会ってくれるかどうかは、澤村に任せる。ぼくが厄介事に巻き込まれていると知っていても、連絡をくれるような男だ。そのうえで、ぼくとお前の関係をどう判断しても、文句は言えない」「でも、ちょっとショック?」 一緒に鏡を覗き込んできた千尋は、不安そうな顔をしていた。自分と一緒にいるところを澤村に見られ、和彦の心が揺れる事態を心配しているのかもしれない。「……そうだな。澤村がもう連絡をくれなくなったら、少しはショックかもしれない。だけど、それなら仕方ないとも思っている。友人だからというのもあるが、澤村は、今のところぼくにとって、表の世界と繋がる数少ない人間なんだ」 だけど最近の和彦にとって表の世界は、遠くに離れた場所にあり、漠然と眺めるものになってしまっ
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第13話(17)

** 文庫を開いたまま畳に伏せて、片腕ずつ動かす。うつ伏せで、枕を抱えるような姿勢でずっと本を読んでいたため、背と腕が痛い。 そろそろ寝ようかと思いながら和彦は、仰向けとなる。枕元のライトだけでは、美しい木目の天井を照らすことができず、まるで怪物のような闇が張り付いている。 耳を澄ませば、微かながら人の話し声や物音が聞こえてくる。それに、中庭に吹き込んでくる風の音も。 常に人が出入りする長嶺の本宅を気忙しいと最初は感じていたものだが、慣れてしまえば、これはこれで居心地のいい空間だと思えてきた。本当に一人で落ち着いて過ごしたければ、今住んでいるマンションに閉じこもればいい。 つまり今の和彦は、一人でいたくない気持ちだということだ。 マフラーと手袋を買ったあと、千尋につき合って街を少しぶらついていると、本宅に泊まらないかと切り出された。らしくなく、遠慮がちな表情を浮かべる千尋を見ていると、甘いと言われそうだが、無碍には断れなかった。 意外なことに、本宅に着いてから知らされたのだが、今夜は賢吾はいないそうだ。父親宅――というより、総和会会長宅に呼ばれて、そのまま泊まることになったらしい。 親子水入らずといえば微笑ましいが、長嶺組組長と総和会会長という組み合わせだと考えると、なんとも物騒に思えてくるから不思議だ。 ぼんやりと天井を見上げ、怪物のような闇にも慣れてきた頃、障子の向こうで抑えた足音がした。和彦が顔を横に向けると、静かに障子が開く。 案の定、立っていたのは千尋だった。しかも、小脇にはしっかり枕を抱えている。 昼間、しっかりスーツを着こなしていたくせに、これではまるで、図体の大きな子供のようだ。和彦は小さく噴き出すと、声をかけた。「ぬいぐるみは抱えてこなくていいのか?」「俺が抱えるものは、別にあるから」 恥ずかしげもなく言い切られ、和彦のほうが恥ずかしくなってくる。「……バカ」 許可もしていないのに、千尋はいそいそと部屋に入ってきて障子を閉める。そして、まるで犬のように大きく身震いした。「先生、この部屋寒くない?
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第13話(18)

「最近、お前にナメられてるだけじゃないかって気がしてきた……」「そんなことないよ。――甘えさせてよ、先生」 浴衣の襟元が開かれ、露わになった胸元に千尋の熱い息遣いを感じる。次の瞬間、千尋の舌に胸の突起を探り当てられ、吸い付かれた。「あっ」 千尋に強く突起を吸われながら、布団の中で浴衣をたくし上げられたかと思うと、下着を引き下ろされる。尻を痛いほど揉まれて、たまらず和彦は小さく呻き声を洩らした。 ようやく顔を上げた千尋と唇を触れ合わせる。「……本当は、ぼくを甘えさせてくれるべきじゃないのか。なんだかいつの間にか、お前がぼくに甘える流れになってるが……」「先生、甘えられるほうが好きだろ。だから、たっぷり甘えてあげるんだ」「父親と同じで、屁理屈を捏ねるというか、人を丸め込むのが上手いというか――」 ぼやいているうちに和彦の上に千尋がのしかかってきて、布団の中で二人は抱き合う。 まるで人懐こい犬のように千尋が頬をすり寄せ、唇を舐めてくる。くすぐったくて笑い声を洩らした和彦が顔を背けると、首筋に軽く噛みつかれた。 千尋は、じゃれついてくる犬っころそのものだ。和彦の肌を舐め、甘噛みしながら、見えない尻尾をフリフリと振っているのかもしれない。 淫らな行為に耽るというより、ふざけ合うような感覚で抱き合い、体を擦りつける。あっという間に布団の中に二人分の熱がこもる。 とうとう下着を脱がされてしまうと、身を起こしかけたものを千尋の手に握り込まれる。「先生、俺も」 甘い声でねだられた和彦は、千尋のスウェットパンツと下着をわずかに下ろし、引き出したものを柔らかく握る。血気盛んな千尋のものは、すでに熱くしなっていた。 互いのものを扱きながら、吸い寄せられるように唇を重ね、緩やかに舌を絡め合う。 和彦は、千尋のものの先端を指の腹で優しく撫でてやる。千尋の腰がビクビク震え、素直な反応が愛しかった。「――可愛いな、千尋」 和彦が柔らかな声で囁くと、お返しとばかりに、千尋に先端を爪の先で
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第13話(19)

 そうしている間にも、千尋の片手に尻を揉まれてから、指が秘裂に這わされた。頑なな窄まりでしかない内奥の入り口を、乾いた指で擦られ、反射的に和彦は腰を揺らす。「……ここ、舐めようか?」 ひそっと千尋に囁かれ、意識しないまま和彦の顔は熱くなる。「いい……。濡らして、くれたら――」 千尋は自分の指を舐めて唾液で濡らすと、すぐに和彦の内奥の入り口をまさぐり始める。布団の中で両足を大きく開いた格好で、和彦は千尋の愛撫を受け入れた。「なんか、親に内緒で悪いことしてる気分」 内奥に挿入した指を慎重に出し入れしながら、どこか楽しげな調子で千尋が言う。和彦は小さく声を洩らしながら、そんな千尋の肩にすがりつく。「いつも、悪いことばかりしてるのかと思った」「オヤジが家にいないときに、夜、こうして先生の布団に忍び込んで、エッチなことしてるなんて、いかにも悪いことしてるって感じじゃん」「……お前の感性はよくわからない」 和彦の発言への抗議のつもりか、千尋の指が付け根まで挿入され、内奥で蠢かされる。その愛撫で官能が刺激され、体が肉の悦びを欲しがる。「あっ、はあっ……」 内奥がひくつきながら、千尋の指を締め付けていた。襞と粘膜を撫で回され、円を描くように動く指によって内奥を解される。 顔を覗き込んできた千尋と啄ばむような軽いキスを交わしたあと、再び口腔深くに舌が差し込まれ、感じやすい粘膜を舐められる。 内奥への愛撫と、深い口づけが気持ちよかった。それに、布団の中での秘めやかな行為はなんだか新鮮だ。この家で何度も千尋と体を重ねているが、こういう状況は初めてだ。いまさら隠すようなことでもないのに、つい声を殺し、息を潜めてしまう。 我慢できなくなったのか、内奥から指を引き抜いた千尋が身じろぎ、代わって、熱くなったものを擦りつけてきた。「んうっ」 逞しいもので内奥をゆっくりと押し広げられ、和彦は喉を反らす。大きく息を吐き出した瞬間、腰を掴まれ、深く侵入される。苦しさと、襞と粘膜を強く擦り
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第13話(20)

 荒く息を吐き出した和彦は、子供を窘めるように千尋を睨みつけた。「……やっぱり、お前と組長は、性癖が特殊なんじゃないか」「それ知ってるの、先生だけだよね」 軽い口調で言われたが、本来は憂慮すべきことなのかもしれない。和彦が関係を持っている年上の男と年下の男は血が繋がった父子で、しかも、長嶺組組長と、その次期後継者だ。 普通の神経をしていれば、この状況は耐え難いだろう。だが和彦は、自分でも呆れるほどのしたたかさとしなやかさで、受け入れている。 もしくは、神経のどこかが壊れているのだ――。 和彦が身震いをして千尋の背に両腕を回すと、機嫌を取るように千尋の唇がこめかみや頬に押し当てられた。「先生は、親に内緒で悪いことしたことないの?」 問われると同時に、内奥深くを千尋のもので犯される。和彦は声を上げ、腰を揺らす。「突然の、質問だな……」「先生が、家や親のことを言われるの嫌いだって知ってる。ただ、なんとなく聞きたくなってさ。嫌なら、答えなくていいよ」 口ぶりからして、千尋も和彦の家族構成などは知っているのだろう。賢吾が行った、和彦への身元調査の精度がどれだけのものかは予測もつかないが、それでも、家庭の内情を探ることは不可能なはずだ。 なんといっても和彦の家庭は、〈完璧〉なのだ。 胸に広がりかけた冷たい感覚は、千尋のしなやかで力強い律動によって消されてしまう。和彦は悦びの声を上げ、千尋の肩に額をすり寄せる。「――……悪いことなら、したさ。だから、今のぼくがいる」「聞いてみたいな。先生がどんな悪いことをしたのか」「内緒だ。若いお前の自信を喪失させたら、悪いしな」 大げさに情けない顔をした千尋を、和彦は甘やかす。頭や背を撫で、耳元に熱い吐息を吹き込む。若い獣が疾走するように、千尋の律動が激しさを増し、脆くなった襞と粘膜を強く擦り上げられる。「ああっ、あっ、あっ、千、尋っ――」「いいよ、先生……。奥が、すごくヒクヒクしてる。ここも、ヒクヒクさ
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第13話(21)

** 軽く咳き込んだ和彦は、モゾリと身じろいで寝返りを打つ。うつ伏せとなって、布団から手を出してみると、肌に触れる空気はふんわりと温かい。 誰かが気を利かせて、客間のエアコンを入れてくれたようだ。おかげで、朝の身震いするような寒さは感じなくて済むが、その代わり、ひどく空気が乾燥している。 もう一度咳き込んだ和彦は、ようやく薄く目を開く。障子を通して、朝の柔らかな陽射しが室内に満ちていた。 緩慢にまばたきを繰り返しながら、どうして今朝は、体が心地いい充足感に満たされているのだろうかと考えてすぐに、小さく声を洩らす。布団に包まった体の体温が、わずかに上がったようだ。 昨夜は、千尋と体を重ねたあと、しばらく布団の中で睦み合っていたのだが、そのうち眠ってしまった。よほど眠りが深かったのか、千尋が布団を出たことすら気づかなかった。 千尋の寝顔を見ておきたかったなと心の中で呟いた和彦は、すでにいない青年の姿を思い返しながら、敷布団の上にてのひらを這わせる。 このとき、なんの前触れもなく布団を剥ぎ取られた。寝起きということもあり、反応が鈍くなっている和彦は、数秒の間、何が起こったのかわからなかった。そもそも、部屋に人がいることすら気づいていなかったのだ。「えっ……」 ようやく声を洩らしたとき、和彦は力強い腕によって腰を抱え上げられ、浴衣をたくし上げられた。下着は――つけていない。千尋との行為のあと、しどけなく絡み合っているうちに眠ったため、無防備な状態のままだった。「や、め――」 わけがわからないまま声を上げたときには、千尋を受け入れた余韻がまだ残っている内奥に、指らしきものが挿入されてきた。「あううっ」 本能的に体を強張らせて拒絶しようとしたが、柔らかく解れ、湿りを帯びた内奥は、異物をすんなりと呑み込んでしまう。 何かを確認したかっただけらしい。すぐに指は引き抜かれ、代わって押し当てられたのは、熱く硬い感触だった。和彦の内奥が、十分に欲望を受け入れられると判断したのだ。 混乱しながらも、なんとか前に逃れようと片手を伸ばしたが、内奥の入り口に擦りつけ
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第13話(22)

 もう、わかっていた。この場所で、こんなにも自分勝手で強引な行為ができる男を、和彦は一人しか知らない。そして和彦は、その男の〈オンナ〉なのだ。「……あんたは、獣かっ」 唸るように和彦が言葉を投げつけると、腰を抱え直され、突然の乱暴な行為に喘ぐ内奥を、容赦なく熱い欲望で押し広げられる。昨夜、千尋のもので強く愛されたばかりの襞と粘膜は、和彦自身の意識よりも早く、覚醒していた。「んあぁっ」 痺れるような肉の疼きが生まれ、一気に腰に広がり、背筋を這い上がってくる。寝起きには強烈すぎる感覚に、自分は夢を見ているのではないかとすら思った和彦だが、内奥への侵入が深くなるに伴い、再び疼きを認識した。「ひっ……、あっ、んんっ」 双丘を痛いほど割り開かれ、腰を突き上げられる。深く繋がっていく過程を見つめられているのだと思うと、苦しさよりも羞恥が上回る。しかし羞恥は和彦にとって、官能を刺激する媚薬だ。傲慢な腰使いに、すがるように和彦も動きを合わせてしまう。「――目が覚めたか、先生」 背後からかけられたバリトンの響きに、腰が疼いた。和彦は無意識に首を小さく横に振ったが、声を聞かせろと言わんばかりに一際大きく腰を突き上げられ、悲鳴を上げる。 これ以上なくしっかりと、賢吾と繋がった瞬間だった。 体の内から焼かれそうなほど熱い欲望の逞しさと力強さに、和彦はあっという間に従わされる。抵抗することはもう許されない。多淫な体は、大蛇にがっちりと押さえ込まれ、あとは肉の悦びを引きずり出されるだけだった。 簡単に結んでいた帯を解かれ、浴衣を脱がされる。このときになって、客間を温めてくれたのは賢吾だとわかった。和彦が寒さで体を強張らせることを、大蛇の化身のような男は望まなかったのだ。「俺が、むさ苦しい連中が揃ったじいさんのところから戻ってきたら、俺の息子と、俺のオンナが、温かな布団の中でヌクヌクと寝ているんだ。しかも、二人揃って無邪気な顔してな。……どうだ。少しは俺を労わってやろうって気になっただろ?」 笑いを含んだ声でそんなことを言いながら、賢吾の両手が体をまさぐ
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第13話(23)

 がっしりとした片腕で抱き締められながら、耳朶を甘噛みされて囁かれる。のろのろと和彦が振り返ると、優しく唇を吸われた。間近で賢吾の顔を見つめる。賢吾も、愉悦に目を細めながら、和彦を見ていた。「さっき、誰のことを『獣』と言ったんだ?」 からかうように賢吾に問われ、思わず和彦は睨みつける。「……寝ている人間に、朝から襲いかかる男のこと、だっ……」「それは、紳士的じゃねーな」 悪びれた様子もなく、澄ました顔で賢吾が応じる。この言動に腹が立つし悔しくもあるのだが、一方で、おかしくもある。「あんた、ぼくと千尋の寝顔を、わざわざ見に来たのか?」「どっちも、意味は違うが、俺にとっては可愛い存在だからな」「えっ……」 突然、ぐいっと抱き寄せられた和彦は、繋がったまま、あぐらをかいた賢吾の両足の間に座らされた。内奥を下から強く突き上げられ、ビクビクと腰が震える。「――ここをじっくり可愛がってやる」 和彦の肩に唇を押し当てながら、賢吾の片手が両足の間に差し込まれる。すでに反り返り、先端から悦びのしずくを垂らしているものを軽く扱いたあと、賢吾の手はさらに深くへと入り込んできた。「んうぅっ」 柔らかな膨らみをいきなりきつく揉みしだかれ、和彦は腰を浮かせて逃れようとしたが、太い杭を内奥深くに打ち込まれているような状態だ。実際は、賢吾の片腕の中で身悶えただけだった。「やっ……、そこ、嫌だっ……」「嫌か? 最近はここでよく感じるようになっただろ。それに尻が、引き絞るように締まってるぞ。遠慮するな、先生。腰が抜けるぐらい、感じさせてやる。いい寝顔を見せてくれたからな」 理屈はなんでもいいのだ。賢吾はこうやって、和彦をいたぶる――淫らに攻めるのが楽しいのだ。 巧みに指が蠢き、ゾクゾクするような感覚が込み上げてくる。弱みを弄られる怖さと、快感の塊を愛される悦びが混ざり合い、和彦を惑乱させる。「んんっ、あっ、あっ、はああっ」 強い快感に
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第13話(24)

** 怒っていることを隠そうとしない和彦を、賢吾は楽しげに眺めている。横目でちらりと一瞥するたびに、芝居がかったような下卑た笑みを向けてくるぐらいだ。それがまた、腹が立つ。 和彦はキッと賢吾を睨みつけてから、顔を思いきりウィンドーのほうに向けたが、馴れ馴れしく肩に腕が回され、半ば強引に抱き寄せられた。「先生、怒っているのか?」 耳元に顔が寄せられ、囁かれる。あごに手がかかると、力を込められるのが怖くて、結局和彦はまた、賢吾を見た。機嫌を取るように、優しく唇を吸われる。 ここが移動中の車の後部座席だということを、もちろん賢吾は気にしていない。運転席と助手席には組員たちが座っているが、完璧に存在感を消している。必要がない限り、振り返ることも、声をかけてくることもない。 彼らに賢吾とのやり取りを見聞きされることに、和彦はもう慣れていた。しかし、今日は別だ。つい三十分ほど前まで、自分と賢吾が何をしていたか、誰にも知られたくなかった。一応和彦にも、人間として最低限の慎みはあるのだ。「……頼むから、余計なことを言うな」 和彦が声を潜めて言うと、賢吾は嬉しそうに口元に笑みを刻む。この笑みがまた、性質が悪い。実に物騒に見えるのだ。「俺相手に、余計なことを言うなとは、大した度胸だな、先生」「度胸の問題じゃない。恥じらいの問題だっ」「恥じらい……。そそる言葉だな。特に、さっき俺の腕の中で――」 和彦は、慌てて賢吾の口を手で塞ぐ。それでも賢吾は、目を細めるようにして笑いかけてくる。ムキになる和彦の反応が、楽しくてたまらないらしい。 口を塞いだ手を除けられ、しっかりと賢吾の胸に抱き寄せられる。仕立てのいいダークスーツに包まれた体は、いつになく近寄りがたさを放っており、触れることにためらいを覚えるが、逆らえない。すっかり抵抗する気が失せた和彦は、おとなしく身を任せる。 ヤクザという人種が黒を身にまとったときの迫力は、圧倒的だ。静かな佇まいである分、底知れない闇を感じさせる。 本宅で、着替えた賢吾を見たとき、和彦はその迫力に呑まれ、すぐ
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