「お前に行動を予測されるなんて、自分が単純だと言われてるようで、軽くショックだ……」「ひでーよ、先生。俺こそ、どれだけ先生に単純だと思われてるんだよ」 たまらず声を洩らして笑った和彦は、並んでいるマフラーを指さす。「お前の予測だと、ぼくのマフラーを一緒に選ぶ、というのも入ってるのか?」 もちろん、と返事をした千尋が、率先してマフラーを取り上げ、和彦の首元に持ってくる。その状態で、側に置かれた鏡を覗き込んだ和彦は、今度こそ本気で驚いて目を見開く。反射的に振り返ると、そこには、さきほど別れたばかりの澤村が立っていた。 和彦以上に驚いた様子の澤村は、咄嗟に言葉が出ないのか、物言いたげな表情で千尋を指さした。和彦は慌ててマフラーを千尋に押し返し、澤村に歩み寄る。「どうかしたのか、澤村先生。女の子たちを待たせているんじゃないのか」 冗談交じりに言ったつもりだが、動揺して声が上擦ってしまい、ひどく不自然な話し方になってしまう。澤村はようやく我に返ったのか、ぎこちなく頭を動かした。「……えっ、ああ、そうなんだ、が――」 澤村の視線は、まっすぐ千尋に向けられる。千尋は困ったように頭を掻いたあと、人好きのする感じのいい笑顔を浮かべた。カフェでバイトしていた頃は、千尋はこの表情がトレードマークだったのだ。「お久しぶりですね、澤村先生」 千尋から屈託なく声をかけられ、澤村はうろたえた素振りを見せながら答えた。「あっ、えっと……、久しぶり。長嶺くん」 まるで助けを求めるように澤村から目配せされ、和彦も驚いている場合ではなくなる。 明らかに、和彦と千尋が一緒にいるのは不自然なのだ。澤村の同僚であった頃も、和彦たちは関係を隠しており、カフェで顔を合わせるときも、あくまで客と従業員として接していた。その後、和彦は逃げるようにクリニックを辞め、千尋もまた、カフェのバイトを辞めた。 時期は微妙にズレているが、澤村の前から姿を消した二人が、こうして一緒にいて親しげにしていれば、何かしら不審なものは感じるはずだ。「長嶺くんとは
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