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血と束縛と のすべてのチャプター: チャプター 851 - チャプター 860

925 チャプター

第23話(8)

 中嶋から聞いた内容を、秦は艶然とした笑みを浮かべながら賢吾に報告しただろう。いや、それ以前に、すでに中嶋から賢吾へと報告済みかもしれない。 和彦が関係を持つ男たちは、和彦の情報を当然のように共有するのだ。情も利害も絡んだ、妖しいネットワークだ。「……ぼくは、彼に感謝しないとな。気分が塞ぎ込みそうになっていたところを、助けてもらった」「セックスして先生に感謝されるなんて、羨ましい立場だ」 秦が楽しげに洩らした言葉に素早く和彦は反応し、慌てて周囲を見回した。「それで……、ぼくに渡したいものってなんだ」 ああ、と声を洩らした秦は、隣のイスに置いた小さな紙袋を差し出してきた。「出張のお土産で、香水です。なんとなく先生に合いそうだと思って。嫌な香りでなかったら、仕事が休みの日にでも使ってください」「ありがとう……」 紙袋を受け取った和彦は、香水の香り以上に、秦がどんな仕事で、どこに出かけていたのかが気になる。ちらりと視線を向けると、秦は秘密をたっぷり含んだ艶やかな笑みを返してくる。その表情を見ただけで、和彦が何を尋ねても、『出張』について答える気がないとわかった。 ランチが運ばれてきたところで、腕時計で時間を確認する。秦とのおしゃべりを楽しみながら、優雅に食事ができるほどの余裕はあまりない。「――お土産を渡すためだけに、わざわざ来てくれたのか?」 食事をしつつ和彦が率直に疑問をぶつけると、秦は首を横に振った。「中嶋と話していて、なんとなく決まったことなんですが、せっかくなので先生も誘おうという話になったんです」「何を……」 つい反射的に警戒してみせると、楽しそうに秦は口元を緩める。「三人で、花見をしませんか。とはいっても、人ごみの中でにぎやかに飲むわけではなくて、ビルから夜桜を見下ろしながら、という形になりますが」「花見、か」 昨夜千尋から聞かされた、総和会の花見会のことが頭に浮かぶ。暖かくなってきて、物騒な男たちが精力的に動き始めたような気がし
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第23話(9)

**** 袖を通した長襦袢の前を合わせると、すかさず背後から回された手が衿端を持ち、たるみを調整してくれる。「さすがに、千尋が高校生のときにあつらえたものだから、先生には少し寸足らずか。が、思っていたより不恰好じゃない」 ぴったりと背後に立っている賢吾の言葉に、耳元をくすぐられる。和彦は反射的に首をすくめ、その拍子に、姿見に映る自分と目が合った。 先月足を運んだ呉服屋でも体験したが、着物を身につける自分の姿を鏡で見るというのは、なんとも照れくさくて、気恥ずかしい。 そんな和彦を、賢吾が妙にまじめな顔で見つめていた。こちらはすでに端然とした着物姿で、さきほどから熱心に着付けを指導してくれている。だから和彦も、逃げ出したい気持ちを堪えられた。 クリニックからの帰りに呼びつけられて本宅に寄り、一緒に夕食をとったあと、和室に連れ込まれた。そのときにはすでに、着付けの練習用の着物が一揃い用意されており、ようやく和彦は、自分が本宅に呼ばれた理由を理解したのだ。「今日は長襦袢の下はTシャツだが、外出するときは、きちんと肌襦袢を身につけるんだ。それに、裾よけも。いかにも品のいい先生が、きちんと着物を着こなしていたら、今以上に色男っぷりが上がるぞ」 そんなことを言いながら、賢吾は腰紐を差し出してくる。受け取った和彦は、いつも賢吾がしているように結んでみる。「上手いもんだ、先生」「……紐を結ぶぐらい、初心者のぼくでもできる」「俺は、褒めて伸ばす男なんだ」 和彦が顔をしかめるのとは対照的に、賢吾はニヤニヤと笑いながら、今度は長着を肩にかけてきた。袖に手を通すと、賢吾が肩をてのひらで撫でたあと、袖先を軽く引っ張り、たるみが出ないよう整えてくれる。 長襦袢の衿に重ねるように、長着の衿を合わせる。すかさず賢吾が身幅の余りを丁寧に始末して、不恰好にならないよう上前で隠す方法を説明してくれた。「なんだか、複雑だ。あんたはいつも簡単に着付けているから、そういうものなのかと思っていた」 思わず和彦がぼやくと、前触れもなく賢吾の手が、上前の下
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第23話(10)

 そんなことを言って、賢吾が強引に唇を吸ってくる。軽く抵抗した和彦だが、すぐに諦めて賢吾の肩に手を置く。慣れない着物を身につけているせいか、新鮮な感覚だった。帯で体を拘束されているようでありながら、腰から下は無防備だ。その無防備な感覚を煽るように、賢吾が膝で両足の間を割り開こうとしてくる。「先生を着物姿で外に出すときは、貞操帯をつけるか。どんな男が股に手を突っ込んで、こうして、ここを弄ってくるかわかったもんじゃねーからな」 まんざら冗談とも思えないことを呟いた賢吾の手が、着物の裾を割り、奥に入り込んでこようとする。和彦は手を押しのけながら抗議の声を上げる。「何してるんだ、あんたはっ……」「股割りだ。これをしておかないと、歩きにくいぞ」「だったら自分でやるっ」「遠慮するな」 両足の間を賢吾の手にまさぐられ、和彦は腰を震わせる。下着の上から思わせぶりに敏感なものを撫でられて、咄嗟に賢吾の肩にすがりついていた。「ほら、もっと足を開け、先生」 下着をわずかに引きおろして、賢吾が揶揄するように囁いてくる。間近から賢吾を睨みつけた和彦だが、まるで蛇が絡みつくように蠢く指の動きには逆らえず、おずおずと足を開いた。「あっ」 賢吾の手にしっかりと、欲望を握り締められる。この瞬間、本能的に怖いと感じた。賢吾が、今のこの状況で自分を痛めつけてくるはずがないとわかってはいるのだ。これは、和彦自身が抱える罪悪感の裏返しだ。賢吾が何事もないように振る舞えば振る舞うほど、和彦は罪悪感に追い詰められる。 握られたものを手荒く扱かれて足元が乱れる。単なる戯れではなく、賢吾は本気で自分を貪ろうとしていると知り、和彦は羞恥を押し殺して訴えた。「――……今日は、無理だ。体がつらいんだ」「なんだ。別の男と楽しんだばかりなのか?」 大蛇の潜む目が、じっとこちらを見据えてくる。和彦が口ごもると、賢吾がスッと視線を動かし、部屋の柱を見た。このとき和彦の脳裏に、ある光景が蘇る。 前に一度この部屋で、千尋の母親の長襦袢を羽織らされ、柱に掴まった姿勢で内奥を犯されたこと
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第23話(11)

 賢吾の言葉に含まれているのは、甘い毒だ。『独占欲』という単語にピクリと肩を揺らして、和彦は顔を上げる。楽しげに口元に笑みを刻んでいる賢吾だが、目はまったく笑っていない。それどころか、和彦の何もかもを暴こうとするかのように鋭い。 昨夜の千尋同様、ある人物の存在を気にかけているのだろうか。それとも――。 守光の顔に続いて、里見の顔が脳裏に浮かび、和彦はヒヤリとするような感覚を味わう。今この瞬間、思考のすべてを賢吾に覗かれていたらと、ありえないことを考えていた。「……長嶺の男の独占欲は、物騒だ。前までのぼくなら、そういうのが疎ましくて、すぐに逃げ出していただろうな」「先生は正直だ。自分を囲っている男の前で、そういうことを言うなんて」「ぼくが何を言ったところで、逃がす気なんてないだろうし、逃がさない自信もあるんだろ」「さあ、どうだろうな」 さらりと応じた賢吾の口調から、それが本音なのかどうか判断することはできない。ただ、賢吾が自分に向ける強い執着を、和彦はしっかりと感じ取っていた。必要とあれば、この男はきっとなんでもするはずだ。 感じた恐怖に小さく身震いした和彦だが、同時に、抗いがたい欲望の疼きも自覚していた。 和彦は、手の中で逞しく脈打つ賢吾のものを撫でてから、眩暈がするような感情の渦に襲われる。欠片ほどは残っていた理性を手放し、おずおずとその場に跪いた。「――……昨夜は、千尋をたっぷり甘やかしたようだな、先生。俺に、同じことをしてくれるのか?」 和彦は、頭上からそんな言葉を投げかけてきた賢吾を睨みつけはしたものの、賢吾が着物の合間から露わにしたものは拒まなかった。 自らの手で成長させた賢吾の欲望に顔を寄せ、舌を這わせる。昨夜千尋にしたように尽くしてやる。なんといっても和彦は、この男の〈オンナ〉だ。 片手で賢吾のものを扱きながら、先端に唇を押し当てる。柔らかく吸い上げ、舌先でくすぐり、括れまで口腔に含んでから、唇で締め付ける。「焦らすのが上手いな。できることなら、このまま畳の上に這わせて、後ろから尻を犯したくなる」 露骨な賢吾の言葉
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第23話(12)

 狂おしい欲情に突き動かされて、情熱的な愛撫を施す。すぐに、自分自身の反応したものも気になり、着物の下に片手を忍び込ませた和彦は、賢吾の視線を気にかけつつも、自らの欲望も慰め始める。「大胆なのか、慎ましやかなのか、わからねーな、今のその姿は」 そう言って賢吾に優しい手つきで髪を撫でられたあと、口腔深くまで硬く張り詰めたものを突き込まれる。和彦は低く呻きはしたものの、ギリギリのところで吐き気を堪える。 和彦の献身ぶりに満足したのか、賢吾はそれ以上手荒なことをせず、大きく息を吐き出してから、思いがけない話題を振ってきた。「――オヤジが、総和会の花見会に先生を招待すると言い出した」 驚いた和彦は一度動きを止めたが、すぐに賢吾のものを締め付けるように吸引する。「俺としては、先生をあんな目立つ場に連れて行く気はなかったし、もし、先生同行でと言われた場合は、長嶺組の身内として連れていくのが筋だと考えていた。……まったく、面倒なことを言い出したものだ、総和会会長は」 いろいろと言いたいことはあったが、賢吾のものを口腔に含んでいる状態ではそれも叶わない。それに賢吾のほうも、和彦の返事は求めていない様子だ。「毎年顔を出している行事だが、総和会の威光を一方的に見せつけられているようで、どうも俺は苦手だ。日陰者のヤクザが大勢つるんで、明るい陽の下で花見なんざ、大胆すぎて空恐ろしくなる」 獰猛ながら、警戒心が強くて慎重でもある大蛇は、物陰に身を潜めているのが似合っている。賢吾は言外に、自らのことをそう言っているようだ。 話しながらも賢吾のものはますます熱く、大きくなっていく。限界が近いことを察した和彦は、欲望の根元を指で擦りながら、ゆっくりと頭を動かす。「……俺は、自分のオンナを見せびらかすつもりはなかったが、オヤジは違ったようだ。この色男が自分のオンナだと、周知させるつもりだろうな。なんといっても、長嶺の男三人で共有している、特別なオンナだ」 賢吾の息遣いがわずかに弾む。後頭部を押さえつけられた和彦は、思わず目を閉じ、口腔で欲望が爆ぜる瞬間を迎えた。迸った熱い精を受け止め、すぐに喉に流
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第23話(13)

** 長嶺の本宅から戻った和彦は、ゆっくりと風呂に浸かったあとも、体に残る気だるさを持て余していた。今晩は賢吾と体を重ねなかったが、自ら進んで淫らな行為に及んだのだ。身の内で荒れ狂った欲情は、セックスのそれと変わらない。 この気だるさは、激しい欲情に身を任せた代償だと、コーヒーを一口啜った和彦はため息をつく。 書斎に入り、簡単な書類仕事を片付けたものの、なんとなく手持ち無沙汰で落ち着かない。ソファで寛ぎながらテレビを観てもいいし、寝室のベッドに転がって本を読んでもいいのだが、そういう気分でもなかった。 厄介事が片付かないまま、どんどん積み重なっていくようで、少しでも思考を働かせていないと不安なのかもしれない。 里見のこと、守光との関係、そして、状況が理解できないまま出席することになった総和会の花見会と、どれも和彦にとっては重要な事案ばかりだ。 今晩、賢吾が言っていたことが引っかかっていた。 総和会に属する十一の組だけでなく、総和会に関わる外部の組織の人間たちも集まるという場で、特殊な立場にいる和彦が物見遊山のためだけにのこのこと出かけられるはずもなく、また、それが許されるとも思えない。 場に華を添えるために必要なのは、あくまで〈女〉だ。だったら、〈オンナ〉が必要とされる理由は、と考えてしまう。邪推で済めばいいが、和彦を花見会に呼びたがっているのは守光だ。裏がないとは言い切れない。 もっとも、どんな企みがあるにせよ、和彦に逆らう術はない。ただ力に身を委ねるだけだ。 和彦はコーヒーを飲み干すと、カップを手に立ち上がる。書斎を出ようとしたところで、デスクの上に置いた携帯電話が鳴った。慌ててデスクに戻って携帯電話を取り上げたが、次の瞬間、和彦は意識しないまま顔をしかめていた。電話の相手は、鷹津だった。「――……こんな時間になんだ」 不機嫌さを隠しもせずに電話に出ると、鷹津が癇に障る笑い声を洩らす。『こちらの予想通りの応対だな』「ぼくをからかうためにかけてきたんなら、切るぞ」『今、マンションにいるのか?』「…&helli
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第23話(14)

 気取った言い方をするほどのことでもないだろうと、心の中で呟いた和彦は、眉をひそめてウィンドーのほうを向く。すると、唐突に鷹津が話し始めた。「――県警には、毎年この時期に恒例行事になっていることがある。ある集会を監視するために特別対策室が設けられて、俺のいる課だけじゃなく、県警の管区機動隊に大号令がかかるんだ。暴力団撲滅を謳ってな」 鷹津が何を言おうとしているか察し、数秒の間を置いて和彦は応じる。「総和会が催す、花見会のことか?」「やっぱり知ってやがったな」「教えてもらったのは最近だ。……それで、聞きたいことというのは……」「万が一にも、お前が出席するのか気になってな。さすがに長嶺が、自分の弱みにもなりかねないオンナを伴って、大物ヤクザが勢揃いする場に出かけるほどマヌケとも思えんが――どうなんだ?」 鷹津はこれでも警察の人間だ。本来であれば、長嶺組や総和会にとって敵ともいえる人間だ。現在も、決して賢吾たちに対して友好的というわけではなく、妙な成り行きから、あくまで和彦の〈番犬〉としてつき合っているのだ。 こちら側の情報を、賢吾に相談もなく与えていいものだろうか。和彦がそう逡巡していると、こちらを一瞥した鷹津は鼻先で笑った。「その様子だと、出席するみたいだな。あの長嶺が、色ボケして迂闊な判断をしたと取るべきか、何か企みがあるのか……」「――組長が決めたんじゃない」 頭で考えるより先に、言葉が口をついて出る。「長嶺組長は、ぼくを花見会に連れて行く気はなかったし、もちろんぼくは、自分が出席するなんて考えもしなかった。でも、やむをえない事情ができたんだ」 鷹津が、賢吾を蔑むような発言をしたことが、なぜかいまさら気に障った。いや、単に、鷹津の誤解を訂正したかっただけだったのかもしれない。とにかくこのときの和彦は、鷹津相手の駆け引きを忘れていた。 鷹津は前を見据えたまま、冴えた表情を浮かべる。通りすぎる車のライトを受けて、サソリにも例えられる下卑た嫌な男は、精悍で有能な刑事に見えた。「…&helli
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第23話(15)

 そうしているうちに車は、薄暗く人気のない小さな公園の側を通りかかり、駐車場に入った。エンジンを切った鷹津が口を開く。「――グローブボックスを開けてみろ」「えっ?」「必要ないなら捨てようと思っていたが、そうもいかないようだからな。持って帰って、長嶺に見せてみろ。あいつなら、お前のために手を回してくれるはずだ」 そこまで言われて和彦は正面のグローブボックスを開けてみる。普段から整理していないのか、さまざまなものを押し込んであり、一番上に大判の封筒が窮屈そうに入っていた。 鷹津に言われるまま封筒を取り出し、和彦は首を傾げる。「これは……?」「花見会は、毎年同じ場所で催される。これは、総和会と県警との取り決めのようなものだ。総和会は、なんとしても行事を行いたいし、県警としても、毎年場所を変更されて、そのたびに警備を見直す時間も予算もかけられない。そういう理由もあって、互いに威嚇し合いながらも、大きなトラブルを起こさずにやってきた。だけど今年は少し様子が違う」 そこまで言って鷹津は、封筒を指先で軽く弾いた。「今年の県警は、気合いが入っているぞ。厳戒態勢を敷くと、うちの課長が息巻いている。その手始めに、警官の動員数を増やすそうだ。――例年、大物幹部は、あらかじめ知らされている警備の手薄な場所から、花見の会場に入っている。そうやって、警察との接触を避けてきた。警察とヤクザとの癒着……と言うなよ。下手に職質をかけると、護衛についている組員たちが興奮して、手がつけられなくなるんだ。そんな事態を避けるための、苦渋の決断だ。表向きは」「その口ぶりだと、今年は大物だろうが容赦しない、ということか」「所持品検査ぐらいはさせてもらうつもりだ。拒めば、のん気に花見なんぞできない状況に追い込む」 それは困る、と和彦は心の中で呟く。物騒なものを持ち歩く必要のない和彦自身は、所持品を調べられるぐらいはかまわないが、それと同時にまず確実に行われるのは、身元照会だろう。医師という肩書きのため、医師会に問い合わせでもされたら、現在は何をしているか追及されるのは目に見えている。「こういう状況に
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第23話(16)

 封筒をダッシュボードの上に放り出し、二人分のシートベルトを素早く外した鷹津に、当然の権利のように乱暴に頭を引き寄せられる。和彦が目を見開いたときには、熱い唇が重なってきた。「んんっ」 痛いほど強く唇を吸われながら、Tシャツの下に無遠慮な手が入り込んでくる。鷹津が何を求めているのかは明白で、和彦はシートの上で抵抗しようとするが、鷹津がものともせずに強引な口づけを続ける。 胸元をまさぐられ、指先に突起を探り当てられる。執拗に指の腹で擦られて喉の奥から声を洩らすと、鷹津に後ろ髪を掴まれて、口腔に舌を捻じ込まれた。吐き気を覚えたのはわずかな間で、和彦の背筋を、馴染み深い感覚が駆け上がってきた。 征服の手始めのように、鷹津が口腔に唾液を流し込んでくる。最初は嫌がった和彦だが、いやらしく口腔の粘膜を舐め回されているうちに、コクリと喉を鳴らして受け入れていた。 Tシャツを押し上げられて、硬く凝った胸の突起をてのひらで捏ねるように愛撫される。そして、口づけの合間に囁かれた。「……お前のために働いてやったんだ。今すぐ抱かせろ」 和彦は熱い吐息をこぼし、それすら惜しむように鷹津に唇を吸われる。その間にも鷹津の片手が、胸元から両足の間へと下りていた。数時間前に賢吾の愛撫を受けたばかりだというのに、和彦の体は反応したがっている。「今日は、ダメだ――……」 答えた途端、それでなくても鋭い鷹津の眼差しが殺気を帯びる。「ヤクザのオンナが、偉くなったもんだな。刑事を使っておいて、礼もなしか? このまま無理やり、お前の尻に突っ込んでもいいんだぞ」「体がつらいんだっ。昨日……だったから。だから今日は、組長の誘いも断った」 我ながら嫌になるが、鷹津にとってどの話題が効果的か、和彦は把握している。賢吾だ。一方の鷹津も、和彦がどんな意図から賢吾の名を出したか把握しており、忌々しげにこう洩らした。「性質の悪いオンナだ。――昨日は誰に抱かれたんだ」「あんたに……関係ない」 そしてまた、和彦は唇を塞がれる。舌を引き出さ
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第23話(17)

「……何様だ、あんた……」「お前の番犬だ。餌欲しさに、お前のためだけに働いている」 その言葉を受けて、差し出した舌を大胆に絡め合う。明け透けな欲情を見せ付けられて、和彦も興奮していた。狭い車内で、シートから身を乗り出す不自由な姿勢で口づけを交わし、互いのものを愛撫し合っていると、もどかしさが媚薬となる。 和彦は片手を鷹津の肩にかけていたが、車内の空気が淫靡さを増してくると、無精ひげの生えた頬にてのひらを押し当てるようになっていた。鷹津はピクリと肩を揺らし、食い入るように間近から和彦を見つめてくる。いまさら鷹津の眼差しの強さに気恥ずかしさを覚え、和彦は視線を伏せる。すると鷹津が、誘われるように目元に濡れた唇を押し当ててきた。「残念だ。お前がその気になっている今みたいなときこそ、思うさま尻を犯してやりたいのに」「誰が、その気なんて――」 鷹津の指に強く先端を擦り上げられ、たまらず和彦は呻き声を洩らす。和彦のものは熱く脈打ち、先端から透明なしずくを垂らしているが、それは鷹津のものも同じだ。ふてぶてしく息づき、和彦の手を濡らしている。 声に出してタイミングを計る必要もなかった。鷹津の愛撫の手が速くなり、つられて和彦も握ったものを強く扱き上げる。「あっ、あっ」 たまらず和彦が声を上げ始めると、唇にかかる鷹津の息遣いも荒くなってくる。「イけよ、佐伯。イク瞬間の顔をたっぷり拝んでやるから」 言い返したくて仕方なかったが、その余裕はもう和彦にはなかった。ぐっと奥歯を噛み締めて、腰を震わせる。閉じた瞼の裏で閃光が走り、快感の塊が背筋を滑り落ちた。そして、鷹津の手の中で精を迸らせていた。「は、あぁ……」 詰めていた息を吐き出すと、すかさず鷹津に言われる。「俺のも最後まで面倒見てくれよ」 半ば意地のように和彦は、握り込んだ脈打つものを手荒く扱き、自分がされたように鷹津の精をてのひらで受け止める。ビクビクとてのひらの中で震える鷹津のものが生々しい。まだ、硬く熱いのだ。 この時点で和彦は、精を放ったばかりだというの
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