หน้าหลัก / BL / 血と束縛と / บทที่ 861 - บทที่ 870

บททั้งหมดของ 血と束縛と: บทที่ 861 - บทที่ 870

925

第23話(18)

**** さきほどから地図を眺めて、賢吾はひどく楽しそうだった。食えない男のその表情を、キッチンから缶ビールとグラスを取って戻ってきた和彦は、興味深く観察する。「――何か言いたそうだな、先生」 地図からちらりと視線を上げ、賢吾が口を開く。油断ならない男だと、いまさらなことを実感しつつ、和彦は賢吾の隣に座った。 グラスにビールを注いでやってから、一緒に地図を覗き込む。鷹津の乱雑な字がびっしりと書き込まれた地図は、執念のようなものが滲み出ているようだった。 鷹津は、表向きは暴力団組織――長嶺組を憎悪する悪徳刑事を演じている。事実、憎悪はしているのだろうが、長嶺組組長のオンナである和彦と関係を持ち、結果として長嶺組に情報を流している。 鷹津という男の屈折した感情を、この地図の存在はよく表しているのかもしれない。「さっきから、地図を眺めて楽しそうだな」 和彦の言葉に、賢吾は目元を和らげる。「先生が、ヤクザの組長のオンナらしい仕事をしたと思ってな。悪徳刑事を手玉に取って、自分の身を守るための情報を取ってきた」「……人聞きが悪い」「そうだな。鷹津が勝手に先生を気遣って、気を回した結果だ。先生は鷹津に何も頼んでいないし、媚びてもいない。手玉に取るなんて、失礼な言い方だった」「その言い方も――」 気に障る。心の中で洩らした和彦は、窓の外に目を向ける。すでに日は落ち、外は暗い。 本当であれば今日は、クリニックが終わってから弁当でも買って帰り、部屋で一人ゆっくりと過ごすつもりだったのだ。ところが夕方になって賢吾から連絡が入ったことで、和彦のささやかな予定は狂った。 外で待ち合わせて一緒に夕食をとったあと、少し部屋で寛がせてくれと賢吾に言われては、拒めるはずもない。 和彦はソファに深くもたれかかり、グラスに口をつけつつ相変わらず地図を見ている賢吾に視線を戻す。「その地図、役に立つのか?」「先生にとってはな。むしろ重要なのは、鷹津が話した内容だ。本当に、暴力団担当係の有能な刑事と〈仲良く〉なっ
อ่านเพิ่มเติม

第23話(19)

「正直、総和会のような組織を束ねている人が、男の……愛人の存在を明らかにしたところで、マイナスイメージにしかならないと思うんだが」「何も、先生を愛人として紹介して回るわけじゃない。ただ、総和会会長にとって大事な存在だと、知らしめるだけだ。それにこの世界、男気に惚れた腫れたは珍しくない。それが過ぎて〈契り〉を結ぶ奴らもいる。もちろん、男同士のそういう関係に抵抗のある連中もいるが、それもひっくるめて、この世界じゃ馴染んでいる慣習の一つだ。先生のように、堅気だったにもかかわらず、物騒な男たちがオンナにしちまう場合もあるしな」「……ぼくは、男気なんて欠片も持ち合わせてないぞ」 ぼそぼそと和彦が反論すると、賢吾にあごを掴み上げられる。ニヤニヤと笑って言われた。「下手なヤクザより、よほど肝が据わってるじゃねーか、先生は」 和彦は眉をひそめると、あごを掴む賢吾の手を押しのける。缶に残っているビールを呷ると、短く息を吐き出した。「開き直ってるだけだ。――ぼく個人に、捨てるものはないしな」「そう言うな。そんな先生を、大事に大事に想っている〈男たち〉が悲しむぞ」 ヤクザが白々しいことを言うなと、内心強気に思ってはみたものの、意識しないまま和彦の頬は熱くなってくる。 どんな思惑があるのだろうかと、冴え冴えとした大蛇の目を覗き込んだが、柔らかい微笑を浮かべた賢吾からは、何も読み取れない。 和彦はテーブルに缶を置き、再び賢吾に肩を抱き寄せられるまま、体を預けた。「――……花見会には出席するが、警察から職質を受けるような事態だけは避けたい。身元照会をされて、佐伯和彦という人間が総和会や長嶺組に守られていると知られたくないんだ」 保身のための要望に、和彦のどんな想いが込められているか、さすがに賢吾は正確に読み取ってくれた。「先生が、ただの医者だったなら、そこまで神経質になる必要はないんだ。身を持ち崩して、医師免許を剥奪される医者は、世の中には何人もいる。そういう医者は、こちらの世界じゃ使い勝手がよくて、大事にされる。ただ先生の場合、医者の肩書き云々だけじ
อ่านเพิ่มเติม

第23話(20)

 パッと頭を上げた和彦は、瞬きも忘れて賢吾の顔を凝視する。防衛本能というべきか、賢吾の今の発言は冗談だと、咄嗟に和彦は判断した。本気にしてしまう自分自身を恐れたためだ。 どんな言葉をかけられるより賢吾の提案は優しいと感じ、同時に、どんな打算が含まれているのだろうかとも勘繰ってしまう。和彦と賢吾の関係で、これは仕方のないことだった。「そんなことをしたら、ぼくは一生、長嶺の男から離れられないな……」「なんだ、離れるつもりなのか?」 じっと身を潜めていた大蛇が、ふいに鎌首をもたげてチロリとした舌を覗かせる。そんなイメージが和彦の脳裏を過ぎり、つい顔が強張る。 賢吾の優しさは、怖い。和彦はさりげなく体を離そうとしたが、しっかりと肩を掴まれて動けなくなる。間近で賢吾と目が合ったそのとき、前触れもなくインターホンが鳴った。この時間の訪問者は限られている。心当たりがあるうちの一人は、すでにもう和彦の目の前にいる。そうなると、考えられるのはもう一人しかいない。 無視するわけにもいかずインターホンに出ると、案の定画面には、犬っころ――ではなく、千尋の姿が映っていた。「どうしたんだ、千尋。お前また、酔ってるんじゃ……」 応対しつつ和彦は、リビングの様子をうかがう。 気まぐれにマンションに立ち寄ることが多い賢吾と千尋だが、護衛の組員たちが互いの行動をしっかり把握しているため、この部屋で父子が〈たまたま〉顔を合わせることはない。つまり今のこの事態は、どちらかが意図したものだということだ。『今日は素面。先生にケーキ買ってきたんだ。一緒に食おうと思ってさ』「……それはありがたいが、今はお前の父親が来ているぞ」 口にして改めて、和彦は自分が置かれた境遇について複雑な想いを抱える。与えられた部屋に二人の男を招き入れているが、その二人が父子なのだ。そして、和彦を含めた三人が、この奇妙な関係を受け入れている。『知ってる。……本当は今日は俺が、先生と一緒にメシ食うつもりだったのに、俺が連絡するより先に、オヤジがさっさと先生をメシに連れ
อ่านเพิ่มเติม

第23話(21)

 油断ならない千尋はさりげなさを装いながら、カウンターを回り込んで、いつの間にか和彦の隣に移動してくる。あまり近づくなと、千尋を押しのけようとする和彦に、賢吾から声をかけてきた。「色男がキッチンに立っているだけで様になるんだから、得だな。先生」「……うるさい父子だな。ぼくの分しかコーヒーを淹れないぞ」 逃げるようにキッチンの奥に行き、ケトルを持ってカウンターに戻ると、ダイニングから賢吾の姿が消えていた。千尋を見ると、ドアのほうを指さす。「携帯が鳴ったから、廊下で話してる」「ぼくなんかよりよほど忙しいのに、わざわざここに来なくてもよかったんだ」 鍋敷きの上にケトルを置いた和彦は、ケーキの箱を覗き込む。一体何人で食べるつもりだったのか、十個のケーキが窮屈そうに並んでいる。どれも美味しそうだ。チョコレートケーキを選んで皿にのせると、さりげなく千尋が身を寄せてきた。「で、オヤジ、ただ先生とイチャつきたくて、ここに来たわけ?」「……ぼくが鷹津から渡されたものを、取りにきたんだ」「何それ」 鷹津の名を出した途端、千尋は露骨に顔をしかめた。和彦はあえて気づかないふりをして説明する。「花見会の会場周辺の警備について、詳しく書き込んである地図。本当は、クリニックへの送り迎えをしてくれている組員に預けてもよかったんだが、お前の父親が、直接ここに取りに行くといって聞かなかったんだ」「……花見会のことで、先生が刑事から地図を渡されて、しかも総和会がバタバタしているってことは、もしかして――」 千尋から物言いたげな視線を向けられ、慌てた和彦は弁解めいたことを口にする。「ぼくのせいじゃないからなっ。確かに、鷹津から聞いた話をお前の父親に話した。ただ、それで総和会がどう動くかなんて、わかるはずがないだろっ」「そうムキにならないでよ。ちょっとからかっただけなんだから」 楽しげに笑った千尋が、和彦の肩にあごをのせてくる。ふいに、耳元で囁かれた。「オヤジがわざわざここまで来た本当の目的って、先生と鷹津のことを探る
อ่านเพิ่มเติม

第23話(22)

 ハッとしたときには、掴まれたあごを持ち上げられるようにして、半ば強引に振り向かされる。いつの間にか無表情の賢吾が立っており、有無を言わせず和彦の唇を塞いできた。傲慢な舌が口腔に入り込み、千尋に味わい尽くされたばかりの粘膜をまさぐりながら、唾液を流し込んできた。 平気で和彦を共有しながらも、この父子は競い合っている。 引き出した和彦の舌を、賢吾が濡れた音を立てながら吸い、千尋には、首筋をねっとりと舐め上げられる。どちらのものとも知れない手がセーターの下に入り込み、肌を撫でてくる。身震いしたくなるような疼きが生まれ、和彦は喉の奥から声を洩らしていた。その声を呑み込んだのは、賢吾との口づけに割り込んできた千尋だ。 差し出した舌を卑猥に絡め合っていると、今度は賢吾に首筋を舐め上げられ、耳をたっぷり舐られる。 高揚感に意識が飛びそうになる。和彦の足元はふらつくが、二人の男にしっかりと支えられているため、座り込むこともできない。「もっ……、いい加減に、しろ……」 名残惜しそうに唇を啄ばんでくる千尋の顔を押し返し、ついでに賢吾の腕の中からも逃れる。今になって照れ臭くなった和彦は、濡れた唇を手の甲で乱暴に拭った。「……でかい動物二頭にじゃれつかれているみたいだ」 非難がましい視線を父子に向けて洩らすと、二人はよく似た笑みを浮かべた。そして、和彦の予想を外さない発言をした。「情が湧いて仕方ないだろ?」「ぼくがなんと答えたら満足なんだ」「――さっきの俺の提案を、いつか真剣に考えてもいい、と」 和彦がスッと表情を消すと、その変化を目の当たりにした千尋が目を丸くする。しかしすぐに、興味津々といった様子で問いかけてきた。「なんのこと?」「俺と先生の秘密だ」 そう賢吾が答えると、千尋と顔を見合わせてから和彦は大きくため息をついた。「さっき、ぼくと千尋の話を聞いてたんだろ……」「さあ、なんのことだ」 露骨に賢吾がとぼける。ムキになって問い詰めたところで、千尋と恥知ら
อ่านเพิ่มเติม

第23話(23)

 里見に連絡をするのは最初で最後だと心に決めていたが、事情は変わった。今の生活を守るために、という綺麗事を言うつもりはない。自分の身の安寧のために和彦は、里見を利用することにした。 もしかすると、この理由すら建前で、賢吾に隠れて里見と連絡を取る理由を欲しているだけなのかもしれないが、和彦の中で、感情はあくまで混沌としている。だからこそ、直感で動いたのだ。 記憶を辿りながら番号を押した途端、心臓の鼓動が速くなる。 呼び出し音の回数を数えるまでもなく、里見はすぐに電話に出た。『――公衆電話という表示を見た瞬間、胸がときめいたよ』 開口一番の里見の言葉に、緊張で顔を強張らせていた和彦はつい笑ってしまう。「電源を切られなくてよかったよ」『そんなこと……するはずないだろう』 わずかな間沈黙が訪れたが、気を取り直したように里見が提案してきた。『君が住んでいるところは、ネット環境は整ってないのか? ネットが使えるなら、いくらでもやり取りの手段はある。少なくとも、連絡のたびに公衆電話まで行かなくていいから、楽なはずだ。それに履歴を消せば、君がネットでどこを見ていたかも特定されにくい』「パソコンを持っていて、ネットにも繋いであるけど――……、手軽すぎて、怖いな。里見さんと連絡を取り合うことに緊張感がなくなりそうで」 さすがに賢吾も、和彦が個人で使っているパソコンまでチェックはしていないようだが、だからといって今後もそうだとは限らない。隙を見せた瞬間が危ないのだ。『その口ぶりだと、無理ということかな』「……残念だけど、そうだよ」『だけど、こうしてわたしに電話をくれたということは、よほど話したいことがある?』 里見の口調はあくまで穏やかだが、見えない刃を喉元に突きつけられたような圧迫感を覚え、和彦は口ごもる。これは多分、里見を利用しようとしている和彦自身が抱えた罪悪感の表れだろう。「どうしても、佐伯家の様子が気になるんだ。いままで、ぼくに無関心でいてくれたのに、急に実家に顔を出せと言うなんて。兄さんが国政出馬を
อ่านเพิ่มเติม

第23話(24)

**** ようやく六分咲きといった桜は、この場に集まった男たちの発する鋭い空気に当てられ、自ら存在を消そうとしているのではないか。 細い小道を通って庭に出た和彦は、ふとそんなことを考えてしまう。陳腐な表現だが、まるで映画やドラマを観ているようだった。つまりそれだけ、目の前で繰り広げられる光景に現実味がない。 立派な日本庭園だった。どれだけの手間と時間をかけて手入れしているのかは想像もつかないが、広々とした庭を覆う芝は青々としており、その庭をさらに彩るように桜の木々は薄ピンクの花をつけている。松やツゲの木もバランスよく配置され、この庭に出る途中には、ツツジやサツキといった樹木も植えられていた。桜の花が散ったあともさまざまな花が楽しめるよう、当然のように考えられているのだ。 招待客を誘導するために屋敷から庭へと赤絨毯が敷かれ、芝の青さも相まって、鮮烈に目に焼きつく。さらに、大きな赤い花がぽつぽつと咲いているかのように、野点傘が開いている。その下にテーブルとイスが置かれているのだ。 和やかなパーティーの光景――というには、庭にいる男たちは一様にダークスーツや紋付羽織袴を身につけており、息を呑むほど壮観だ。誰が見ても、単なる親睦団体の花見だとは思わないだろう。 この場にいる男たち全員が剣呑とした雰囲気をまとっており、明らかに一般人とは違う。荒んでいるわけでも、凄んでいるわけでもない。振る舞いはあくまで自然だが、それでも、見るものを畏怖させるだけの凄みがあるのだ。 一年近く、ヤクザと呼ばれる男たちと接してきて、慣れていたつもりの和彦でも足が竦む。ここにいる男たちは、ただのヤクザではない。それぞれがなんらかの修羅場を潜り抜け、汚すことのできない看板を背負いながら、組織を動かしている男たちなのだ。だからこそ総和会に選ばれ、この場に招かれた。 目につく色彩すべてが不吉なほど鮮やかで、それがますます和彦から現実味を奪っていく。唯一目に優しいのは、控えめに咲く桜の花ぐらいだ。「――佐伯先生」 庭を支配する息苦しいほどの重圧に懸命に耐えていると、ふいに傍らから声をかけられる。ハッとして顔を向けると、和彦が無事に花
อ่านเพิ่มเติม

第23話(25)

 和彦はタクシーで移動しながら、外にどれだけの数の警官や機動隊が動員されているか、自分の目で見ることができた。まるで威圧するように、塀の周囲を数メートル間隔で機動隊員が立っており、警官が往来で容赦なく所持品と身体検査を行い、花見会の出席者たちはおとなしく従っていた。 自分があんなに目に遭っていたらと考えるだけで、和彦は底知れない不安感に襲われる。今日は大丈夫だったとしても、いつかは、佐伯和彦という人間が何者なのか、警察に知られるかもしれないのだ。 靴を脱いで式台に上がった和彦は、改めて玄関前へと視線を向ける。玄関は開け放たれているのに、正面に据えられた門が頑なに閉ざされているというのは、不思議な感覚を与えてくるのだ。何より、門を内側から守っているのはダークスーツ姿の男たちで、門の外に立つのは警察という現実が、裏と表の世界の境界線を示していると感じる。 心の中に入り込もうとした何かを振り切るように踵を返し、和彦は男についていく。 案内されたのは、こじんまりとした和室だった。外からたっぷりの陽射しが差し込んでいるため室内は明るく、何より、窓から見える景色が贅沢なほど素晴らしい。生い茂った木々の間から池が見え、そこにかかる小さな橋の風情も相まって、まるで風景画のようだ。「部屋の外にうちの者を立たせていますから、安心してお寛ぎください。会長が庭に出られるときに、声をおかけしますから」 わかりましたと和彦が答えると、男は一礼して障子を閉めた。 一人になって肩から力を抜いた和彦は、室内を見回す。ハンガーラックにはダークスーツ一式が掛けられていた。いつ必要になるかわからないものの賢吾に言われるまま仕立ててもらい、長嶺の本宅に置いてあったのだ。この先、身につける機会が増えるのかもしれない。 ゆっくりするのは後回しにして、とにかく着替えることにする。 ダークスーツを腕にかけたところで和彦は、この部屋にあるのは姿見ではなく、鏡台であることに気づいた。置かれた化粧箱や手鏡、部屋にさりげなく飾られた小物などから推測するに、どうやらこの部屋は、普段は女性の利用を主としているようだ。 自分の置かれた立場もあって、何か意味はあるのだろうかと深読みをしたくなるのは、自虐に近
อ่านเพิ่มเติม

第23話(26)

 この不快さはなんなのだろうかと考え、和彦はすぐに適当な例えを思いつく。 圧倒的な力を持つ獣が、ひ弱な小動物を捕らえたとき、ささやかな抵抗を楽しみながら弄ぶ行為に似ているのではないか、と。 そんな南郷が隣にいるだけでも重圧なのに、今日、和彦の一挙手一投足を観察しているのは一人ではない。 庭の中央に歩み出るにしたがい、暖かな陽気には不似合いな冷や汗が出てくる。覚悟はしていたのだが、予想以上の視線が四方から突き刺さってくる。庭に出て、守光の登場を待っている男たちは、その守光の背後をついて歩く和彦を露骨に探り、値踏みしているのだ。できることなら逃げ出したいが、それはもう叶わない状況だ。 千尋のウソつきめ、と心の中で洩らす。花見会に出席しても、挨拶回りをする必要も、守光の隣に立つ必要もないと千尋は言っていたが、現実はそう甘くはなかった。いや、守光が甘くなかった、というべきか。 総和会会長への挨拶は屋敷の中で済ませ、庭では、招待客同士の交流を目的として、談笑しつつ、満開とはいいがたい桜の花を愛でることが目的となっているそうだ。 ただ、守光に足を止めてもらおうと、男たちが恭しく、しかし目の色を変えて話しかける様は、和やかな花見の光景とは言いがたい。総和会会長という肩書きを持つ人物と、護衛なしで相対する機会は希少なのかもしれない。「――こういう場のほうが、俺は気が楽だ」 スラックスのポケットに無造作に片手を突っ込み、南郷が言葉を洩らす。獣の唸り声が空気を震わせたように感じられ、反射的に和彦は体を強張らせる。「さすがにここで、オヤジさんを襲おうなんて人間はいないだろ。仮にそのつもりでも、みんな互いを牽制し合ってる。とても不審な動きはできない。だから安心して、オヤジさんの後ろ姿を眺めていられる」「……だとしたら、どうして会長は、この場でもあなたを伴われているのですか?」 守光の姿に目を向けたまま和彦は口を開く。「伴うべき人間は別にいる、か?」「それは、わかりません。ただ、どうしてなのかと思っただけで……」「そういうあんたも、オヤジさんに請われて、一緒について
อ่านเพิ่มเติม

第23話(27)

 さりげなく付け加えられた言葉がどれだけの重要性を持っているか、和彦はすぐに解した。ハッとして守光の顔を見ると、鋭い笑みで返される。「何も知ろうとしないことで、無害な存在としてこの世界で生きていくことは可能だろう。だが、わしの〈オンナ〉になったことで、あんたはもう、その手段は使えんよ。知ることが、あんたの身を守ることになる。もしかすると、あんたの可愛い男たちを守ることにも……」 守光が視線を向けた先に、見慣れた男の姿があった。賢吾だ。こちらに気づいていないのか、数人の男たちと立ったまま話していた。 もう一人の長嶺の男である千尋は、今日は長嶺組の事務所に詰めている。組長である賢吾が表舞台に顔を出している間、その跡目は組を守るのが役目だ――と賢吾自身が言っていたが、千尋を出席させないための方便ではないかと和彦は勘繰っている。総和会会長の孫として千尋が大々的に注目を浴びる状況を、賢吾が喜ぶとは思えない。 賢吾を見つめたまま、和彦はわずかに目を細める。 やはり、陽射しの下が似合わない男だと思う。禍々しい存在感が増し、まとった陰がより濃く見える。だからこそ、一際魅力的に見えてしまう。 その賢吾以上に禍々しいながら、一切の陰をうかがわせない守光が、機嫌よさそうな声で続けた。「わしとともにいるときは、見聞きしたことはなんでも覚えるようにしておくといい。総和会会長の隣で、人や情報に接する機会はなかなか貴重だ」 そうすることで和彦は、ますます裏の世界に深入りすることになる。守光や、さきほどの南郷の意味ありげな言葉を聞いていると、知らず知らずのうちに自分は、何かとてつもない役目を負わされようとしているのではないかと不安に駆られる。 それが表情に出たらしい。守光は低く笑い声を洩らした。「あんた自身に、人間を見極められるようになってほしいだけだ。花見会の席に、わしがあんたを伴って歩いたということで、佐伯和彦という存在は秘密ではなくなった。これをきっかけに、なんらかの利益を得ようと、あんた個人に接触しようとする者も現れるだろう。長嶺組の護衛に適当にあしらってもらうもよし、膝をつき合わせて世間話をしてみるもよし。どうしたいかはあんた次第だ。と
อ่านเพิ่มเติม
ก่อนหน้า
1
...
8586878889
...
93
สแกนรหัสเพื่ออ่านบนแอป
DMCA.com Protection Status