腹を、括るしかなかった。 震える唇を一度きつく結び、私はほとんど祈るような気持ちで、言葉を紡ぎ出した。「私…っ、先輩のことが、好き、です」 声が、震えていた。情けないくらいに小さくて、風に掻き消されてしまいそうだ。でも、彼は聞き逃さなかった。彼の肩が、ほんのわずかにぴくりと動く。その反応に、私の心臓は喜びと恐怖で同時に鷲掴みにされた。 でも、ここで止められない。一番大事なことを、伝えなければ。「でも! でも、私、先輩が思ってるような、キラキラした普通の女の子じゃ、全然なくて!」 必死だった。身振り手振りを交え、支離滅裂になりそうな思考を必死に言葉に変える。「講義中も、頭の中は別のことでいっぱいで! かっこいい男の子を見ても、その隣にいる男の子との関係性を妄想しちゃうような、そういう、腐った人間なんです!」 ああ、もうダメだ。自分で自分の墓穴を掘っている。こんなことを聞かされて、好きでいてくれる人なんて、いるはずがない。ドン引きされて、軽蔑されて、それで終わりだ。 涙が滲んできて、彼の顔がぼやけて見える。でも、ここで目を逸らしたら、私は一生後悔する。 私は最後の勇気を振り絞り、滲む視界のまま、彼の瞳をまっすぐに見つめた。そして、ほとんど叫ぶように、私の本心をぶつけた。「私の頭の中は、これからも多分、男の子同士の恋愛でいっぱいです! それに、先輩と氷室くんが並んでるのを見たら、今でも、やっぱり、ちょっとだけ、ときめいちゃいます! そんな、どうしようもない人間なんです!」 言い切った。息が、切れた。全身の力が抜けて、その場に崩れ落ちてしまいそうだった。 もう、これ以上、取り繕うことなんてできない。これが、私の全てだ。 私は俯いて、か細い、最後の声で問いかけた。「……それでも、いいですか……?」 それは、告白というよりは、許しを乞うような響きを持っていた。 答えが、怖い。 静寂が、中庭を支配する。風の音と、自分の心
Last Updated : 2025-11-13 Read more