武蔵に気に入られたいデザイナーは数え切れないほどいる。全員にチャンスを与えることなど不可能だ。だが、澪はFYの至宝とも言えるドレスを身にまとっている。FYの上層部と何らかの繋がりがあるのは明白だった。「あなたは……」澪は名刺を武蔵に差し出した。名刺に書かれた名前とブランド名に、武蔵は見覚えがあった。「ピーターさんから話は聞いているよ」澪は驚き、無意識にピーターの方を見た。感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。ピーターは他の人と談笑していたが、澪の視線に気づくと、手に持っていたグラスを軽く掲げてみせた。洵は、澪とピーターが視線を交わし合うのを見て、グラスを握る手に力を込めた。指の関節が白く浮き上がる。公輝が横から武蔵に紹介した。「こちらの夏目澪さんはピーターさんの彼女だ。デザインのレベルは非常に高い。だが私個人としては、やはり千堂さんのデザインの方をより評価している」またしても公衆の面前で千雪と比較され、澪は複雑な気分だった。だが、千雪の作品に負けたのは事実だ。悔やんでも仕方がない。今は、新たなチャンスを自ら作り出し、全力で掴み取るしかない。「夏目さんの技術には何の問題もない。だがデザインにはインスピレーションの爆発が必要だ。夏目さんのデザインは教科書通りで硬い。それに比べて千堂さんのデザインには魂がある。それはまるで天賦の才であり、デザイナーとしての独特な魂と、計り知れない高みを感じさせるのだ」公輝の評価を聞きながら、澪は洵が冷ややかに口角を上げるのを見た。千雪が褒められるたび、洵の忠告が現実のものとなっていくようだった。洵は公輝の言葉には興味がなかった。ただ澪を見ていた。この評価を聞いて、澪がどんな反応をするかを見ていた。澪は真剣に、謙虚に耳を傾けていた。洵はまぶたを伏せた。その深淵のような瞳の奥で、得体の知れない感情が渦巻いた。千雪は笑顔を保っていたが、その表情はとっくに強張っていた。この場にいる誰よりも、千雪だけが知っている。公輝は自分と澪のデザインを取り違えているのだと。つまり、公輝が今絶賛しているのは、すべて澪のことなのだ。千雪は背中で組んだ手に爪を立てた。結局、澪の粘り強いアピールにより、武蔵は彼女にチャンスを与えた。パーティー翌日の早朝、まだ空
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