「トイレ行ってきます」「上の階には行くなよ。勝手にうろつくんじゃないぞ」と健太は念を押した。玲奈はお腹が痛いふりをして、そそくさとその場を離れた。しかし彼女はトイレには行かず、社長室の外で息を潜めていた。しばらくして遥が出てくると、こっそりと後をつけた。遥は備品室に入っていった。玲奈が後を追おうとしたその時、背後から健太の声が飛んできた。「江藤さん、午後の会議資料をコピーしてくれ」「はい!」健太に急かされ、玲奈はしぶしぶ資料室へ向かった。だが振り返ると、備品室のドアが開いたままだ。玲奈は忍び足で近づき、外から鍵をかけた。さらに廊下を通り過ぎる際、ついでに備品室のブレーカーを落とした。遥の悲鳴が聞こえ、玲奈は満足げに笑みを浮かべた。備品室の中、遥の視界は突然の闇に閉ざされた。視界が突然の闇に閉ざされた瞬間、四方八方から押し寄せる窒息感に襲われた。暗闇から伸びる無数の手に首を絞められるような錯覚に陥り、遥は恐怖で激しく息を切らした。遥は重度の閉所恐怖症だ。父が亡くなった後、一人で通夜の番をした時も平気だったため、もう治ったと思っていたのだ。だが、不意に暗闇に閉じ込められた瞬間、呼吸ができなくなり、手足が痙攣し、震えが止まらなくなった。助けを呼ぶ声も出なければ、ドアを叩く力さえ残っていなかった。その時、腰に温かく大きな手が回された。「遥!しっかりしろ!」冷や汗に濡れた耳に、男の声はひどく懐かしく響いた。誰?誰が私を呼んでいるの?遥の意識は朦朧としていた。まるで溺れるように、彼女はその男の首に腕を回し、必死に息を吸い込んだ。「助けて……」湊が備品室に来たのは、執務室のコピー用紙が切れたからだった。秘書課は昼休み中だから、自分で取りに来たほうが早い。まさか中に遥がいるとは思いもしなかったし、さらに外から鍵をかけられ、ブレーカーまで落とされるとは予想外だった。完全な暗闇の中で、自分の手さえ見えない。遥の悲鳴を聞いて初めて、彼女もここにいると気づいたのだ。彼女が閉所恐怖症であることは知っている。遥は暗闇を極端に怖がり、寝る時も常夜灯をつけていた。付き合っていた頃、ホテルに行っても湊は電気を消さなかった。彼自身、明かりをつけて彼女の表情を隅
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