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All Chapters of White shadow: Chapter 1

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【1】

「んんっ……や、あ……っ!」青いライトが妖しく光るホテルの一室で、快楽に溺れた声が響いた。きつい薔薇の香水や悪趣味な部屋の造り、かけっぱなしのラジオならもう慣れた。そんなものに構ってられない。慣れざるを得ない環境というものが、どうしてもある。「うっ、あ、あぁ……っ」例えば、“俺”が今抱いている“少年”にも。彼は男に抱かれるのは初めてらしい。でも仮にこれから経験を積んでいったとしても、彼がタチになる姿は想像できない。華奢で抽象的な容姿以上に、柔く脆い心が見え隠れしている。「ああぁっ!!」そんな事を考えてる間に少年は射精した。精液の強い匂いが鼻腔をくすぐる。「はぁ……はぁ……っ」シーツに突っ伏して放心していた彼は、少ししてからため息混じりに呟いた。「すみません……こんなキツいなんて、俺甘かったっていうか、ちょっと耐えられないです。この仕事は断らせて下さい」少年は涙目で訴える。見てるこっちが気の毒に思ってしまうほどの悲壮感を漂わせていた。「……わかった。じゃあ帰りな。部屋代は俺が持つから」「あ、ありがとうございます」彼は身支度を終えると気まずそうに、逃げるように部屋を出て行った。用済みのラジオを止めたものの、今度は静寂が気持ちが悪い。シャワーを浴びる前に一服し、窓際に佇んだ。「ふう……」男でも女でもいいから、今は人手が欲しい。だがそう簡単に欲しい人材は見つからない。 もっとピンとくる人間がいれば、どんな手を使っても手に入れるのに。危険な思考に入りかけていることに気付き、自嘲した。頭の中はグチャグチャなのに、不思議と気持ちはスカッとしてる。さてと。灰皿に煙草を押し付けて、部屋の時計を確認する。あまり行きたくないけど、そろそろ仕事に戻らないと。青年は銀髪を掻き乱し、ハンガーにかかったジャケットを取った。「警察だらけじゃんか。この辺りも物騒になったよなあ」「そうか? 元からじゃないか?」夜の繁華街で、鉛のような会話が交わされる。といっても、弾んでないと勝手に思ってるだけかもしれない。自分の気持ちが急降下しているのは間違いないから。いつもならもっと話を盛り上げたり、穿った展開をしたり、とにかく溌剌とした受け答えができる。しかし今日はそんなことをする気力もない。「気が乗らないって感じだな、クリスト。お前が行ってみたい
last updateLast Updated : 2025-11-27
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