「私が思い出を大事にする人ってことも、知らなかったのね」「ふざけやがって……!」 歯ぎしりしながら水樹を睨みつける恭介の前に立つと、優子はスマホを見せた。「月野グループの株、68%購入完了。最近失速してたから、私でも買えちゃった」「なっ!? どこにそんな金が!」「私が高校卒業した時にくれた手切れ金。皆さん、すごいと思いませんか? 手切れ金1億も渡してくれたんですよ」 会場はどんどんざわつき、月野一家はどんどん青ざめていく。「出てけ!」「言われなくても。そうそう、あなたの会社が失速したのは、そこのふたりが勝手に会社の金を使ったからよ」「おかしいと思ったら……!」 恭介が妻と子供を睨みつけている間に、ふたりはそそくさと会場を後にした。 その後、ふわリンゴは大忙しだった。社長である水樹の発言についてのインタビューをしたいマスコミに囲まれ、その度に水樹は笑顔で答える。そのせいで、水樹がやるはずの書類が、優子や他の3人に回ってくる。「大スキャンダルだからって、会社に押しかけられてもねぇ」「それに答える水樹ちゃんも、相当肝が座ってるわ」「ほんとほんと」 3人は呆れ返り、優子は苦笑するしかなかった。 あのあと、月野グループに警察が入り、横領が発覚した。ただでさえ優子が60%以上の株を買い占め、株主になっててんやわんやとしていたのに、警察沙汰になって、会社が機能しなくなったらしい。「で、優子ちゃんはどうするの? 株主でしょ」「私は言われるままに株を買っただけですから。そのへんは母にお任せします」 そう言って笑う優子は、清々しい顔をしていた。
Zuletzt aktualisiert : 2025-12-22 Mehr lesen