「あの、私からも、聞いていい?」 乃愛は遠慮がちに聞く。水樹に話しかけるのは怖いけど、はっきりさせておきたいことがあった。「なに?」「贈り物を捨てたのはどうして? やっぱり、聖愛さんからだから?」「あぁ、あれね」 水樹は思い出すような仕草をすると、紅茶をひと口飲んでため息をつく。「贈り物にはね、マナーがあるの。例えば、入院してる人には、植木鉢やパジャマを贈ってはいけないとかね。それらはずっと入院してろって捉えることができるから、禁止されてるの」「聖愛さんが贈ったものも、マナー違反だったってこと?」「そうよ。忘れもしない。割れ物とスリッパだったわね。割れ物は関係が壊れることを連想させるからNG。靴、靴下、スリッパなんかは、踏んで使うものでしょ? だから、相手を下に見てるって思われるからNG。普通の人から贈られたら気にしないけど、あの女、あれでも大手企業の秘書でしょ? そのへんのマナーは分かってるはず。なのにそれを贈ってきたってことは、宣戦布告ってことでしょう。そんなもの、使いたくもない」 一生懸命選んだ贈り物に、そんな意味があったとは知らなかった乃愛は呆然とするのと同時に、聖愛の恐ろしさを知った。子供の親を思う気持ちを利用するなんて、どこまで狡猾なのだろう。「私、知らなくて……」「小学2年生だったんだから、仕方ない。贈り物騒動の後、あのふたりと出ていったじゃない? どこで何をしてたのか、教えてくれる?」「大きなホテルに泊まった。かなり広い部屋だったから、スイートルームだったと思う。次の日に、買い物してたんだけど、リュックにママが作ったワンピースが入ってて……。贈り物をあんなふうにされた後だったから、着るのが嫌で……。そしたら、ふたりがたくさん服を買ってくれたの。いつも決まったお店でしか買ってもらえなかったけど、ふたりはなんでも買ってくれた。 今思えば、ママは私の肌を気遣ってくれてたんだよね……」 買ってもらった服を来た乃愛を見て、青ざめていた水樹のことを思い出す。当時は贅沢したから怒られたと思っていたが、あれは愛情ゆえのものだった。幼いから仕方ないといえばそれまでだが、後悔がずっと残っている。「名前の宿題のこと、覚えてる?」「もちろん。ずっと忘れなかった。一生懸命考えた名前を、あそこまで貶されるなんて、思ってもみなかったから」「ごめ
Zuletzt aktualisiert : 2025-12-20 Mehr lesen