Semua Bab 罪状『無知』: Bab 21 - Bab 29

29 Bab

名前の由来

  国語の授業で、漢字にはそれぞれ成り立ちがあると習った。例えば、「習」という漢字は、鳥が羽を広げて、繰り返し羽ばたく姿から、といった具合に。「漢字にはこういった成り立ちがありますね。皆の名前には、由来があります。こういう子に育ってほしいという願いが込められています。今日の宿題は、名前の由来を親御さんに聞いて、書いてきてください」 この宿題は、優子にとって憂鬱だった。大好きな聖愛が知るわけないし、恭介はLINEをしても、返事が来るのは2,3日後のことが多い。その日に返信が来ることなど、数える程度だ。 つまり、水樹に聞くしかない。 服を切り刻んで投げつけたのは、昨日のこと。昨日あんなことがあったのに、話しかけるなんて憂鬱でしかない。だが、優子はそれ以外に、水樹に話しかけなくてはいけないことがある。「かゆい……」 体中が痒くてしかたない。塗り薬がほしいけど、どこにあるのか分からない。使用人に聞いたが、「奥様にお聞きください」としか帰ってこない。あんな意地悪な使用人がいるだろうか? 優子は考える。使用人達はママの手先だ。だから優子に意地悪をするんだ、と。 放課後、家に帰ると玄関が賑やかだ。靴がいつもより多い。それは聖愛と恭介のものだ。「ただいまー!」 リビングに行くと、優雅にお茶を飲む恭介と聖愛。そしてしかめっ面の水樹がいる。「聖愛さん、パパ!」  優子は小さな体をソファとテーブルの間に通し、ふたりの足に抱きついた。「おかえり、優子ちゃん。あれ、なんか赤くない?」 聖愛は優子の手首が赤くなっていることに気づき、優しく手を取る。「だから言ったじゃない。優子は肌が弱いの」「分かってるなら、はやく薬を持ってきてやれ」 水樹は恭介を一瞬睨みつけると、薬を取りに行った。「優子、学校はどうだった?」「楽しかったよ。そうだ、パパ。ゆうの名前の由来、なぁに? 名前の由来聞いてくるのが、今日の宿題なの」 優子の問いに、恭介は苦虫を噛み潰したような顔をし、どう言おうか、視線を彷徨わせた。「パパ?」「優子の名前は、ママが決めたんだよ。だから、ママに聞きなさい」「そうなの?」 聞いたのは、優子ではなく聖愛だ。「子供の名前って、ふたりで決めるものでしょ、普通」「そうなんだけど、どうしても優子じゃないとやだって、ワガママを言ったんだよ」「そう
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名前の由来2

「それって奥様のエゴですよね? 優子ちゃん、可哀想」 口を開いたのは聖愛だった。「なんですって?」「今の時代でさえ、子供を産むのは自由って言われてるのに、子宝祈るって、ちょっと……。変に生々しくて気持ち悪いっていうか。それに、知ってます? 子供の子がつく名前って、シワシワネームですよ? 今時滅多にいませんって、そんなシワシワネーム。セクハラな上に古臭い名前つけられて、優子ちゃん可哀想」「あなたに何が分かるの!?」 水樹が立ち上がり声を荒げると、恭介が水樹を突き飛ばす。水樹はソファの上に倒れる。「聖愛の言うとおりだ」「優子の名前はお前に任せるって言ったのはあなたじゃない! それに、あの時はいい名前だって……」「見苦しいぞ」 恭介は冷たく言い放つと、優子を抱き上げ、聖愛に目配せして2階に行った。恭介の書斎に入ると、自分の膝の上に優子を乗せ、宿題をさせた。「ゆう、自分の名前嫌いになっちゃった」「そうね、ひどいよね」「まったくだ。ごめんな、優子」「ゆうは、ううん……。私は、ママ嫌い。聖愛さんがママになればいいのに」「優子ちゃん!」 聖愛は優子を恭介ごと抱きしめた。「そう言ってくれて嬉しい。私も、優子ちゃんが娘だったら、どれだけ嬉しいか」「じゃあ、聖愛さんが私のママね。ママって呼んでいい?」「もちろんよ」「わぁい、嬉しい! 名前も、優子じゃなくて、違う名前がいいなぁ」「それなら、私と恭介さんで考えましょ。ね、恭介さん」「そうだな、あとでふたりでじっくり考えておくよ」「じゃあ、そのお名前の由来書きたい!」 消しゴムで書いた名前の由来を消そうとする優子の手を、恭介は慌てて掴んだ。「名前を考えたり、変えたりするのは時間がかかるんだ。だから、今はそれで我慢しなさい」「はーい……」 優子は渋々プリントをたたむと、ランドセルにしまいこんだ。 翌日、1時間目の授業は国語。「では皆さん。自分の名前の由来を発表していってください」 窓際に座る生徒から、順番に発表していく。女子が発表する度に、優子は惨めな気持ちになった。名前に「子」がつく子なんて、優子以外いないから。優子の後に発表する子にだって、「子」がつく子はいない。(やっぱり、優子って名前、ダサいんだ。ママだいっきらい) 心の中で水樹への恨み言を言っていると、優子の番になった。
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じわり、じわり

 家に帰ると、水樹がいつものように玄関まで来て、「おかえり」を言いに来た。いつもと違うのは、手の包帯。「おかえり、優子。学校はどうだった?」「おばさんには関係ないでしょ。包帯なんかつけて、可哀想って思ってほしいの? キモいんですけど」 優子の棘のある言葉に、水樹はショックで固まる。「優子ちゃん! なんてこと言うの!」 偶然近くで聞いていた使用人のひとりが、水樹の肩を抱き、優子を睨みつける。「うるさい! おばさんの手先! パパのお金でここにいるくせに。あんまり変なこというと、パパに言いつけてクビにするから!」「なっ……!?」 絶句する使用人の横を通り、自分の部屋に行く。途中、水樹が優子の名前を叫んでいたが、無視して部屋に引きこもった。「あー、もうだいっきらい」 吐き捨てるように言い、ランドセルを無造作に投げると、ベッドに寝転び、スマホを手に取る。LINEを開くと聖愛からメッセージが来ている。『お疲れ様、優子ちゃん。学校どうだった?』「楽しかったけど、名前の由来発表するのは恥ずかしかった」『そうだよね、可哀想に。今パパと新しい名前考えてるから、待っててね』「うん、ありがとうママ。大好き」 聖愛とやりとりをしていると、嫌な気持ちがすぅーっと消えていく。魔法のように。聖愛は優子に、色んなことを教えてくれた。『パパ、優子ちゃんのためにお洋服のお金を渡してたのに、あの人は自分のために使ってたでしょ? それは着服(ちゃくふく)って言って、悪いことなんだよ。警察に連れて行かれてもおかしくないことなの』『毒親って言葉知ってる?』『親ガチャ外れて可哀想。親ガチャっていうのはね』『今日も林檎だったの? 甘いお菓子をくれないのは、愛してない証拠だよ』『優子ちゃんの本当のママは私だからね』 時には優子のような子供にも分かりやすい解説動画のリンクと共に、じっくり、じんわり、優子の思考を変えていった。 結果、優子はとことん水樹を嫌い、心の底から聖愛を母として愛するようになっていった。
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ママ

「おばさん、まだ洗濯物終わってないの? 明日体育あるから、はやくしてよ」「また林檎なの? 使えない。好きでも、こんなに出てくると嫌いになるよ」「はぁ、これだから毒親は」「私の服代、着服してるんだから、もっとマシな格好したら?」 おばさん、おばさん、おばさん……。 優子は徹底的に水樹を家政婦扱いした。使用人が口を出せば父の存在をチラつかせ、黙らせた。すべては水樹を追い出し、本当のママである聖愛を家に迎え入れるために。 結果、水樹は半年で離婚して出ていった。3人の口うるさい使用人と共に。 晴れて聖愛は家に来て、恭介も毎日家に帰るようになった。「やっとママと住める!」「今まで我慢させてごめんね、乃愛」「のあ?」 聞き馴染みのない名前で呼ばれ、キョトンとする。「それが新しい名前だよ、乃愛。ふたりで考えたんだ」 恭介が聖愛の肩を抱き寄せながら、愛のこもった眼差しを優子、もとい、乃愛に向ける。「私と同じ漢字が入ってるのよ」 聖愛は胸ポケットからメモ帳を出すと、「聖愛」「乃愛」と並べて書いた。一身に愛を受けたような気になって、嬉しくなる。「嬉しい! ママと同じ漢字!」「そうよ、乃愛」「学校にも伝えてあるからな」「うん!」 翌日、恭介と一緒に登校すると、職員室に足を運んだ。「改名の件、聞いてますよ。皆にも伝えておくからね、乃愛ちゃん」「うん!」「一緒に行こうか。もう少しここで待っててね」 親子は応接室に通された。特別扱いされているようで、気分がいい。「先生が迎えに来たら、パパは仕事に行くからな」「うん、パパ」「いい子だ、乃愛」 名前を呼ばれると、嬉しくなる。優子なんてダサくて古臭い名前よりも、乃愛のほうが響きが可愛くて好きだ。何より、大好きな聖愛と同じ漢字が使われている。「お待たせしました。行こう、乃愛ちゃん」「はーい」「頑張れよ、乃愛」 恭介は乃愛の頭を撫でると、応接室から出て会社に行く。 乃愛は先生と一緒に、教室に入る。途端、にぎやかだった教室は静まり返り、どよめきが起きる。「あれ、優子ちゃんなんで先生と一緒なの?」「どうしたのかな?」 ヒソヒソ声に気分が良くなる。注目されるのが、気持ちいい。「皆、静かに。えー、月野優子ちゃんですが、おうちの事情で、月野乃愛ちゃんに名前が変わりました。皆、乃愛ちゃんって
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いらない子

 乃愛が王女様気取りでいられたのは、1年にも満たなかった。新しいママになって3ヶ月後、聖愛の妊娠が発覚した。聖愛は仕事を辞めて家にいるけど、何もしなくなった。「お腹に赤ちゃんがいるから、何もできないの。ごめんね?」 大好きな聖愛にそう言われたら、乃愛がやるしかない。水樹の手伝いをしていたことがあるから、洗濯機の回し方も、皿洗いもできる。 だが、料理は野菜を切ることと、おにぎりを握ることしかできない。「はぁ、仕方ないなぁ」 聖愛は初心者向けのレシピ本を何冊か買い与え、料理の基本の数回教えた。それでも小学3年生が作れる料理など、たかが知れている。「あなた、栄養が偏っちゃう」 聖愛は恭介に甘え、使用人を雇った。黒崎という女性で、黒い無地の服で身を包み、紺色のエプロンをつけた女性だ。聖愛には丁寧に接するが、乃愛にはゴミでも見るような眼差しを向け、話しかける度にため息や舌打ちをされる。 挙句の果てには、「お前みたいな子豚に近寄られるとイライラする。気持ち悪いからくるな」と言われる始末。 聖愛に泣きついても、「仕方ないじゃない。そんなことで負担掛けないで。赤ちゃん殺す気?」とうんざりされるだけ。 学校の休み時間。小学校に入学してからずっと仲良くしていた亜理砂に、久しぶりに声を掛ける。「亜理砂ちゃん、聞いてよ。ママも使用人も……」「話しかけないで」 ピシャリと言い放たれ、固まる。「あのさぁ、名前変わってから、ずっと威張ってた人とはもう、友達じゃないから」「そうそう!」「私のママ馬鹿にしてたの、許さないから!」「見下してたくせになんなの、豚!」 亜理砂が不満をぶつけたのを皮切りに、他のクラスメイト達も一斉に不満をぶつける。「皆、謝るから……」「謝ってすむなら警察いりませんよー?」 誰かが言うと、クラスメイト達はどっと笑う。乃愛の居場所は、学校にもないようだ。 それから乃愛の毎日は悲惨なものだった。学校では豚といじめられ、家では誰にも相手にされず、空気のような扱いをされる。少しでも声や物音を立てれば、両親か黒崎に舌打ちをされる。 逃げ場さえ、どこにもなかった。 乃愛の息苦しい生活は、聖愛が出産してから一気に悪化した。 産まれたのは男の子で、ベビーシッターも雇われた。このベビーシッターも、乃愛には見向きもしない。それどころか、邪魔者扱
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いらない子2

 修斗はすくすくと健やかに、醜悪に育っていった。美男美女の子供だから容姿は天使のようだが、中身がどこまでも醜く、残虐だった。 乃愛が6年生になると、修斗は3歳。常に罵られている乃愛を見て育った修斗も、乃愛を罵った。「ぶーしゃん、ぶーぶー」「ぶー、ばっちい」 乃愛を見る度に、拙い言葉で乃愛を罵る。「お姉ちゃんでしょ?」「ぶー! ぶーしゃん!」「お姉ちゃん!」 ムキになって大声で言うと、修斗が大声で泣きわめく。その声を聞きつけた黒崎とベビーシッターが乃愛を押しのけ、蔑んで、修斗を慰める。「豚は豚小屋にいな!」 黒崎に怒鳴られ、乃愛は渋々部屋に行く。ベッドに寝転んで手に取るのは、初めて持ったスマホ。 今は機種変更して大人も使うような普通のスマホを使っているが、こちらはほとんど触らない。誰も乃愛に連絡しないのだから。「この頃に戻りたい」 優しかった聖愛とのLINEを見返して、ひとりで泣いた。 6年生の冬、乃愛は両親に呼ばれ、リビングに座る。「乃愛、お前の中学校決めておいたぞ。幸い、受験もいらない学校だ」 恭介はパンフレットを乃愛の前に置いた。パンフレットを開いて読みすすめ、顔が青ざめていく。「全寮制って……」「今まで甘やかしすぎたからな。自主性を育ててきなさい」「ついでに、運動部でダイエットもしたら?」 聖愛はぷぷっと笑う。そこにはもう、乃愛が大好きだったママの面影はない。「うん、分かった……」 パンフレットを持って、自室に戻ると、枕に顔を埋めて泣いた。「私はいらない子なんだ、だから寮に入れるんだ……」 口にして、更に悲しくなっていった。必死に声を殺して泣く。声を上げて泣くことすら、この家では許されないから……。
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過酷な寮生活

 中学校に入学し、部屋を割り当てられる。1年生は4人部屋、2年生はふたり部屋、3年生はひとり部屋に入ることになっている。1年生の乃愛は、4人部屋。「はぁ、最悪。こんなのと一緒とか、ないわー」 同室の生徒は、全員知らない顔だ。別の小学校から来たのだろう。「お前は下のベッドな」「床でよくね?」「そしたら移動スペースなくなるじゃん」 ぎゃははと3人は下品な笑い声を上げる。だが、これは序の口だった。 入学3日目、部屋の隅で宿題をしていると、髪を引っ張られた。「亜理砂から聞いたけどさぁ、お前、実の母親追い出したんだって?」「マジやばいよねー。しかも改名までしたとか」「改名でキラキラネームにするとかウケるんですけど」 3人はひとしきり笑うと、冷たい目で乃愛を見下ろす。「うちらさー、親を大事にできないバカ嫌いなんだよね」「そうそう。お金出してもらってるわけじゃん?」「ママが家にいるから、さみしくないわけだし。それなのにママ追い出すとかキモい」「不倫相手をママにするとか、頭腐ってるんじゃないの」 3人の言葉に、返す言葉がない。どれも事実だから。 中学生にもなれば、不倫という言葉も、それがどういったことなのかも分かるようになる。そして、それがどれだけ汚らわしいものなのかも。(ママ、ごめんなさい) 心の中で水樹に謝罪し、3人の同居人の暴力を罰だと言い聞かせ、甘んじて受け入れた。 亜理砂は何人に話したのか、先輩達も乃愛の家庭事情を知っていた。それを知ったのは、部活見学の時だ。聖愛に言われたというのもあるが、痩せないとまずいと分かっていた乃愛は、運動部の見学に行く。どこに行っても先輩達は乃愛を見て、もしくは彼女の名前を聞いて軽蔑の眼差しを向けた。 誰もが口を揃えて言った。「実の親を追い出したやばい女」 一通り見学したが、歓迎してくれるところはひとつもない。どの運動部も文化部も、明らかに嫌そうな顔をする。 それでも中学校は強制入部なので、どこかに入らなくてはいけない。乃愛は仕方なくバレー部に入った。バレー部には、同室の生徒がいないからだ。「はぁ、こんなのがうちの部に来るとか最悪」「ユニフォーム入るやつある?」 先輩達は舌打ちをしたり、ニヤニヤしたりして、乃愛を見る。言い返す気力など、今の乃愛にはない。「そこに立って」 先輩に言われて
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-17
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過酷な寮生活2

「どうしよう……」 勘でネットを外していると、顧問の女性教師が戻ってきて、乃愛に駆け寄る。「月野さん、だっけ? ひとりなの?」「は、はい……。あの、先輩達にいじめられて……。見てください、ボールぶつけられたんです」 ジャージをめくってあざを見せると、顧問はため息をついた。「それはあなたが悪いんじゃない」「え?」「聞いたわよ。小学生の頃、実の母親を追い出したんですって? 恐ろしい子ね。そんなのと、誰も関わりたくないに決まってるじゃない。私だって、あなたにバレー部に来てほしくなかった」 顧問の言葉に、頭が真っ白になる。教師とは、いじめがあったら解決しようと動くものではないのか? 何故自分が責められなくてはならないのか?「ぼさっとしてないで。今日は手伝ってあげるから」 顧問は舌打ちをすると、乃愛にネットの外し方やたたみ方。ポールの外し方や片付ける場所などを教えた。彼女の言葉にはところどころ棘があり、しかたなく教えてやっているのだと、態度が物語っている。「次からはひとりでやってよね」「はい……」 寮に帰ると、別の地獄が待っていた。「うっわ、くっさー!」「キモイキモイ! 外で水浴びしてから入れよ」「ごめん、今汗流すから」 着替えを取ろうと自分のスペースに行こうとすると、彼女達はあからさまに嫌そうな顔をしたり、鼻をつまんだりした。「くっせーな!」「マジでキモすぎ」「シャワールーム使うなよ、汚れるから」 ぎゃははと笑う3人を無視してシャワールームのドアノブに手を置くと、強い衝撃が脇腹に襲いかかり、床に倒れ込む。「シャワールーム使うなって言ってんだろ、ブス」「お前と同じシャワー使いたくないし」 出てけコールが始まり、乃愛は泣きながら部屋を飛び出した。「皆ひどい……。けど……」(私が1番ひどいのかも) 実の母である水樹にした仕打ちを思い出し、後悔する。何故母を大事にできなかったのだろう。彼女はいつも乃愛のために色々してくれたというのに。 泣きながら寮の裏手に行くと、ダメ元で家に電話をした。『もしもし?』 出たのは聖愛だ。「もしもし、ママ……。私、帰りたいよ」『はぁ? ふざけたこと言わないで。それとママって呼ばないでって言ったでしょ』「ごめんなさい、聖愛さん。でも、もうやだよ。皆私をいじめるの。同じ小学校に通ってた子が
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再会

 さて、教師が変わったことで、いじめが終わったかと聞かれれば、答えはNOだ。「実母を捨てた上に、キラキラネームに改名したやばい奴。小学生の頃はいじめもして、金にものを言わせて威張り散らしてた」というのが、乃愛の印象だ。それに、それは間違ってはいない。だから乃愛は反論できないし、暴言も暴力も、甘んじて受け入れた。 それでも、高校は部活をしなくてもいいし、ひとり部屋だから、中学の頃よりはだいぶマシだった。 両親や修斗はというと、乃愛にほとんど干渉しない。他の生徒達は春休みや夏休みに帰るというのに、乃愛は帰宅を許されず、会うのは月に1度、お小遣いを渡す時だけ。渡しに来るのは黒崎がほとんどで、時折聖愛が来ることもあるが、恭介と修斗は1度も顔を見せたことがない。 今では恭介の顔をほとんど思い出せない。きっと、成長した修斗を見ても、お互いに気づかないだろう。 高校生活に慣れた頃、呼び出しの連絡があった。渡したいものがあるから、会いに行くというもの。来週日曜の午後2時に、近くの喫茶店で待つとメッセージが届いていた。「珍しい……。なんだろ?」 毎月のお小遣いは、校門で手渡されて終わる。飲食店に呼び出されるなんて初めてだ。 乃愛の胸はざわついた。会ったとしても、きっと前みたいに優しくしてもらえることなんてない。そう思っているが、心の何処かでは、昔のように優しくしてもらえるのではないかと期待している。 あの頃は、修斗がまだ小さくてお世話が大変だったから、自分に構えなかっただけで、本当は申し訳なく思っているのではないか。 ほんの少し、そう思っている。 当日、待ち合わせ30分前に喫茶店に着くと、席の場所をLINEで教える。スマホゲームをして待つが、そわそわしててゲームどころではない。 何度もLINEに既読がついたか確認しながら、永遠にも思える時を待つ。 既読が着いたのは待ち合わせ時間を10分過ぎた頃。聖愛と恭介が来たのは、更に30分後。 14時45分、聖愛と恭介は、仏頂面で乃愛の前に座る。遅刻の謝罪も、久しぶりの挨拶もない。聖愛とは数カ月ぶりに、恭介とは約3年ぶりに再会する。聖愛は相変わらず美しいまま。恭介も少し白髪がまじっているが、まだまだ若々しい。あと10年もすれば、イケオジと呼ばれるようになるだろう。 恭介は近くを通りかかったウエイトレスにふたり分の紅
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