国語の授業で、漢字にはそれぞれ成り立ちがあると習った。例えば、「習」という漢字は、鳥が羽を広げて、繰り返し羽ばたく姿から、といった具合に。「漢字にはこういった成り立ちがありますね。皆の名前には、由来があります。こういう子に育ってほしいという願いが込められています。今日の宿題は、名前の由来を親御さんに聞いて、書いてきてください」 この宿題は、優子にとって憂鬱だった。大好きな聖愛が知るわけないし、恭介はLINEをしても、返事が来るのは2,3日後のことが多い。その日に返信が来ることなど、数える程度だ。 つまり、水樹に聞くしかない。 服を切り刻んで投げつけたのは、昨日のこと。昨日あんなことがあったのに、話しかけるなんて憂鬱でしかない。だが、優子はそれ以外に、水樹に話しかけなくてはいけないことがある。「かゆい……」 体中が痒くてしかたない。塗り薬がほしいけど、どこにあるのか分からない。使用人に聞いたが、「奥様にお聞きください」としか帰ってこない。あんな意地悪な使用人がいるだろうか? 優子は考える。使用人達はママの手先だ。だから優子に意地悪をするんだ、と。 放課後、家に帰ると玄関が賑やかだ。靴がいつもより多い。それは聖愛と恭介のものだ。「ただいまー!」 リビングに行くと、優雅にお茶を飲む恭介と聖愛。そしてしかめっ面の水樹がいる。「聖愛さん、パパ!」 優子は小さな体をソファとテーブルの間に通し、ふたりの足に抱きついた。「おかえり、優子ちゃん。あれ、なんか赤くない?」 聖愛は優子の手首が赤くなっていることに気づき、優しく手を取る。「だから言ったじゃない。優子は肌が弱いの」「分かってるなら、はやく薬を持ってきてやれ」 水樹は恭介を一瞬睨みつけると、薬を取りに行った。「優子、学校はどうだった?」「楽しかったよ。そうだ、パパ。ゆうの名前の由来、なぁに? 名前の由来聞いてくるのが、今日の宿題なの」 優子の問いに、恭介は苦虫を噛み潰したような顔をし、どう言おうか、視線を彷徨わせた。「パパ?」「優子の名前は、ママが決めたんだよ。だから、ママに聞きなさい」「そうなの?」 聞いたのは、優子ではなく聖愛だ。「子供の名前って、ふたりで決めるものでしょ、普通」「そうなんだけど、どうしても優子じゃないとやだって、ワガママを言ったんだよ」「そう
Terakhir Diperbarui : 2025-12-16 Baca selengkapnya