All Chapters of 血の契約と魔石の継承者: Chapter 11 - Chapter 20

41 Chapters

11話 拗ねた子猫と約束の魔法

 ユウは、その言葉に気合を入れ直し、興奮と楽しさに顔を輝かせた。二人の間には、剣術を教え合う真剣さと、冒険ごっこ特有のワクワク感が混じり合い、森の中は明るい笑い声に包まれていた。 一頻り魔物(に見立てた木の枝)を討伐し終えると、リーナは近くにあった倒木に腰を下ろした。彼女は満足げな表情で、木々の間を縫って見える澄んだ青空をしばし見上げていたが、すぐに視線をユウへと移し、今度は少し心配そうな面持ちで尋ねた。「はぁーこういうの楽しいわね! ねえ、ユウ……次は、いつ会えるの?」 ユウは、森の緑の絨毯のような草の上に大の字になって寝転がっていた。リーナが、次回も会えるのかと不安そうな顔をして聞いてくるのを感じ、彼の胸には抑えきれないほどの嬉しさが込み上げてきた。つい、その気持ちを隠すために、少しだけ意地悪をしてしまった。「んー……そうだな……」 ユウは、勿体ぶって返事を焦らした。その数秒の沈黙が、リーナには永遠のように感じられたのだろう。「……なによ。ふうん……わたしに、会いたくないのね……そう……いいわ。ふんっ」 リーナは、可愛らしく頬を『ぷくぅ』っと膨らませ、ユウとは反対の方向へとそっぽを向いてしまった。その姿は、まるで捨てられた子猫のように見えた。 ユウは、リーナの反応が予想以上に拗ねてしまったことに気づき、慌てて上半身を起こしてリーナの方へと視線を向けた。「は? なんでそうなるんだよ!? 明日、明日も来れるぞ。町までの道も覚えたし、思ったよりも近かったからな!」 ユウは、勢いよくそう告げた。その声には、リーナに会いたいという素直な気持ちと、彼女を悲しませてしまったことへの焦りが滲んでいた。 ユウの「明日も来れる」という言葉を聞いた瞬間、リーナの顔に浮かんでいた拗ねた表情は、あっという間に消え去った。 再び、彼女の顔には、まるで太陽のような『にぱぁ』という、輝く笑顔が咲き誇った。その嬉しさは隠しようもなく、透き通る青い瞳はキラキラと光を放ち、喜びを全身で表現していた。「わぁ……そうなんだ!? わたしも大丈夫よ! 約束ね! 絶対よ」 リーナは、前のめりになってユウの方へ身を乗り出すようにして、力強く約束を取り付けた。 ユウは、草の上に寝転がったままリーナを見上げていた。彼女が身を乗り出し、喜びで小さく弾むたびに、彼女の冒険者風の短いスカー
last updateLast Updated : 2025-12-10
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12話 王女の嘘と冒険者の娘という仮面

 翌日、ユウは父親の商売の都合を待たずに、一人で町へと向かった。 リーナと待ち合わせをしていた町の広場に到着すると、石畳の上に、ぽつんとリーナの姿があった。彼女は地面に視線を落とし、俯いており、その表情には小さな不安が影を落としていた。 ユウは、慌てて声を掛けた。「リーナ!まだ、こんな朝早くから来てたのか?」(俺は、リーナが待たなくても良いように、早めに来て町の友達と遊んで時間潰しでもすれば良いやって思って早く来たのに、まさかもう来ていたとは) 声を掛けられ、リーナの身体は「ビクッ」と小さく震えた。そして、不安から解放された安堵と喜びが、一気に彼女の表情を彩った。いつもの『にぱぁ』という、光が弾けるような飛び切りの笑顔をユウに向けた。「……わぁっ。別に……早く起きたから……暇だったのよ」 彼女は、嬉しさを隠そうと、すぐに照れ隠しの言葉を並べた。「もしかしたらユウが早く来てるかもって思っただけよ……待たせたら失礼でしょ……。わたしから約束をしたんだし……それだけよ」 リーナは、そう言うと、顔を赤く染めながらそっぽを向いた。その横顔には、ユウが早く来てくれたことへの隠しきれない喜びが滲んでいた。 ユウは、そんなリーナの照れ隠しなど気にも留めず、親愛の情を込めて、自然にリーナの小さな手を握った。その瞬間、リーナの身体は再び「ビクッ」と大きく震え、顔の赤みはさらに濃く深く染まった。彼女の透き通る青い瞳は、ユウの優しく大きな手の感触に、戸惑いと嬉しさで揺らめいていた。「俺も、リーナを待たせちゃ悪いと思って早く来たんだけどな……遅かったか。あまり早く来ると暇だし、危ないんじゃないのか?」「ん? 大丈夫よ。近くに警備兵の詰め所もあるじゃない」 ユウに手を握られたまま、リーナの透き通る青い瞳の視線は、広場の片隅に立つ警備兵の詰め所を捉えていた。その視線には、少しの緊張が混じっている。 ユウは、その視線に気づかぬふりをしつつも、リーナの小さな手を、もう一度ギュッと握りしめて言った。「ホントだ……でもさぁ……心配だし。朝早くから一人で待ってるのは禁止な?」 ユウの真剣な思いやりが、強く握られた手の温もりと共にリーナに伝わったのだろう。彼女は、照れくさそうに「んふふ♪」と微笑むと、恥ずかしさから視線をユウから逸らし、素直な返事をした。「んふふ♪ 分かっ
last updateLast Updated : 2025-12-10
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13話 騎士の優雅な所作と王女の動揺

 ユウは、その木剣を受け取るために一歩前に出ると、まるで舞台の一幕のように、ゆっくりと片膝を折った。その動作は、農作業で泥だらけになった服を着ているとは思えないほど滑らかで、一切の無駄がなかった。彼の淡い金髪がふわりと揺れ、透き通る青い瞳がまっすぐにリーナを見上げた。「ありがとう。大切に使うな」 ユウは、そう言って両手を添えて木剣を受け取る。指先の動きは丁寧で、剣を扱うというより、贈り物を受け取るような優雅さがあった。 ユウが木剣を受け取った、その一連の所作を見て、リーナは思わず息を呑んだ。 その流れるような優雅な動きは、彼女が王女として日常的に目にしている、王宮の騎士たちが主君に示す最上級の敬意と礼儀作法に酷似していた。けれど、ユウのそれは形式張ったものではなく、もっと自然で、もっと心を込めた優しさに満ちていて――リーナの胸の奥が、ふわりと温かい熱を帯びるのを感じた。「……っ」 言葉にならない感情が、喉の奥で揺れた。彼女は思わずユウから透き通る青い瞳をそらし、白い頬にはほんのりと赤みが差した。 ユウは、そんなリーナの動揺には気づかないまま、木剣を軽く構えて、いつもの屈託のない笑顔を見せた。「じゃあ、姫様を守る騎士として、今日も頑張らないとだな」 その言葉は、まるで彼女の心に巣食う王女としての孤独を癒すかのように、優しく響いた。リーナは、何も言えずにただ静かに頷くことしかできなかった。その日、彼女の心の中に、ユウに対する憧れと、特別な感情の小さな火が静かに灯った。「……ばかぁ。わたし……剣術の師匠でしょ……そういうの……反則よ……もぉ……」 リーナは、顔全体を真っ赤に染めながら、ユウには聞こえないほど小さな声で、そう呟いた。その声には、彼の思わぬ優雅な振る舞いに射抜かれてしまったことへの、照れと抗議が混じっていた。 リーナがユウの思わぬ行動に照れて、モジモジと落ち着かない様子で立っていると、ユウは再び彼女の小さな手を優しく握りしめた。 その突然の接触に、リーナは驚き、「きゃ、わ、わわぁっ。急に……なによっ」と、可愛らしい、上擦った声を上げた。彼女はすぐさまユウから視線を外し、俯きながら恥ずかしそうに顔を逸らした。手のひらから伝わるユウの体温が、彼女の心をかき乱していた。 一方、ユウは早く本格的に木剣を使い、剣術を教わりたい気持ちでいっぱ
last updateLast Updated : 2025-12-10
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14話 剣術師匠と弟子の初めての共同作業

「それだったら……洞窟か、作ってみるかだな。木の枝で骨組みを作って、大きな丈夫な葉を重ねればすぐにできると思うぞ。洞窟は魔物の棲みかになっていることがあるって聞いたことがあるからやめておこう。小さな洞穴だったら良いかもな」 リーナは、ユウの想像力の豊かさと、自分が思った以上の本格的な隠れ家ができると分かると、あまりの嬉しさに、繋いだままだったユウの腕を思わずギュッと掴み、飛び跳ねるように言った。「わぁっ。それ、どちらもステキねっ!」 無意識のうちにユウの腕を強く掴んでしまったことに、リーナはハッと気がつき、慌てて放そうとした。しかし、せっかく掴んだユウの、温かくて逞しい腕を、こんなに簡単に離してしまうのが勿体ないという気持ちが勝った。リーナは、顔を少し赤く染めながら、そっと掴んだユウの腕に力を込め直した。 リーナに腕を掴まれたユウは、まさか彼女がこんなにも素直に腕に抱きついてくるような形になるとは想像しておらず、内心大きなサプライズで胸が高鳴った。彼の顔は、思わず喜びでニヤけてしまいそうになるのを、必死で口元を引き締めて我慢した。 彼は、平静を装いながら、努めて明るい声で言った。「それじゃ、早速場所を探しに行くか! 最高の隠れ家を二人で一緒に見つけような!」 ユウは、リーナの温かい体温を感じながら、彼女の小さな手を握り直して、森のさらに奥へと足を進め始めた。「うんっ! 二人で一緒に……ね」 リーナは、ユウの腕に抱きついたまま、明るい笑顔で元気に返事をした。しかし、言葉の後半は、まるで秘密を分かち合うかのように、恥ずかしそうに、だが心から嬉しそうに小さく呟いた。 二人は、昨日休んでいた場所のさらに奥へと進むと、森が開けた場所に辿り着いた。そこは、周囲を太い木々にしっかりと囲まれており、たとえ強風が吹いても、木々が盾となって風の被害が及ばないであろう、隠れた空間だった。 見晴らしが良く、遠くから魔物や獣が現れてもすぐに発見できるため、安全性が高かった。さらに、中央には十分なスペースが確保されており、隠れ家を作る作業はもちろん、将来的に焚き火をして調理をしたり、剣術の修業をしたりするにも最適だった。「ここで良いんじゃないのか? 十分なスペースもあるし、明るいし……木々に囲まれてて秘密基地って感じじゃない?」 ユウは、その場所の条件の良さに興奮し
last updateLast Updated : 2025-12-10
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15話 独占欲と期待の赤らむ頬

 二人は森の中を歩き回り、短めの柱となる硬い木四本と、屋根を支えるための長い木一本、そして骨組みを結びつける丈夫なツタを、協力して集めた。家を建てるわけではないので、長さが完璧に揃っていなくても、全く問題ない。ユウとリーナは、手を繋いだり、離したりしながら、終始笑い合い、材料集めを楽しんだ。 材料が揃うと、ユウが骨組みの作業に取り掛かった。彼は、短い四本の木を地面に突き刺し、ツタを使って長い木を梁として固定していく。その手つきは、農家の息子として鍛えられた器用さと力強さを感じさせた。 リーナは、ユウの側を離れず、ツタを引っ張ったり、木の枝を支えたりと、小さな体で一生懸命手伝った。彼女は、慣れない作業に汗を滲ませながらも、ユウと二人で何かを成し遂げているという喜びに、透き通る青い瞳を輝かせていた。「すごいわ、ユウ! もう骨組みができたわね!」「完璧だな! 次は床と屋根だ!」 床には、まず集めてきた枯葉をたっぷりと敷き詰め、さらに弾力のあるモフモフとした草を上から重ねた。リーナがその感触を「ふかふかよ!」と喜びながら踏み固める。その上に、大きな丈夫な葉を何枚も敷き詰めていった。これで、寝転んでも座っても、地面の硬さを感じない、最高の床が完成した。 最後に、長い梁の上に大きな葉を何重にも重ねて屋根とした。隙間ができないように、丁寧に、ツタでしっかりと固定した。 日が傾きかける頃、二人の協力の結晶である隠れ家が、立派に完成した。 完成した隠れ家は、四人が寝転がっても問題ないほどの広さがあり、周囲の木々の色に溶け込んで、まさしく秘密基地といった趣だった。骨組みはしっかりとしており、急な雨でも凌げそうな頑丈さがある。そして何よりも、内装の床は、ふかふかで柔らかな草と葉に覆われ、最高の安らぎ空間となっていた。「わぁ……本当にできたわね! ユウ、すごいわ!」 リーナは感動したように目を潤ませ、ユウの腕に抱きついて、その立派な出来栄えを心から褒め称えた。ユウも、自分の作ったものがリーナにこんなにも喜ばれたことに、胸いっぱいの達成感を感じていた。 完成したばかりの秘密基地の中で、リーナはユウの腕に抱きついたまま、モジモジと落ち着かない様子を見せた。そして、透き通る青い瞳に不安の色を滲ませながら、ユウを見上げて尋ねた。「ねえ、ユウ……ここは、二人の秘密基地よね…
last updateLast Updated : 2025-12-10
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16話 少女の恋心と明日への切望

 リーナは、自分の身体が自然とユウに寄り添い、透き通る青い瞳がユウの輪郭を追いかけてしまうことに、初めての恋のドキドキ感と、どうしようもない戸惑いを感じていた。その可愛らしい仕草は、純粋な少女の恋心が芽生えた瞬間を雄弁に物語っていた。 普段のリーナは、誰かに何かを求めることはほとんどなく、ましてや自分から会う約束を取り付けるなど考えられないことだった。それなのに、昨日からユウに対して求めてばかりいる自分がおかしいと思いつつも、彼女は聞かずにはいられなかった。明日も会えるという確約を得て、この幸せな時間を守りたかったのだ。「ユウ、あ、あの……明日も会えるのかしら……?」 リーナは、ユウの腕に抱きついたまま、不安と期待の入り混じった声で尋ねた。(昨日みたいに焦らしたら……きっとリーナは可愛い顔で怒るだろうな……困ってる顔はすごく可愛いから見たい気もするけど、今はやめておこう……十分に腕に抱きつかれて幸せだし、これ以上拗ねられたら寂しい) ユウはそう思い、即座に返した。「俺は大丈夫だよ。冒険者の練習だし、リーナから剣術を教わるのは、将来の俺にとって得る物がたくさんあるんだからな。剣術や討伐ごっこも、全部将来の為になるんだ」 ユウは、冒険者になるという夢を口実に、明日も会いたい気持ちを隠した。そして、今度はリーナの都合を気遣うように尋ねた。「リーナの方は大丈夫なのか?毎日、こんなに早く来れるのか?」 その言葉には、ユウの優しさと、彼女の身分(とユウが誤解している裕福な家庭の事情)を気遣う気持ちが込められていた。「え? あ、うん。わたしも……同じよ」 リーナは、ユウの腕から顔を離し、少し照れたように、そして慌てたように言った。彼女は、ユウと同じく、この秘密の逢瀬を正当化するための理由を口にした。「将来のための練習と経験よね……」 そう強がるように言うと、彼女はすぐに真剣な表情に戻り、ユウの手を強く握りしめた。「約束だから! わたしから約束をするの……珍しいのよ、ありがたく思いなさい!」 その言葉には、普段の彼女であれば絶対に見せない、ユウへの特別な好意と、この時間を大切にしたいという切実な願いが込められていた。(そうなの? 昨日もリーナから約束をしてきてたような……まあ、広場にいた時に見た感じ、他の友達と約束も話もあまりしてなかったし。そりゃ
last updateLast Updated : 2025-12-10
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17話 無自覚な優しさと甘い嫉妬

「あ……わ、悪い……妹と同じ感じで、つい汚れを取っちゃった……」 ユウは、リーナが頬を真っ赤に染めて動けずにいる様子を見て、ようやく自分がとった行動が、親しい家族にするような無意識なものだったと我に返った。彼もまた、自分が何をしたのかを改めて理解すると、顔をカッと赤く染めた。指先に残るリーナの頬の柔らかな感触を思い出し、胸が激しくドキドキと高鳴った。 ユウは恥ずかしさのあまり、リーナからバッと顔を逸らした。リーナもユウも、初めての無自覚な親愛の触れ合いに、言葉にできないほどの動揺と、甘い興奮を抱えていた。「ふぅーん……妹と、わたし同じ扱いなのね……」 リーナは、顔を逸らしたまま、拗ねたような、少し寂しそうな響きを含む声で呟いた。(妹さん……羨ましすぎるんですけれど……ふんっ) ユウにとって、自分が特別な存在ではないのかという小さな嫉妬が、彼女の胸の内で渦巻いた。「だから、謝ってるだろ……」 ユウは、まだ顔を赤くしたまま、少し焦ったように弁解した。「妹には、緊張はしないって……ドキドキもしないっての!」 その言葉は、彼がリーナに対して特別な感情を抱いていることを、図らずも伝えてしまっていた。「そ、そう……」 リーナの顔はさらに赤く染まったが、内心の喜びは隠せなかった。「汚れを取ってくれたのでしょ? ありがと……ユウ」 彼女は、意を決したように、ユウに目を向けずに続けた。「次回も……汚れていたらお願いね。悪い気はしないわ……大切に思われて、ちゃんと見てくれているって感じよね……」 その言葉は、ツンとした態度の中に、ユウの優しさに
last updateLast Updated : 2026-01-01
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18話 警備兵の緊張と忠誠の誓い

 それどころか、リーナが座っていた木製の簡素なテーブルの上には、白い湯気が立ち上るホットミルクの入ったカップが置かれていた。それが警備兵たちの気遣いなのか、あるいはリーナ自身が用意させたものなのかは定かではないが、この空間の異様さを物語っていた。 警備兵たちは、目を配りながらも、決してリーナの方を直視しようとはしない。まるで彼女の存在を無視しているようにも見えるが、その仕草の端々には、無礼にならないよう細心の注意を払っている緊張感が滲み出ていた。それは、事前にリーナから「自分を気にしないように」と命令された警備兵たちが、言いつけを守ろうと不自然なほど意識を逸らしているからだろう。 ユウは、その光景に多少の違和感を感じたものの、リーナの満面の笑みと、警備兵たちが特に騒ぎ立てているわけではない様子を見て、深く追求する気にはならなかった。(まあ、リーナの家ってやっぱり偉いんだろうな。警備兵にも顔が利くってことか) ユウがすぐに納得できるほどの、決定的な異常さではない。彼の認識は、その程度のものに留まった。「そ、そうだな……ここなら安心だな……。でも、迷惑になるんじゃないのか?」 ユウは、詰め所の中で静かに座る警備兵たちを見て、やはり気が引けた。彼らの職務の邪魔をしているのではないかと、申し訳なさを感じた。「え? わたし、迷惑になるような事しないわよ……大人しくしていたもの」 リーナは、小首を傾げて、心外だというように言った。そして、ユウに聞こえないほどの小さな声で警備兵に問いかけた。「ねぇ? わたし、邪魔だったかしら?」 突然、王女であるリーナから直接声を掛けられた警備兵は、「ビクッ」と分かりやすく体を震わせた。そして、顔を青くしながら、慌てたように答えた。「い、いえ……邪魔なんて飛んでもございません! 大人しくされていましたし……問題ございません」 その必死な様子に、ユウは、やはりリーナの家が相当なものだと改めて感じた。「
last updateLast Updated : 2026-01-02
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19話 圧倒的な魔物の群れと緊迫の瞬間

 その結果が、この町での暮らしだった。しかし、その身分はあまりにも重く、警備兵たちが彼女の命令一つで大忙しになるほど、厳重に秘匿され、守られていた。リーナの透き通る青い瞳の奥には、王女としての重圧と、お忍びの生活で得た自由への喜びと、そして今、ユウとの出会いによって生まれた新しい感情とが、複雑に混じり合っていた。 ユウとリーナは、警備兵の詰め所を後にすると、さっそく森へと足を踏み入れた。手を取り合い、二人の秘密基地へと向かう道すがら、ユウは昨日の続きを尋ねた。「今日は、どうしようか? 剣術の修業か、それとも冒険者ごっこか?」 ユウの問いかけに対し、リーナは少し顔を赤らめ、彼の腕に抱きついたまま、小さな声で答えた。「……わたしは、ユウが一緒にいれば……良いわ」(あれ? あれだけ冒険者ごっこや剣術の修業って言っていたのに? 珍しいな。まあ……時間があるし、いっか……昨日は秘密基地作りで忙しく働いたし、たまにはゆっくりするのも悪くない) ユウは、リーナの意外な言葉に少し驚きながらも、その甘えを受け入れた。「それじゃ、今日は……ゆっくりするか? 秘密基地で昼寝でも」「じっとしているのも、つまらないわよね……せっかくユウと二人でいられるのに」 リーナは、すぐさま退屈そうな声を上げた。じっとしているよりも、ユウと何か楽しい活動をしていたいのだ。「そういえば、川があるって聞いたけど……探しに行く?」 ユウは、昨日の父親の忠告を思い出しつつも、好奇心に抗えず、リーナに新しい提案をした。彼の透き通る青い瞳は、既に川で魚を獲る夢を見始めているようにキラキラと輝いていた。 ユウは、川という言葉で、幼い頃に家族と遊びに行った記憶を思い起こしていた。その場所は、家からはかなり遠かったような気がするが、今いる町からの位置関係を、頭の中で描いている簡素な地図と、遠くに見える見覚えのある大きな山の位置から割り出
last updateLast Updated : 2026-01-03
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20話 「失いたくない」涙の訴え

(う、嘘だろ……! 魔法だ! 本物の魔法だ!) ユウは、顔中の血液が沸騰したかのように熱くなるのを感じた。彼の目は、驚きと興奮で大きく見開かれ、そして次の瞬間、純粋な憧れの光を宿してキラキラと輝き始めた。「す、すげぇ! リーナ! お前、魔法使いだったのか!?」「え? あ……そう、母親が魔術師なのよ……両親が冒険者って言ったでしょ」 リーナは、ユウの興奮と驚きに満ちた視線に、一瞬言葉を詰まらせた。彼女は、王女という身分を隠すための設定を思い出し、努めて冷静に振る舞おうとした。「そんな、すごいヤツだったのか……」 ユウは、魔物の群れを一瞬で吹き飛ばした炎の魔法の残痕と、リーナの凛とした横顔を交互に見つめた。彼の顔は、初めて魔法を見た興奮から一転、驚きと同時に、自分との間に存在する圧倒的な力の差を感じてしまい、急速に暗い影を落としていった。 (俺とは住む世界が違いすぎる。冒険者ごっこで剣術を教わっているなんて、おままごとに付き合ってもらっているだけなんじゃないか……) ユウは、目の前の純粋な喜びを共有していた少女が、手の届かない遠い存在のように思えてしまい、寂しさと、どうしようもない劣等感が胸に込み上げてきた。「危なかったわね……」 リーナは、ふぅと小さく息を吐きながら、ユウの方を振り返った。彼女の透き通る青い瞳には、戦闘直後の緊張がまだ残っていた。「そうだな……俺が守ってやるって言ったのに……悪いな。力不足で……」 ユウは、力なくそう呟き、自分の無力さを恥じた。彼の表情には、自信を失った暗い色が滲んでいた。「ん?」 リーナは、ユウの表情を見て、すぐにその考えを察した。彼女は、彼の腕に抱きついたまま、顔を上げてまっすぐ彼を見つめた。「ちゃんと連携をできていたじゃない。あなたが魔物を必
last updateLast Updated : 2026-01-04
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