外階段の鉄が、足の裏に冷たく響いた。まだ夜なのか、もう朝なのか判別のつかない時間帯だった。空は薄く青みを帯びてきているのに、近くの店のネオンはまだ消えていない。ピンクと赤と青の光が、ビルの壁面や路地の水たまりににじみ、寝静まった住宅街とは違う、夜の名残をしぶとく残している。充は、タバコと香水と、消毒液の匂いをまとったまま、よろりと階段を上った。足取りは、意識していないと一段飛ばしてしまいそうなほど雑になっていて、一段ごとに膝の関節がぎし、と小さく悲鳴を上げる。ポケットの中で鍵が冷たい。金属の感触を確かめるように握り直し、二階の廊下に出る。廊下の床には古いゴムマットが敷かれ、ところどころめくれ上がっている。その隙間から見えるコンクリートが、明け方の湿気を吸って鈍く光っていた。自分の部屋の前に立ち、鍵穴に鍵を差し込む。何度も回した感触のある固い手応え。カチ、と小さな開錠の音がして、ドアが手前にわずかに重く動く。室内の空気は、外とは別種の冷たさを持っていた。照明は落とされていて、カーテンの隙間から、まだ消えきらない街の光がわずかに差し込んでいる。その薄明かりが、靴箱と廊下の境目をぼんやりと浮かび上がらせていた。靴を脱ぎながら、充は鼻をひくつかせる。出掛ける前にはなかった匂いが、薄く残っている。インスタントコーヒーの香りと、焼いたパンの香ばしさ、それから洗い立ての洗剤の匂い。夜の店で染み付いた香水と煙草とは違う、もう少し真っ当な生活の匂い。「…ただいま」誰にともなく、小さな声で言った。返事はない。時間からして、当然だ。部屋の住人の片割れは、きっととっくに寝ているか、目覚ましのアラームを待つ浅い眠りの中にいる。玄関からリビングへ続く細い廊下を歩くと、床板がきし、と鳴った。靴下越しに、冷たいフローリングの感触がじわりと伝わる。疲労で鈍くなった足裏には、その冷たさでさえ、少しだけ心地よかった。リビングの照明は消されているが、テーブルの上に何か白く浮かぶものが見えた。近づいていくと、ラップのかかった皿がひとつ、その横に飲みかけのマグカップが置かれている。皿の
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-01-12 อ่านเพิ่มเติม