審問室は、思っていたよりも狭かった。ドラマで見るような高い壇も、木槌もない。四角いテーブルが一つ、その向こう側に裁判官と書記官が座り、手前に陸斗と充の席が用意されているだけだ。会議室といわれれば、そう見えなくもない。窓は一枚だけ。すりガラス越しに、淡い光が差し込んでいる。外の景色は見えない。見えるのは、白いカーテンと、その向こうのぼんやりした明るさだけだ。壁は白く、時計が一つ。カチ、カチと規則的に針の音を刻んでいる。その音がやけに耳につくのは、自分が緊張しているせいだと分かっている。「そちらにおかけください」書記官の女性が、柔らかい声で言った。陸斗は、促されるままに椅子に腰を下ろす。椅子の足が床を擦って、小さな音を立てた。充も隣の席に座る。机の表面は、少しざらつきのある木目調の板で、角は丸く処理されている。その端に、ボールペンと水の入った紙コップが二つずつ並んでいた。正面に座る裁判官は、五十代くらいの男だった。黒いローブではなく、濃紺のスーツを着ている。眼鏡のフレームは細く、レンズの奥の目は、とてもよく人を観察する目をしている。その視線が、一度、陸斗を、次に充を、静かになぞった。「本日はお越しいただきありがとうございます」裁判官は、手元の書類に目を落としてから、淡々と口を開いた。「簡単な手続きではありますが、形式として、何点か確認させていただきます。緊張なさらずに、分かる範囲でお答えください」緊張するなと言われて、はいそうですかと力を抜けるほど器用ではない。けれど、声そのものは、思っていたよりも柔らかかった。怒鳴られるような場ではないのだと、少しだけ肩の力が抜ける。「ではまず…」裁判官は、書類をめくりながら言葉を続けた。「長谷陸斗さん」名前を呼ばれ、反射的に背筋が伸びる。「はい」自分の声が、部屋の中に少し響いた。「あなたが、長谷慎一さんのご長男、長谷陸斗さんで、間違いありませんね」「…はい」「生年月日は
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-02-01 อ่านเพิ่มเติม