隆は目を丸くして裕也を見つめた。まさか、ここで関係を公にするつもりか?周囲の者たちも驚きを隠せずにいたが、誰一人として口を挟む勇気はない。ただ、その視線はどれも好奇心に満ち溢れていた。これほど多くの視線を浴びていることに気づき、我に返った絵里は、慌てて彼の手のひらに自分の手を重ね、立ち上がった。裕也の真意は読めないが、今はとにかく早くこの場から立ち去りたかった。「お先に」裕也は隆の横を通り過ぎる際、淡々と一言だけ残し、堂々と絵里の手を引いて会議室を後にした。オフィスフロアを通り抜ける際にも、再び大きなどよめきが巻き起こる。ほどなくして、会議室の入り口には大勢の社員が群がっていた。隆は無数の好奇の目に晒されていた。彼らの視線はまるでこう問いかけているようだ。「藤原社長と絵里って……まさか夫婦関係?」隆は目が笑っていない笑顔を向けた。「そんなにゴシップが好きなら、記者にならないと勿体ないな。いっそ報道部にでも異動するか?」サッ。その一言で、皆は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。記者だと?人の恨みを買うような仕事など、誰がやるものか。だが、綾子だけは目を輝かせて隆を見つめ、その場から離れようとしない。立ち去ろうとしていた隆は、振り返って彼女を軽く一瞥すると、色気を帯びた眼差しでふっと微笑み、そのまま背を向けて歩き出した。その瞬間。綾子の胸の奥で、トクン、と小さな音がした。まるで全身を電流が駆け抜けたかのような衝撃。それは間違いなく、恋に落ちた音だった。……車が走り出してからずっと、絵里はどう切り出すべきか考えあぐねていた。前方の交差点を右折したところで、ようやく家へ向かうルートではないことに気づく。「どこへ行くの?」「食事だ」裕也は眉を上げ、口元に微かな笑みを浮かべた。「脚本が大好評だったからな。そのお祝いだ」絵里の胸に、名状しがたい感情が湧き上がる。彼は、和也とはまるで違う。和也であれば、彼女の仕事を「取るに足らないもの」と見下しただろうが、裕也は決してそんなことはしない。「こんなの、大したことじゃないって思わないの……?」絵里はたまらず尋ねた。「わざわざお祝いするほどのことじゃ……」「どうしてそう思う?」裕也の漆黒の瞳が、彼女を真っ
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